33話目
宿に着いた。
その頃にはサファイアも起き、今はベットの上で毛繕い...じゃない羽繕いしている。
そういえばルリカの話って、森の異常のこととかじゃなかったな。
なんで急に話をしようと思ったのだろう。
仕事を中断してまで話をする内容だったか?
いや、クラウドの悩みが軽いものだと言っているわけではない。
ただ、仕事を中断してまで個人の話をしに行くというのはどうかと思っただけだ。
妹も連れ出してたし、丁度休憩の時間だったのかな?
「僕、サファイアに信頼してもらえるよう頑張るとか言っておきながら、僕自身が信頼できてなかったって言うのが今日言われて改めて気付かされたよ。
信頼って言うのはお互いがするものなのにね......」
俯きながらクラウドは言う。
「でも、まだ僕自身本当は何がしたいのかいまいちよく分かっていないし、まだ心の準備ができてないからまだ言えないんだ......ごめんね。
でも、近いうちに必ず言うからそのときは話を聞いてくれるかな?」
俺はすぐに大きく頷く。
サファイアはどう反応するのかと見ると、珍しく頷いていた。
驚いた、またいつものように無視してるのかなと思ってた。
それを見たクラウドはありがとうと言い、笑った。
「さて、時間が微妙だけどもう先に夜ご飯を食べてしまう?昼はまともに食べれらていないし」
そうだった。
あのゼリーの集団に襲われたため、常に移動しっぱなしだったから昼は四角いパサパサの物しか食べられなかったのだ。
あれでは全然お腹は膨れないし、美味しくなかった。
いや、むしろ不味かった。
味はえぐみが少しあり、ほんのり本当にほんのり甘味がある。
そして、口の中の水分をこれでもかと言うぐらいにカラカラにされる。
そのため飲み込もうにもなかなか飲み込めない。
散々たる食べ物だよ、あれは......
出来ればもう食べたくないね。
だがこれは日持ちがし、栄養が豊富なので冒険者は時間がないときこれを食べるのだとクラウドが言っていた。
それに、とても安いらしい。
まぁ、貰っているものだから文句は言えない。
俺が稼いでいるわけでも、持っているわけでもないしね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今は部屋の中でのんびりとしている。
いや、今日のも美味しかった。
豚肉と野菜を茹でたもので、味付けは塩だけだったが豚肉の旨味を野菜が吸っていて、手をあまり加えられていなくてもとても美味しかったのだ。
...あ、豚肉と言っているが正確に言うと猪だったか?
近くにある都市から仕入れてきた所だったらしい。
運がいいよね。
サファイアはパンを食べていたが、豚の美味しそうな匂いにつられ、こちらをチラチラと見ていた。
視線に気づいてはいたが、なにも言わないので無視しているとソワソワしだした。
残り少なくなってくると見てくる頻度が多くなり、
『...ぅ、あの.........』
とうとう念話で語りかけてきた。
いつも無視してるくせに、どれだけこれが食べたいんだよ。
『......ぁ、俺肉食で...最近......肉...たべて...ない......』
ボソボソとそんなことを伝えてくる。
うーん、あげてもいいんだが......
『で?なに?』
『...ぅう、......肉...ください......』
わざと分からないふりをしたが、結構早くくれと言ってきた。
いつものように無視か、えらそうに言うのかと思っていたんだが...
根はこっちなのかな?
取り合えず、皿をサファイアの方に近づけてやる。
サファイアは急いで皿の前に来、ついばもうとして固まった。
そして、こちらを見てくる。
ん?なんだ?
『食べないのか?』
首を傾げながらそう聞くと、食べ始めた。
なんだ?
許可を貰ってなかったから食べてはいけないとでも思ったのだろうか?
『あー、そうだ。肉食ならクラウドにそう言っておけよ。念話があるから伝えれるだろ?そうしないと俺は何時でもは分けてやらないぞ?』
『.........わかった。だが、意見をいっても怒られないのか?』
『クラウドはそんなことでは怒らないと思うぞ?』
『............そうか』
その後は何も言わず黙々と肉を食べていた。
意見を言って怒られないかと聞いてきたが、昔に念話で意見を言って誰かに怒られたことがあるのだろうか?
何だかそう言っている時少し、怯えているような感じがしたのだ。
さて寝るまでには時間があるし、することがないと暇だな。
少し狩りに行ってくるか?
森に魔物が多くなってきており危険だ、と言われてるくらいだから狩って減らした方がいいだろう。
よし、そうしよう。
クラウドに外に行くことを伝えるため、サファイアに念話を繋いでもらう。
肉をあげたからか、すぐに繋いでくれた。
『クラウド、俺暇だから少し狩りをして来るけどいいか?』
急に念話が来たからか、クラウドは少し驚いていたが
『これはブランだね?狩りって街の外に行くの?一人だと危ないよ』
『大丈夫だ。昨日も一人で狩りに出ていたが、何ともなかった』
『そうなの?でも......』
『.........俺もついていく』
急にサファイアも入ってきた!?
それに、ついてくるって?
なんでまた急に......
『うーん...じゃー、行ってきてもいいけど気をつけてね?暗くなれば暗くなるほど辺りが見えにくくて危ないんだからね?僕も付いていきたいけど、僕じゃ完全に足手まといだし......』
『大丈夫。元気に帰ってくるよ。少し遊んでくるだけだから』
『うん、わかった。いってらっしゃい、二人とも。じゃー、僕も少し図書館に行ってくるよ』
取り合えず許可が出たのでサファイアを背に乗せ、門の所まで行く。
デクに少し笑われたが無事に街の外に出る。
日が中程まで沈んでおり、辺りは夕焼け色に染まっている。
なんか赤いから木が燃えているように感じる。
そういえば俺は結構夜目がきくが、サファイアは大丈夫なのだろうか?
日本では、鳥は普段はとても目がいいが夜だと全く見えなくなる、とよく聞くが、ここは日本ではないし、魔物だから違うのだろうか?
念話を繋いでもらい聞いてみるか。
『なぁ、鳥は暗くなると目がほとんど見えなくなると聞いたことがあるが、お前は暗くなっても見えるのか?』
『っ!!.........』
......言われて気づいたって感じが背中から伝わってくるんだが.........
『......何で付いてきたんだよ......』
呆れながらそう言うと
『何となくだ』
そんなことを伝えてくる。
1つため息をつき、
『まぁ、落ちないよう背中にしっかり捕まっとけよ』
そう伝え、森の奥へと歩いていった。