34話目
森の奥へと進んでいるのだが......
......うーん、なんか変だ。
魔物が沢山いると聞いていたのに全然見当たらないし、気配察知にも引っ掛からない。
気配察知は頑張れば1キロメートル位は分かるはずなのに、それでもいないのだ。
今日は諦めた方がいいのか?
それか、あのゼリーと出会ったところに行ってみるか?
そうすれば大量にいるかもしれない。
囲われるとヤバイが、気配察知を常に使いながらであれば囲われることはないだろう。
......よし、行ってみるか。
今日行った川の方へと歩いていく。
道中、気配察知を500メートル位に押さえ、使いながら進んでいたが、それでも何も引っ掛からない。
本当に魔物が多くなっているのかと疑いたくなる。
逆に少なくなっているのでは?
と思ってしまう。
だがそこでやっと何かが引っ掛かった。
この気配はブルーゼリーだろう。
川からは少し離れているように思うが、寝ぐらが森の中なのだろうか?
森の奥の方へと移動しているようだ。
ブルーゼリーに走って近づいていく。
気づかれないよう注意を払っていたが、警戒していないのか気づかれずにすぐ近くまで来れた。
辺りを確認しても近くにゼリー達はいないので、早速こいつを狩ることにする。
ますはサファイアも居ることだし火の玉を使ってもらい先制攻撃を仕掛けることにする。
ブルーゼリーに火の玉がぶつかるとブルーゼリーは火に包まれた。
そして、グニャグニャとしながら水を出しているのか、ジュッと音がしつつ水蒸気が上がっている。
火にかかりきりで、行動に制限がある今を狙い隠れていた茂みから飛び出す。
そのままのスピードで核の様なところを引っ掻いた。
『経験値を29得ました』
『知性Lv._により経験値を29得ました』
『レベルが1上がりました』
よし、意外と簡単に終わったな。
あの水の矢を警戒しすぎたか?
まぁ怪我をせずに戦闘が終わるのはいいことだ。
痛いことは嫌だからね。
だが、人だったときは少し切っただけでも痛かったはずなのに、今では背中を刺されても、うずくまらなければいけないほど痛くない。
今日のやつも人だと絶対痛みで動けないはずなんだがなー
人間が敏感すぎるのか、狼が鈍いのか......
さて、川辺に来たのだが何もいない。
本当に何なんだろうな。
昨日の方がよっぽど多くいたのに......
もうこれは諦めるしかないのかな。
大分早いが、暗くなるとサファイアは目が見えなくなるし、何より魔物はいないし帰るか。
そう考え、街の方へ歩きだす。
『...なぁ、お前は何なんだ?』
歩いている途中急にサファイアが聞いてくる。
なにと言われても答えにくい。
魔物のブラックウルフ?
前世が人間の狼?
異世界から来たやつ?
色々とあるが、一番問題がないように答える。
『...魔物のブラックウルフだが?』
『それは分かってる。お前は召喚術で呼ばれていないだろう?テイムの方かと思ったがそれも違うみたいだし』
あぁー、なるほどそう言うことか。
これは普通に答えても大丈夫かな?
『あぁ、俺は召喚術でもテイムでも縛られてはいない』
『いや、それらでは元から縛られないが......そうか、両方違うのか。それではなぜあの少年はお前や俺を縛らない?お前に至っては絆も刻んでいないようだしな』
.........うーん、ちょっと待って。
召喚術やテイムでは縛れない?
絆も刻んでいない?
どういうことなのだろうか?
先程ルリカと話しているとき、クラウドも俺とは絆を刻んでいないと言っていた。
ということは、召喚術とテイムは魔物と人を絆で繋ぐための魔法なのだろうか?
そして、それは縛っているわけではないと?
......あー、鑑定でスキルが見えるようになっていたのだから、召喚術の詳細を見ておくんだった。
帰ったら必ず見よう。
『......召喚術等で呼ばれたら魔物は必ず縛られるのか?』
『いや、必ずかどうかそれは分からない。だが、ほぼ縛られるものなのだと思う』
『何でそう言い切れるんだ?』
『それは俺が前に.........いや、何でもない』
それからはサファイアに色々と聞いてみたが無視され続けた。
というか、念話自体を切られたようだ。
自分から話しかけてきたくせに......
いいなー、念話。
俺も持っていたらな~
質問したいときにすぐに聞けるのに......
そういえば俺かってに念話って言ってるけど本当のスキル名はなんなのだろう?
だが、念話って言うのがしっくりくるから今のところは念話でいいか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
宿に無事に帰ってきた。
まだクラウドは帰ってきていないようだ。
特に何もすることがないので床に寝っ転がって待つことにする。
もう日が完全に沈み、外は真っ暗になっている。
街には少しばかり街灯が建っているため街の中は灯りに照らされていて明るい。
だが、クラウドはまだ帰ってこない。
遅いな~
そんなことを思っていると階段を上ってくる足音が聞こえてきた。
これはクラウドかな?
扉が開く。
「ただいま。ごめん、本読むのに夢中で時間が分からなかったんだ」
おかえりと言う替わりに尻尾を振る。
クラウドがベットに座り休憩している。
その間に召喚術の詳細を見てみよう。
『召喚術:術者の最大MPを消費し魔物を召喚する術。使役か命令とセットでとり、魔物と共に歩んでいくことを可能とする。召喚した魔物により最大MPの減少量は変わってくる。テイムとは違い、最大MPを消費する替わりに召喚した魔物のステータスの1割が加算される。』
ほー、最大MPが減る替わりに召喚した魔物のステータスが1割加算か。
これは呼ぶ魔物によって得か損かが変わってくるな。
だが召喚術は大抵魔法を多く使う人が習得するのじゃないのだろうか?
すると最大MPを減らされるのはいたいな。
ついでにテイム、使役、命令も見ておく。
『テイム:魔物と共に歩んでいくことを可能とする術。魔物と直接対峙し、魔物が術者を認めた場合絆ができる。多くは使役を使うが最近は命令を使うものが増えてきている。魔物との信頼度が高くなれば高くなるほど恩恵を受けることができる。』
『使役:魔物の意思を尊重しつつ行動させる術。テイム、召喚術と共に使うものが多い。しかし、最近では使役を使うものがごくわずかにしかいない。』
『命令:魔物や奴隷を術者の思うように行動させる術。最初に契約をすることで命令の効果が出るようになる。』
召喚だと最大MPを消費するだけで呼ぶことができるが、テイムはわざわざ魔物のところに出向き、尚且つ魔物が術者を認めなければならないのか。
うーん、これはどっちがいいか悩むな。
そして、使役と命令だが使役が魔物重視、命令が術者重視ってところかな。
サファイアが言っていた縛るどうこうは、命令のことだろうな。
だが、クラウドは命令をとらずに使役の方を持っている。
だから何時も此方にどうするか聞いているのだろう。
クラウドが命令をとってなくて良かった。
無理矢理嫌なことをさせられるのは嫌だからね。
......少し眠くなってきた。
欠伸を1つし、瞼を閉じて眠りにつく。