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人生...いや、狼生は楽じゃないね!  作者: ゴンピ~
第1章:森の異常
20/132

20話目


クラウドが今まで泊まっていた宿についた。

そこで、俺を泊めてもいいか了承を取り、クラウドの泊まっている部屋に入った。

やっと休息がとれる。

ずっと歩きっぱなしだったし、街に入ると怖がられはしないがチラチラと見られていた。

それにより肉体的には疲れていないが、精神的に疲れた。

床の上でごろんと寝転がる。

少しひんやりとするが、それが微妙に気持ちいい。

何か気持ちいいから眠くなってきたな。

そのままウトウトと、まどろんでいると


「......ねぇブラン、僕と友達でいてくれるよね?」


...ん?急にどうしたのだろうか?

眠気を振り払い、犬のお座りの体制になる。


「...今日ね、ブランが仲間になるって言ってくれてとても嬉しかったんだ」

「やっと僕にも仲間が出来たと思ったんだ」

「でも、その後門の人とブランがすぐに仲良くなって、また僕の元から離れてしまうんじゃないかって思うと、なんだかとても悲しくて、ブランに嫌な態度とっちゃってた」

「ごめんね...」


...なるほど、だから不機嫌そうな態度だったり、さっさと自分だけで何も言わずに行動したりしていたのか。


「僕、今まで友達いないから、ずっと独りで、寂しくて、悲しくて...」


クラウドの顔がどんどんぐしゃぐしゃになっていく。

言葉ももう何を言っているのか分からない。

だが、今まで辛かったということはわかった。

見た目の年齢よりも少し大人びた感じがしていたが、やはり一人きりでいるのは寂しかったのだろう。

だから、慰めようと頭を撫でようと手を伸ばそうとしたのだが、そう言えば俺、手がないんだった!

前足で撫でても良いが、道を歩いているので汚い。

これで頭を撫でられるのは嫌だろう。

仕方がないので、前足を引っ込め、クラウドの涙で濡れている頬を舐めた。

クラウドが一瞬泣き止んで此方を見、再び眼に一杯涙を浮かべ俺に抱きついてきた。

仕方がない...

泣き止むまでこのままでいるか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あれから数分経った。

クラウドも大分落ち着いたようだ。

よかったよかった。


「ごめんね......急に泣き出したりして」

「今まで誰にも言えなかったから、何かこうどんどん溢れてきちゃって...」

「でも、これでスッキリしたよ!」

「......後は問題を解決するだけだ」


クラウドは晴れやかな表情をしている。

溜め込んでいたものを全部吐き出せたからだろう。

それは本当によかった。

最初の方は俺に言っているようだったが、最後の言葉は小さく、自分に言い聞かせている風だった。

それでも、近いから聞こえたのだけれど...


...それで、問題ってなんですか......

そこがとても気になる。

デクも謎なことを言っていたし、ギルド内の嫌な視線も気のせいではなかったのかもしれない。

全て同じことなんだろうか?


「ブラン、取り合えず夕御飯にしない?」

「ちょっと早いけど、その方が食堂は空いていると思うし...どうする?」


考え事をしているとクラウドがそんなことをいった。

そう言えば、外も大分夕焼け色に染まっている。

そんなことを思っていると鐘の音が聞こえてきた。


「あっ、4回目の鐘がなっちゃった」

「最近明るいから少し時間が分かりにくいなー」

「早く行こう!そうしないとこれから混んで来るよ」


そう言い、クラウドは部屋を飛び出した。

4回目の鐘って何だろう。

聞こうと思っていたのに...

取り合えず急いでクラウドについていく。


食堂につくとクラウドは料理を注文し、席に着いた。

その横に俺は座る。

料理を待っている間、時間があるので先ほど気になった鐘について聞こうとした。

だから、クラウドを鼻先でつつき此方に注意を向けさせる。


「どうしたの、ブラン?」

「大丈夫だよ、ちゃんとブランの分も注文しておいたから」


それはありがとうございます。

それを伝えるためお辞儀をする。


「いいよいいよ、これからは一緒なんだから!」

「ブランもお腹すいているんだね、もうちょっと待っててね」

「出来たら持ってきてくれるから」


これにも頷いておく。

ご飯かー、楽しみだな。

ずっと生肉だったから、久しぶりに料理されているご飯にありつける。

ウキウキしていると尻尾も自然と振れる。


「そんなに楽しみなんだね」


クラウドも笑っている。

早く来ないかな!

考えているとどんどんお腹が空いてきた。


「はい、お待ちどおさま!」


そう言って、少し恰幅のいいおばさんが料理を運んできてくれた。

クラウドのご飯は固そうな黒いパンと野菜たっぷりのスープ、野菜炒めと何だか野菜が多かった。


「ワンちゃんのはこっちね!」


俺の分は床に置いてくれた。

食べやすいよう浅めのお皿にいれてくれている。

何のかは分からないが、大きめの塊の肉で焼かれている。

ハーブを使っているのか、とてもいい匂いがする。

食欲をそそる匂いで、ヨダレが出てきた。


「じゃー、食べよっか」


「ガゥッ!」


さっそく肉の塊に噛みつく。

味付けは塩を少しかけているだけのようだ。

だがそれだけというのが逆に、肉の旨味を引き立てている。

ハーブも肉の臭みを綺麗に消してくれている。

久しぶりの料理なので無我夢中で食べきってしまった。

いやー、美味しかった!

久しぶりだからかあまり手を加えられていなくても、今までにないくらい美味しい料理だったと思う。

まぁ、ほぼ手を加えていないから料理というのかどうかも怪しいが......


「ブランも食べ終わった?」

「じゃー、そろそろ部屋に戻ろっか」


確かに早く部屋に戻った方が良さそうだ。

食べる前はまだ席に余裕があったが、少し見ない間にほぼ満席になっている。

酒を飲み騒いでいるやつもいる。

長居するとやっかいごとに巻き込まれそうだ。

だから、クラウドと共に階段を登り、部屋まで戻ることにした。


部屋に戻るとクラウドは鞄の整理をし始めた。

そうだ、1つ気になっていることがあるんだった。

クラウドの側に寄っていく。


「...えっと、これは今日使ってないから大丈夫......あれ、どうしたのブラン?」

「これらが気になるの?」


そう、クラウドは手に持っている青と緑の液体が入ったビンを指して言った。

それはまぁ、大体わかる。

緑色の方がHPを回復するもので、青色の方がMPを回復するものだ。

魔法を使った後、青色の方を飲んでいたので、鑑定をかけるとMPが回復していた。

だから多分あっていると思う。

だから今は置いておいて、俺が気になるのは鞄だ。

普通の肩掛け鞄の大きさしかないのに、それでは絶対入らないだろうと思われる量の物が入っていたのだ。

だから横に首を振り、鞄に視線をやる。


「鞄?鞄がどうかしたの?」

「あっ、もしかしてこんな量の物がこの鞄から出てきたから、それを不思議がっているの?」

「この鞄はね、空間拡張が付与されているんだよ」

「だから、こんなに小さく見えても結構はいるし、一見極々普通の鞄でしょ」

「その空間拡張の容量が大きければ大きいほど、値段が上がるんだ」

「...これはねそこまで高くはないし、中の物の時間も止められないけど使用者を決められるし、僕が孤児院に入れられたときに一緒に持っていたものの1つなんだよ」


よく視線だけでわかったな。

クラウドは言い終わると少し悲しそうな表情をした。

自分が孤児院に捨てられたことを、思い出したからかもしれない。

これは聞かなければよかったな...

部屋の雰囲気が重くなっている。


「まぁ、この鞄便利だから持たせてくれてよかったよ」


そう明るく笑って言っているが、上部だけの笑顔だ。


「さて、明日の用意も出来たし、朝も早いからもう寝よっか」

「おやすみ、ブラン」


そう言い鞄に荷物をさっさと詰め込んで、ベットに入り寝てしまった。

俺も特に何もすることが無いので、ベットの傍らに寝転がり目を瞑った。

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