19話目
デクは機嫌良くクラウドの頭を撫でている。
クラウドも俺と同じことを考えてたらしくポカーンとしている。
「いやー、魔法を使うのが上手いとは聞いていたが、まさか魔物をテイム出来るほどとはな!」
「まだこんな小さいのに大したもんだ!!」
1人でそんなことを言い、笑っている。
どうやら少し勘違いしているようだ。
テイムというのは多分、魔物等を使役する魔法のことだろう。
その魔法で俺を縛っていると思っているようだ。
だが、実際は俺はそんなもので縛られていないし、第一そんなものをかけられてもいない。
これは訂正しておかないとな。
クラウドもそう思ったようで、
「...あの、テイムじゃなく......」
「あぁ!分かってるよ」
「街に入れるよう許可がほしいんだろ?」
「もっと大きな都市に行けば他にもテイムされた魔物を多く見かけるが、ここは小さい街だからな」
「最初は怖がられるだろうが、この獣魔の首飾りを着けていればそんなに混乱が起こることもない」
「これをちゃんと見えるところに着けておくんだぞ!」
そう言ってクラウドの手にネックレスのようなものが渡された。
ネックレスは、何かの牙が3つついているくらいで、特に変わったものではない。
それを困惑気に俺の首に掛けてくれた。
「おー、似合っているぞ!えーっと......ブラック!」
デクが笑いながらそんなことを言う。
...名前違うし。
「いやはや、魔物をテイムするために外に出ていたんだな」
「だがな、それでも危ないことに変わりはない」
「お前は魔法使いなんだから、護衛として誰かについてもらえば、こそこそと外にでなくても済むんだぞ?」
「今回は大事が無かったから良かったが...まぁ、これからはこいつがいるから少しは安心か」
「クラウドのことしっかり守るんだぞ、ブラック!」
......だから、名前違うって...
まぁ、クラウドのことは任せろ。
しっかり守っていくつもりだ。
そう頷くと、
「んっ?タイミング良く頷いたな」
「お前俺の言葉分かってるのか?」
また、頷いてやる。
「...テイムされた魔物って、主人の簡単な命令しか分からないはずなんだが、こいつの場合簡単なではなく、完璧に言葉が分かっているようだが?」
「何か、随分と変なやつだな」
「ガゥガゥ」
変とは心外だな。
抗議するぞ。
「ガハハ、すまんな!」
「だが、話がわかるのならさっき言ったこと頼んだぞ」
そこまて言って、俺の側まで顔を近づけ
「魔物がやったと分かるようには、暴れるなよ?」
「それが分かれば、クラウドに迷惑をかけることになるからな」
「いざというときは俺を頼れよ」
ヒソヒソと俺にそんなことを言う。
どういうことだ?
続きを聞こうと思ったが、デクは顔を遠ざけ
「それでは、クラウドはお帰り、ブラックはようこそ、ミスルナヘ!」
そう言い街の中へ促される。
門をくぐると、街の全容が見えた。
家はレンガ造りで道はある程度綺麗にされている。
また、道の脇には屋台のようなものもあり、それなりに活気がある。
全体的に雰囲気が良く良い街だと思う。
デクの言っていた通り、俺を見て少し怖がっている風だが首の飾りを見て安心している。
「...じゃー、依頼達成してるから、報告にギルドに行こっか」
そうクラウドが言いさっさと歩いていく。
...あれ?何か不機嫌?
取り合えず隣に付いて顔を伺いながら歩く。
少し歩くと他の家より大きく立派な建物についた。
ここがギルドなのだろう。
クラウドが扉を開け中に入っていく。
俺もそれに続いて中に入ると、扉の開ける音に気が付き何人か此方を見た。
が、すぐに興味を失い各々のしていたことに戻った。
その中に一瞬嫌な気配があった気がしたのだが、すぐに無くなったので誰がその元なのか分からなかった。
ギルド内は広く、机や椅子が何個か並べられている。
奥にはカウンターが二つあり、片方は依頼の受付などをしており、もう片方は飲食を提供しているようだ。
机や椅子は飲食や、話し合いをするために使うものなのだろう。
実際、数人づつ固まり酒を飲んでいたり、何か食べながら話し合いをしたりしている。
クラウドの用があるのは依頼の達成報告なので右側のカウンターだ。
カウンターには受付の人が立っている。
十代後半ぐらいの女の人で、髪は栗色、肩よりも少し長めに伸ばしている。
目が大きく、鼻もつんと高い。
顔立ちが整っており美人さんだ。
「依頼の達成報告と魔物の部位を買い取ってほしいんだけど」
そうクラウドが言い、腰の鞄から何かの紙とドーウィの羽、足
、石?を取りだしカウンターに置いた。
「はい、かしこまりました」
受付の人がその紙と羽と足を見、石は何かの機械に入れた。
「はい、ちゃんとサインもありますので、依頼は達成されているようですね」
「足と羽もそんなに痛んでませんし、魔石も本物のようです」
「それでは、こちらが今回の報酬となります」
「お疲れさまでした」
そう言い、小さな袋をクラウドに渡した。
何の依頼をしたのだろうか?
それに、あの石は魔石と言うらしい。
クラウドはその袋を腰の鞄に入れ、出口に向かって歩き出す。
俺もその後についていく。
そして、何事もなくギルドを後にした。
その背後をじっと見ている目が3対。
このとき、俺はそれらについてまだ知らなかったのだ。