24話目
クラウドはこれまでのことをデクに話した。
デクは話を聞き終わると考え込み、
「ふむ、カスパルはミスルナの元貴族だな」
「昔は勢力があったが今は落ちぶれていると聞く」
「ミスルナの方針が変わるときに一番に反対していた家系だ」
「その時に負けて勢力が落ち、多く持っていた奴隷も解放されたとか」
「奴隷が居なくなったから、そんな強行に出たのかもしれんな」
「......だが、カスパルは人の奴隷は持っていなかったと思うんだが...気が変わったのか?」
最後は自分自身に言っているように小さい声だった。
他の人は聞こえていないようだ。
デクは考えをまとめたのか1度頷き、
「よし、事情は大体わかった」
「とりあえずはカスパルを捕まえて話を聞いてみよう」
「もう一度呼ぶと思うから宿の場所を教えといてくれ」
クラウドはデクに宿の場所を言い、それをデクはメモに取った。
「よし、もう帰ってもいいぞ」
デクはそう言い、他の人達をつれ何処かに行った。
特に何事もなかったことに安心したのか、クラウドは息を吐いた。
そして、俺の方を見
「じゃー、宿に戻ろっか」
「ガゥッ」
そして二人で歩いて宿まで戻り、部屋で休息をとることにした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
鐘がなる。
クラウドと俺は仮眠から覚めた。
「おはよう、ブラン」
「ガウ」
そういえば、この鐘のことを聞こうと思っていたのに忘れていたな。
今聞いておくか。
だが、どう聞けばいいんだ?
うーむ...
話ができないと言うのは不便だな~
取り合えずメロディーを口ずさんでみるか。
そしたらわかってくれるかもしれない。
「ガーウガゥガーウガゥガウガウガウ、ガーウガゥ、ガーウガゥ」
歌い終わり、これが何か分からないと示すため首をかしげる。
クラウドは俺が急に歌い出したから驚いたようだが、その後は不思議そうな顔をしている。
俺が首をかしげると何か閃いたような顔になり
「鐘の音で歌の稽古をしているの?」
「それだったら、最後の方はもう少し低くすれば言い感じだよ」
笑顔でそんなことを言われてしまった...
違うんだ、歌の稽古なんかはしていないんだ。
恥ずかしくなり、首を左右にブンブン振る。
「あれ?違うの?」
「ガウッ」
「うーん、じゃー、この鐘の音は何?って聞きたいの?」
「ガゥッ」
やはり、分かってくれた。
よかった。
というか、何故歌の方にいってしまったのか...
なかなかそんな風には思わないだろうに...
「あれはね、時間を知らせるための物なんだよ」
「1日に4回なって今のが朝を知らせるためのもの」
「次が昼、その次が夜、その次は新しい日が始まるっていう意味なんだよ」
「時間を見る魔法道具もあるんだけど、あまり使われてはいないかな」
「大体、鐘の音で時間がわかるしね」
ほう、なるほどやはりそういう意味か。
教えてくれたお礼を言うため頭を下げる。
「いいよいいよ、これくらい」
「でね、話変わるんだけど今日ブランはどうする?」
「僕はちょっと調べものがあるから、図書館に行こうと思ってるんだ」
「さすがに図書館の中にブランは入れないと思うんだよね...ごめんね」
ふむ、図書館の中に入ってみたいがダメか。
まぁ仕方ないな。
獣だし...
どうする?と聞くということは、俺は自由に居ていいのだろうか?
じっとしているのも暇だし、街の中を見て回りたいな。
昨日走り回ったが、周りなんて見る余裕なかったし...
その事を何とかクラウドに伝える。
「うん、わかった」
「その首飾りがちゃんと見えるように付いていれば、大丈夫だと思うよ」
「たまに従魔を買い物に行かせる人もいるみたいだし」
そんなに自由にさせてもいいのか?
まぁ、俺がどうこう言えるわけでもないし、自由にしてもいいなら嬉しいからいいんだけども...
そして、食堂でご飯をとり、別行動することになった。
さて、どこを見て回ろうかな。
見て回りたいとは思ったが、家ばかりで特に面白味がない。
ギルドから門の間の道のりは屋台みたいなのがたくさん出ていたが、他の所はそんなものはなく家ばかりだ。
うーむ、暇になってしまった。
どうするか...
そんなことを考えながらブラブラしていると
「ん?今日は主人は一緒じゃないのか?」
そう声をかけられた。
声のした方を見ると少女が立っていた。
......誰?
「ん?わからんか?お前の主人の幼なじみだ」
...いや、そんなの知らんし...
そんな話聞いてないし......
てか、何で俺と会話してるのこの子。
俺は言葉が分かってるって何で知ってるの?
「むー、これでもわからんか。あいつ何も言ってないな」
いや、なかなか自分にはこんな幼なじみがいるんだ、って言う話にはならないと思うが...
「お前とも1度顔を会わしているのだが?」
1度顔を会わしている?
顔を会わしたのはデクとその他の門番...ぐらいか?
後はすれ違ったとかで見ているとか?
そんなのはさすがに覚えてないわ...
俺が考えていると呆れたようにため息をつき
「私は受付嬢のルリカだ」
...受付嬢...あー、ギルドの......
何か、雰囲気が全然違う。
受付嬢をしているときは明るく笑顔でいたのに、今は不機嫌そうなむすっとした顔をしている。
こっちが素なのだろうか...
で、俺になんのようだ?
「分かったのか、分かってないのかどっちなんだ」
「首をかしげられても私には分からん」
「ちゃんと言え」
うーむ、これでクラウドは分かってくれるのに...
言っても俺の場合分からないだろうに...
「ガウッ」
分かったとつげ頷く。
すると、少し満足げな顔で
「よしよし、やはり普通のやつよりは言葉がわかっているな」
「で、主人は今何処にいる?」
普通のやつより?言葉がわかっている?
やはり普通の魔物は言葉が通じないんだろうか?
うーむ、取り合えず先に返事をするか。
図書館にいるのは知ってるがどう言えばいいんだ。
方角はここから南だからそっちを指して言う。
「ガウゥッ」
「そうか、また、図書館か」
「お前が居るようになったのにまだ頑張るんだな」
よく、方角を指しただけで分かったなこの人。
それほど図書館に行ってるのだろうか。
「お前、クラウドとずっと一緒に居てやれよ」
「何処に行くときでもというわけではない、ただ、寄り添って守ってやれという意味だ」
「昨日もヤバかったそうだが、何とか守れたのだろう?」
「その調子で頑張ってくれ...私が......なら...」
急にそんなことを言ってくる。
何なのだろうか...
デクもルリカも...
「ガゥガァゥガウ」
心配せずとも守るつもりだ。
そう、ルリカに言う。
「そうか、頼もしいな」
「いざというときは、私も頼るようクラウドにも言っておいてくれ」
「じゃぁな」
そう言い、ルリカは去っていった。
結局疑問に思ったことを聞けなかった...
それに...
...なんか、言葉わかってないか?
あいつ...