131話目
僕達はシーフクロウを倒しきる事が出来た。
「おやおや、これは素晴らしい!
シーフクロウを寄せ付けないとは………
貴方がたに頼んで良かったですね」
コルネさんがニコニコとしている。
ミルさんとニルくんがシーフクロウの解体をしている。
あ、ミルさんが此方に来た。
「お金は払うから、少し多くシーフクロウを貰っても?」
どうだろう?
レイのご飯分があれば僕は良いけど……
クラウドとメイルの方を見る。
「お金は頂かなくても大丈夫です。
シーフクロウ丸ごとですか?」
「私が欲しいのは羽だけ。
矢羽にすれば敵に見つかりにくい矢が出来るの」
「僕達は、獣魔用にお肉が欲しいだけなので、羽は全部そちらの物でも良いですよ」
「そう、ありがと。
じゃ、肉はそっちのね」
そう言って、解体作業に戻っていった。
ミルさんは随分淡白な感じだね。
ニルくんとは大違いだ。
そんな2人で行動してたら、ぶつかったりしないのかな?
その後クラウドとメイルも解体作業をし、肉と羽をミルさんと交換した。
そして荷馬車が出発し、何事もなくコメリナ村に着いた。
コメリナ村は一面緑色で覆われていた。
この葉っぱがコメリナっていう植物なのかな?
この葉っぱから薄い青色から紫色までの色が出るんだ?
凄く不思議。
村ではコルネさんがロート都市から持ってきた食料や日用品を村人に売って、村で作ったコメリナの染め物を買っていた。
そして、村の空いている土地にテントを建てさせてもらい、そこで寝泊まりすることになった。
3日ほどこの村に滞在するらしく、僕は何しようかなってぼーっとしていた。
村の側の木に背をもたれかけさせ、地面に座って村を見ていた。
レイは丸まって寝ている。
僕もこのまま昼寝でもしようかな?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「……るかな?」
「大丈夫寝てるよ」
「本物かな?」
「触ってみれば分かるよ」
「えっ、僕はやだよ。
ソウが触りなよ」
「俺!?
いや、そう言うのはやっぱりレツがやるだろ?」
「俺は…別にどっちでも良いから、触らねぇ」
「あれ~
怖いんだ?」
「ベニは黙ってろ!」
なんだか随分賑やかだな。
僕の周りに4人居るみたい?
「なに?
僕に何か用?」
顔を上げ、そう聞いてみた。
すると4人は驚いた顔で此方を見た。
「「「「うわぁぁぁーー!!!!」」」」
一目散に走って行ってしまった。
何だったんだろう?
ちょっと最後の声で耳が痛い。
『何事!?』
レイもさっきの声で起きたみたいでキョロキョロ辺りを見ている。
「何だか4人居たんだけど、驚かせちゃったみたいで、走ってどっかに行っちゃった」
『ふーん、全くこっちもびっくりしたじゃない』
「ごめんね」
『貴方に言ったんじゃないわ。
その4人によ』
レイは少しプリプリしながら、また地面に寝そべった。
僕は目が冴えちゃったなぁ。
どうしようかな。
そう言えば魔物と戦う時、カマイタチをクラウドの……
なんだっけ………
エアーカッター?に似せて放ったけど、誰にもバレてないかな。
風だから視認しにくいっていうのもあるから大丈夫だとは思うんだけど………
吹雪も何かに似せて使えたらいいのにな。
吹雪を放つと結構な範囲で展開しちゃうから、目立つんだよね。
こう……威力を絞って小さい範囲でとか無理なのかな。
僕は手のひらを上に向け、その上で吹雪を発動するイメージをしてみる。
すると、手のひらから勢いよく風と雪が吹き上がった。
うわわっ!?
もっと小さく!
ぎゅっと縮んで!
後、上に吹き上げるのもダメだから、回転するように………
手のひらの上でグルグルと風が回転するようになってきた。
吹き上がる事はなくなったけど、何だかギュオンギュオンって凄い音がしてる。
うーん、無理に圧縮してるから疲れてきちゃった。
近くの木に向かって投げてみる。
手から離れると竜巻は大きくなり、木を飲み込んだ。
バキバキバキッと木が切り裂かれ、ゴトゴトと木材が落ちてきた。
ちょっと木を見てみる。
手で触るとすごく冷たい。
木材同士をぶつけてみると、コンコンと音がする。
すごく硬くなってる。
………凍ってる?
『スナッブキュールニングLv1を得ました』
え、なにそれ………
『スナッブキュールニング:圧縮された水を急激に低圧にすることにより、蒸発熱が発生。
範囲内を急速に冷却する』
んんん?
何を言ってるのか全然分かんない。
圧縮はしてたけど、水は何処から出てきたの?
低圧って何?
蒸発熱とは?
………取り敢えず範囲内の物を直ぐに凍らせるってことね。
それだけ分かってたら良いや………うん………
「す……すごっ…………」
ん?
何か声が聞こえる。
声のした方を見ると少年が木に隠れながら此方を見ていた。
ヤバッ
見られた!
どうしよう!
僕がどう言い訳しようか考えていると、少年がゆっくり近づいてきた。
どうしようどうしよぅ!?
「……あの、さっきの魔法凄かったです!
何と言う魔法なんですか!?」
うわー!
僕のは魔法じゃなくて、スキルだから困った!
魔法として誤魔化そうとしても、僕魔法知らない!
「…えっと、えっと………」
「あ、ご、ごめんなさい!
あの商人の方達と一緒に来られたということは、冒険者なんですよね?
冒険者はあまり手の内を知られたくないんですよね?
それなのに、聞いてしまってごめんなさい」
少年が凄く謝ってくる。
いや、僕はそういうつもりはないんだよ。
ただ教えようにも教えられないだけで………
それに、最初は吹雪をコントロールしようと思って圧縮してただけだし………
何だか凄く謝ってて可哀想な気がしてきた。
吹雪って言わずに魔法をコントロールする練習をしてたらこうなったって言っちゃおうかな。
魔法じゃなくてスキルだけど………
「そんなに謝らなくていいよ。
魔法の名前を教えてあげたかったんだけど、今回のは名前のない魔法なんだよね。
暇だったから魔法のコントロールを練習してて、制御を外したらこうなった感じだからさ。
別に怒ってないからそんなに謝らなくていいよ」
「そ、そうなんですか?
獣人の方なのに優しいんですね。
それに、こんなに大きな魔法を使えるなんて、魔力が高いんですね
僕なんて普人族ですけど、こんな大きな魔法は使えないです……
冒険者は皆こんな感じなんですか?」
冒険者ってどれくらいなんだろう?
あまり他の人が戦ってるの見たことないんだよな………
でも、メイルは魔法使わないし………
そう言えばニルくんも使ってなかったな。
ミルさんの矢がいっぱい降るやつはスキルかな?
って事は、魔法を使えるのはクラウドだけか………
あんまり使える人は居ないのかな?
「僕最近冒険者になったばかりで、他の人がどうかはよく分からないんだよね。
でも魔法を使える人はそんなに多くないと思うよ」
「さ、最近ですか!?
それでこの凄さ………
冒険者って凄いんですね!」
何だか凄くキラキラした目で見てくる。
そ、そんな凄くないよ?僕。
「何か、冒険の話を聞かせてください!
僕冒険者に憧れてて!
もう少ししたらこの村を出て冒険者になろうと思ってるんです!」
「お前がなれるわけ無いだろ!
弱々キリト!」
急に怒鳴り声が響いた。
僕の目の前にいた少年はその声を聞くと、身がすくんだようだった。
声がしたほうを見ると、さっき逃げていった4人がいた。
さっきの声を上げたのは、赤い髪の男の子みたいだ。
「もー、そんな事言ったらダメなんだよ?」
「ベニは黙ってろ!」
青色の髪をした女の子が赤髪の子を非難しているが、赤髪の子は知らん振りをするようだ。
赤髪の子はズンズン此方に近づいてくる。
後の3人はこわごわとした感じでゆっくりと後をついていっている。
赤髪の子が僕の前まで来ると
「へん!
弱々キリトが普通に話してたんだ。
獣人なんて、全然怖くねえ!」
胸を張って言った。
「そもそも、お前本物なのかよ!
その耳も尾も偽物なんじゃね!」
指を指してそう言ってくる。
まぁ確かに獣人ではないけど……
「耳も尾も本物だよ。
ほら」
尾と耳を動かしてみる。
「そんなの、何か使って動かしてんだろ!
触らせて確認させろよ!」
えー………
あんまり尾とか耳触られるのは嫌だなぁ……
「駄目だよ!
そんなとこ触っちゃ!」
「何だよ!
文句でもあんのか!?」
何だか少年……えっとキリトって名前なのかな?が庇ってくれてる。
「文句じゃなくて!
獣人の尾とか耳とか触っちゃったら大変なことになるんだよ!」
「はぁ!?
何が大変なんだよ!」
「獣人の尾とか耳を触るのは結婚した夫婦同士だけなんだよ?
って事は、尾を触っちゃったらレツがこの獣人さんと結婚することになっちゃうよ!」
そうなんだ。
そんな事があるんだ。
でも、触ったら夫婦ってことにはならないと思う。
「………はぁ!?」
赤髪の子……えっとレツっていうのかな?はずざざっと僕から距離をとった。
そんなに避けなくてもいいのに………
何だか少し悲しくなった。