16話目
本気だろうか?
さっき出会ったばかりの人に...いや、狼にそんなことを頼むのは危ないと思うのだが...
もしも悪い奴だったらどうするのか...
そう言えば歩いているときも、これといって周りに注意を払っているわけでも無さそうだった。
よくこんなところまで来れたな~
それとも町か何かが近いのだろうか?
それで、面白半分に森に入ってみたのだろうか。
この少年の年齢的にイタズラをしてみたくなる年頃だろう。
それに、魔法も結構使えている。
その可能性が高いかもしれない。
こんなところで一人では、また危険に出くわすだろう。
...町まで送ってやろうか。
折角助けたのにすぐに死なれるのは何かこう...
嫌な気分だ。
だから一時的に仲間になるという名目もいいかもしれないな。
町まで行けばこんな出会ったばかりの狼なんか、入れられないだろうから別れることになるだろう。
そして、森に帰ればいい。
俺は自由にのんびりとしていたいのだ。
よし、そうしよう。
そうまで頭の中で考えた後、少年を見ると不安そうな顔をしていた。
そして、目が合うと残念そうな顔をし
「やっぱり、言葉、通じる、ない...」
『ウィンダー言語Lv2になりました』
うわ、単語だけど分かるようになった。
習得早くないか?
いや、その前に言葉が通じていることを言わないと...
だから首を左右に振った。
すると期待半分、疑惑半分の顔をし
「僕、言葉、わかる?」
と言った。
だから頷いておく。
すると顔を輝かせ嬉しそうな表情をした。
「じゃあ、改める、聞く、仲間、なる?」
これにも頷いておく。
すると少年は嬉しさのあまりか、俺に抱きついてきた。
怪我をしている体に勢いを付けて抱きつかれると、傷に響きめっちゃ痛かった。
声がとっさに出そうになったので、何とか堪えようとしたが呻き声のようなものは出てしまった。
すると直ぐに少年は離れ
「どうした、何?大丈夫?」
「さっき、戦闘、怪我、した?」
俺のことを心配そうに見た後、俺に手をかざし
「この、者、傷、癒す。キュアー」
少年の手がほんのり光り、それが俺の方に飛んできた。
その光が体の中に入っていくと奥がじんわりと暖かくなってきた。
その暖かみが退くと同時に、体の怠さや傷の痛みも退いていった。
「これ、痛い、ない?」
驚いた。
これ程効くとは...
少年にもう大丈夫だという意味を込めて頷いておく。
少年は安心したように息をはいた。
それで、あることに気がついたような顔をし
「狼、名前、何?」
「狼、名前、ない、つける」
と言い出した。
まぁ、確かに名前はない。
いや前の名前は有るにはあるが、思い浮かべると何故かとても違和感があるのだ。
それは自分の名前ではない。
という風に...
名前がないことを少年に伝えると少年は考え始めた。
「狼,黒...」
そんな言葉を呟いている。
...えっ、まさか黒いからクロとかブラックとか、犬猫にポチタマと付けるような、そんな感じの名前にされるのだろうか...
それはやめてほしい...
不安がどんどん募ってくる。
そこで、少年が決め終わったようだ。
「狼、名前、ブラン、いい?」
「狼、黒色、素早い、風」
ちゃんと考えてくれたようです。
...全然文句ありません。
逆に疑ってしまい申し訳ない。
それでいいということを伝えるために頷く。
『名前をブランに決定します』
『よろしいですか?』
『YES or NO』
『注意:一度決めると余程の事がない限り変えられません』
うおっ、...ビックリした。
名前って変えられないんだ...
まぁ、特に変な名前でないし良いだろう。
YESで!
すると、体の奥に何かがピッタリとはまった気がした。
『進化先が変更になりました』
...おおぅ、何か色々と起こるね...
そういえば、進化可能になってたんだっけ。
進化先って何があるんだろう?
『進化先を表示します』
。。。。。。。。。。。。。。。
黒狼:ランク-
ブラックウルフ:ランクE-
。。。。。。。。。。。。。。。
おお、表示してくれた。
表示してくれたのは良いんだが...
これ、日本語か英語かっていう違いだけじゃないよね?
何かランクとかは違うけど...
説明を見てみよう。
『黒狼:突然変異し毛の色が黒くなった狼。
普通の狼より素早く、狡猾。
黒いことにより闇夜で狩りをするのが得意。』
『ブラックウルフ:黒狼が魔石を体内に宿し、魔物化したもの。
一定の強さを持つものだけが魔物へとなれる。
素早く狡猾で、闇に紛れての狩りを得意とする。
ランク値は、夜の場合とする。
昼間は中々見かけないが、その場合はランクF+である。』
ふむ、突然変異からの突然変異ということか。
魔石を体内に宿すってどういうことだ?
いつの間にそんな石が体内に出来たのだろう?
謎だ。
何か両方変わらなさそうだが、強そうな方にしておくか。
これからも強そうな方にしていこう。
そうすれば襲われることはないだろう。
だから、ブラックウルフを選択する。
『ブラックウルフになります』
『よろしいですか?』
はい。
そう答えた瞬間、どんどん視線が高くなっていく。
『気配察知Lv4になりました』
『気配消去Lv3になりました』
『噛みつくLv4になりました』
『引っ掻くLv3になりました』
『食いちぎるLv2になりました』
『回避Lv2になりました』
『暗闇Lv1を得ました』
『重圧Lv1を得ました』
何か色々上がったり増えたりしてるし...
体も大きく、がっしりと引き締まった感じがする。
まぁ、大きくなったと言っても普通の狼くらいのサイズなんだけどね...
前にドーウィを食べるシーンがありましたが、その時魔石を誤って食べ、少年に名前を付けられたことによりステータスが変化し、条件をみたしました。
本来は、子黒狼から黒狼になりレベルがMAXになると体の中に魔石があればブラックウルフになる
というものです。