32話目
ルリカにつれられたどり着いたのは、ギルドから2分ほど歩いたところにある「ローゼ」というカフェ店だ。
2階建てで、外の風景が見えるようにか壁の多くがガラスのようになっている。
中はシンプルな感じで、小綺麗にしている。
店に入ると席を勧められクラウド、ルリカが向かい合うように座りルリカの横にアンルが座った。
俺とサファイアはクラウドの足元近くに座っている。
俺らのような獣が入ってもいいのだろうか?と疑問に思ったが、特に何も言われることはなかった。
「じゃー、話をする前に何か頼みましょうか。それと、ブランって言うんだっけ?狼くん。そんなにじっとアンルを見ないでくれるかな?後でちゃんと話すから。」
そう言われて初めて気がついた。
俺はずっとアンルの頭を凝視していたのだ。
慌てて目をそらす。
言い訳だが、普通の人には無いものがあるんだ。
気になって仕方がないのだ。
それで、どういうことか調べるため鑑定もしてしまった。
。。。。。。。。。。。。。。。
アンル
種族:純獣人族(犬型)
Lv2/100 状態:半獣
HP21 MP2
力15
防御6
魔力2
俊敏11
[通常スキル]
獣化Lv2 噛み付きLv1
引っ掻くLv1 幻覚Lv1
。。。。。。。。。。。。。。。
それで分かったのだが、やはり種族が普通の人族じゃなかった。
まぁ、頭に獣の耳がついてるし、今は見えないけどフサフサの尻尾もあるのだ。
犬型と書いてあるから犬系の獣人なのだろう。
ただ純とついているがそれは何なのだろうか?
それと、俺がレベル1だった時と同じくらいの強さがあるんだが......
まだこんなに小さい子なのに恐ろしい...
そういえばルリカの妹と言っていたが、ルリカにはそんな獣のような耳はない。
何故だろうか?
鑑定してみる。
。。。。。。。。。。。。。。。
ルリカ
種族:純獣人族(犬型)
Lv18/100 状態:人化
HP114 MP61
力41
防御38
魔力53
俊敏32
[通常スキル]
獣化Lv3 人化Lv4
噛み付きLv3 引っ掻くLv2
体当たりLv2 疾駆Lv2
幻覚Lv3 火魔法Lv2
水魔法Lv2
。。。。。。。。。。。。。。。
......
...うん、ちょっと見間違いしたようだ。
もう一度見る。
......
同じだ...
デクよりレベル低いのにデクより強い...
デクよりも若いのにこのレベル...
この強さ...
何この世界強すぎない?
俺めっちゃ弱いじゃん...
どうしよう......
一人で頭を抱えているとウェイトレスの人が何かを持ってきた。
どうやら、知らないうちに注文をし、それが出来上がったようだ。
ルリカの前にはクッキーのようなものが、クラウドの前にはマドレーヌのような焼き菓子が、アンルの前にはパフェが置かれた。
そして、それぞれに紅茶と思われしき飲み物も置かれ、ウェイトレスはお辞儀をして去っていった。
クラウドはさっそく焼き菓子を1つ取り、食べるのかと思いきや粉々にしていた。
そしてその粉々にした物を小さな皿に入れ、テーブルの空いているスペースに置いた。
「サファイアここにおいで。そして、それ食べていいよ」
サファイアはそれを聞くとピョンピョン跳ねながら皿の元まで行きコツコツと食べ出した。
クラウドは次に2つ取り、今度は砕かず皿に入れ俺の前に置いてくれた。
「はい、ブランも食べていいからね」
前に置かれた焼き菓子からはとても甘くいい匂いがする。
普通の人なら何回かかじる大きさがあるが、今の俺にとっては一口サイズなので口の中に1つ放りこむ。
卵とバターのシンプルな味がし、ほんのり甘い。
日本で食べていた物には負けるかもしれないが、充分おいしい。
尻尾を振りながら咀嚼していると、
「じゃー、まずは私の妹についてね。簡単に言うと私とアンルは狐の獣人でアンルはまだ小さいから、ちゃんとした人型になれず、こんな姿をしてるのよ」
俺を見ながらそうルリカが言ってきた。
うん、鑑定で先に見てしまったからそんな感じだろうなと思ってました。
獣人がいるってことは他の種族もいるのかな?
ファンタジーでお馴染みのエルフとかドワーフとか...
「......妹をこんな目立つ所につれてきてもいいの?」
クラウドが困惑気にルリカに聞いている。
「この街は中立なんだからそんなに気にしなくていいでしょ?もう大分年月が経っているのよ?それに私達はそんなに簡単に捕まるつもりもないし」
クラウドはそれでも腑に落ちないのか考え込んだ顔をしている。
妹を連れてきてもいいのか聞いていると言うことは、種族的に何かあるのだろうか?
まぁ、ここは中立だからと言っているからこの街は大丈夫なのだろう。
「で、本題ね。......クラウド、まだ獣魔にさえちゃんと話してないでしょ」
クラウドがピクッと反応した。
話?なんのだ?
「...やっぱりね。何も私に話せとは言わないけど、獣魔くらいなら話してもいいんじゃない?きっと支えになってくれるんだから。特にブランには話しておいた方がいいわよ。普通の魔物と違って思考がはっきりとしてるし、貴方がしたいことをきっちり話せば手伝ってくれるはずよ?ね?」
...おう、急に話を振られてしまった。
なんかよくわかってないけど、ちゃんと守るという約束をしたからね。
頷いておく。
「ほらね、だからちゃんと話をしておくのよ。.........私だって同じようなものなのに話してくれないんだから。」
ルリカが少し悲しそうにそんなことを言う。
「...確かにブランは賢いもんね、魔物と思えないくらい。
でも.........絆が繋がっている訳じゃないから、まだ無理だよ」
「そんなスキルによる繋がりだけじゃないのよ?ちゃんと貴方達は絆ができかけているんだからもっと寄り添わないと。召喚の絆だって絶対的ではないんだから。」
クラウドは俯き考え込んでしまった。
うーむ、空気が重い......
めっちゃここに居づらいんですけど!
なんか俺のことも話題に上がってるし!
サファイアとルリカの妹はこの空気をどう思っているのだろうか。
様子を窺ってみると、
............寝ていた............
サファイアは顔を後ろに回し、嘴を背の羽毛に突っ込んでガチ寝をしているし、アンルはコックリコックリと船を漕いでいる。
...マジか...
この空気で寝られるものなのか?
まだアンルはわかる。
小さい子はお腹いっぱいになると眠ってしまうし、丁度昼寝の時間ぐらいだろし...
だがサファイアよ、お前は寝るなよ...
主人に悩みがあるようなんだから、支えろよ...
......いや、そういえばこいつも幼鳥だから寝てしまうのか?
でも、魔物なんだけど?
自然界でそれでいいの?
朝もそんなことを考えていたな、そういえば...
「まぁ、今はいいわ。でも、そのうち必ず誰かには相談するのよ?一人で考え込むと良くないのだから」
そうしてルリカがお会計をたのみ妹を背負って外に出る。
クラウドもサファイアを俺の背に乗せ、
「じゃー、とりあえず帰ろうか」
それだけ言い、後は沈黙したまま宿に向かって歩き出す。
俺はサファイアを落とさないよう注意しながらその後について歩いた。
クラウドはまだ誰かに話せないことがあるのだ、ということが今日分かった。
...いつか、その事について話を聞けたらいいなと思う。
絆がどうとか言っていたから、まだ俺は信頼に足る存在ではないのだろう。
まだ会って数日だしね。
何か大変重要なことなのだろう。
そんな重要なことは会って数日のやつに話せるわけがない。
まぁ、いつかはクラウドの相談にのれるような存在になれればいいな。
それに途中から居るようになったからか、クラウドが他の人と話していると分からないことが多すぎて、話についていけない。
1度過去にどの様なことがあったのか聞けたらいいなと思う。
......軽い気持ちで助けただけなのに、いつの間にかとても大切な存在になりつつある。
その事に薄く心の中で笑いながらも、頑張っていこうと心に刻んだ。