136話目
ヘアリーブッシュ・ドラゴンモドキを倒し、僕は体を休めるために地面に腹ばいになっている。
新たな敵が来て、不意打ちをされないように気配を探ってはいる。
僕自身も近くの草に体を隠すようにしてあるし、気配も消している。
余程近づいてこない限り、見つからないはず……
そこそこ時間が経った。
毒が抜けたのか、気持ち悪さは無くなった。
サファイアはまだ目覚めない。
もう少し待ってみて、目が覚めないようなら背中に乗せて村まで帰ろうか。
…ん?
何かが近づいてきている。
あれか、アセリス・ヒスピダの気配だね。
僕たちに向けて一直線に来ているわけではないみたい。
ただ通りかかっただけかな?
んん?
また?
様子を見ていたら合計4匹も気配察知の範囲に入ってきた。
僕達に向けては来てないが、何処かを目指しているみたい。
…もし、向かっている方向そのままなら………
ヘアリーブッシュ・ドラゴンモドキの死体、毒沼みたいになっている所に行こうとしてる?
何をする気なんだろう?
気付かれたらすぐ逃げられるように、サファイアに近づいておく。
アセリス・ヒスピダが視界に入った。
真っ直ぐ毒沼に向かっている。
4匹は争ったり、威嚇し合ったりすることなく、仲良く毒沼に突っ込んだ。
あんなにボコボコ、ジュワジュワ凄い音がしているのに、なんの躊躇いも無かった。
少しして、アセリス・ヒスピダが毒の中から出てきた。
見た目は変わっていない。
。。。。。。。。。。。。。。。
種族:アセリス・ヒスピダ
Lv15/57 状態:健康
HP 836 MP 53
力 292
防御 323
魔力 28
俊敏 383
ランクC+
[通常スキル]
巻き付くLv2 麻痺毒Lv3
出血毒Lv1 噛みつきLv1
熱探知Lv3 テールアタックLv1
神経毒Lv1 溶解毒Lv1
腐敗毒Lv1
[特殊スキル]
毒無効Lv-
[称号]
毒マイスター
。。。。。。。。。。。。。。。
んー?
毒の種類が多くなった?
4匹全員見てみたけど、毒の種類は同じだった。
アセリス・ヒスピダは2種類の毒しか持ってなかったはず……
吸収したってことなのかな?
そして、4匹は別々に解散していった。
何だったんだろう……
視界の隅で何かが動いた。
『……終わったのか』
見てみると、サファイアが起き上がっていた。
『お前は……元気そうだな』
『最後敵の意識をそっちに持っていってくれたからね。
あの毒を食らったとき、まずかったもの…』
『……そうか』
サファイアは丸くなり、ふぅ、と息を付いた。
その後、僕はサファイアを乗せて村の近くまで走った。
村の近くに着くと僕は獣人化をして、サファイアを抱えて村に入った。
クラウドが駆け寄って来て、凄く心配をされた。
ベニは低体温症と頭部打撲があったらしい。
村の医者に見せて、治療は終わったらしい。
ベニの両親からお礼を言われた。
そして次の日の昼にはベニも目を覚ました。
その後何もなく、さらに翌日。
この村を出発する事に…
「準備は出来ましたか?
…大丈夫そうですね。
では、出発しましょうか」
馬車が動き出した。
「おーい!」
声がする。
見てみるとキリトが手を振っている。
側にはレツ、ベニ、ソウ、ゴルがいる。
少し馬車から離れて子供達の方に行く。
「ネムアさん短い間でしたが、ありがとうございました」
「いいよ。
ベニも起き上がれるようになったんだね」
「うん。
助けてくれてありがと」
ベニは頭に包帯を巻いて、ソウに支えられている。
「ちぇ、本当にこんなに早く居なくなるのかよ」
レツは不貞腐れている。
「ごめんね。
またここに来るよ」
そう言うと、レツはこちらをみて
「来なくていい!
俺はこの村を出て冒険者になるからな!
何処かで会ったらその時は俺のパーティーに入れてやるよ!」
「冒険者になるには、まだ年齢が足りないけどね」
「うるせぇ!
キリトは黙ってろ」
レツがキリトに詰め寄っている。
「ネムアさーん!
もう行きますよー!」
子供達と話をしていると荷馬車が結構進んだみたいだ。
クラウドが声を上げ、手を振っている。
「もう行かなきゃ。
それじゃ、また何処かで会おうね」
僕は軽く手を振り、馬車の方へと走った。
直ぐに自分の持ち場に戻る。
「ネムアさんは人気者ですねー
僕なんて何故か逃げられちゃって、全然話をしてくれなかったんだよ?」
ニルくんが頭の後ろに手を当てて、拗ねている。
「それでさ、あの森に入っちゃった女の子を助けに行ったとき、強い魔物に出会ったんでしょ?
1人で倒したの?」
「いや、クラウドの従魔に手伝って貰って、どうにか倒せたって感じだよ」
「ふーん。
ネムアさん強いんだねぇ。
クラウドさんも凄いよね。
あんなに幼い見た目なのに、従魔を2匹も従えてるなんてさ。
…エルフみたいだよね」
ニッコリと笑いながらこちらを見て言う。
「確かにクラウドはまだまだ若いよね。
でも、大切な親友を探してるんだって。
大変だよね」
そう、そんなに若いのに大切な親友の為に旅に出てるなんて、本当に大事な人なんだろうね。
僕がしみじみとしていると、ニルくんは一瞬、無表情になった。
その後悲しそうな顔をして、
「…それは大変だね。
そんなに大事な親友が居なくなるなんて、とても悲しい話だよ」
その後は、他愛無い話をニルくんがしていて、僕は相槌を打ったり、時には質問したりして旅を続けていった。
ラージャスタの街に着いて補給をした以外、特にこれといったことは起こらなかった。
そして今日、長い旅は終わりやっと王都に着いた。
長い行列に並び、審査を終えた後都市に入る。
まっすぐ伸びる石畳。
丸い広場。
その中心には誰かの銅像が大きく立っている。
その奥には大きなお城がそびえ建っている。
ここが王都スタンベルク。
凄い人でいっぱい。
「それではネムアさん、クラウドさん、メイルさん。
急な護衛依頼を受けていただき、ありがとうございました。
おかげで被害なく王都に着くことができました。
これは依頼の報酬です」
コルネさんはそう言って、皮袋をクラウドに渡した。
「後、サーベルキャットの店が王都にもありますので、何か入り用でしたら訪ねてきてください。
出来るだけ、便宜を図らさせていただきます」
そう言うと、コルネさんは荷馬車を率いて、何処かに行ってしまった。
「じゃ、僕達も依頼達成をギルドに伝えに行こっか?
ネムアさんまた会ったら、話しようね!」
ニルくんは手を振り走って行ってしまった。
ミルさんは此方にお辞儀して、ニルくんの後をゆっくり歩いてついていっていた。
「すげぇ両極端な人達だよな。
あのパーティー」
メイルが少し呆れたように言う。
「…リーシアはあの人苦手です」
リーシアはクラウドの後ろに隠れつつ、ボソリと言った。
「取り敢えず、宿を探しますか?
空いている宿があるといいんですけど……」
と言うことで、一先ず宿を探すことになった。
人が多いので、リーシアはクラウドと手をつなぎ、僕は何故かサファイアを抱える事になった。
人が多いので踏まれる可能性があるっていうのは分かるんだけど、なんで僕?
「サファイアは随分ネムアさんに懐いてるね」
そうクラウドに言われた。
そんな懐かれるようなことしたかな?
疑問に思いつつ、しっかり抱え、皆と宿を探し始めた。




