127話目
僕たちは船に乗って、ロート都市に戻ってきた。
戻ってきた直ぐにギルドに行き、クラウドさん達とパーティーの登録を行った。
パーティー名は星追い達。
ランクはDらしい。
僕は全然依頼の数をこなせていないからFランク。
でもパーティーに入ったから、お陰でランクCまで依頼を受けられるらしい。
パーティーで依頼を受けたらの話らしいけど。
今日はお互いの能力を確かめる為に、簡単な依頼を受けることになっている。
ギルドで待ち合わせって事だけど、もう来てるのかな?
「あ、ネムアさんおはようございます!
もう来てたんですね。
今メイルさんが丁度いい依頼を探してくれてますよ。
ここの椅子に座って待ってましょう」
クラウドさんが手を振りながら近づいてきた。
近くに机と椅子が4脚ある。
僕が椅子に座るとその向かいにクラウドさんが座った。
レイは僕の足元で寝そべっている。
「おーい、クラウド!
この依頼なら……っとネムアさんも来てたのか。
あー、えっと、近くの草原の切り裂きホッパーの討伐なんてどう…だろうか?」
メイルさんは紙を机の上に置きながら、ソワソワとしつつそう言った。
なんか、気にされてる?
「メイルさん、気にせずいつも通りで良いですよ?
僕は新参者なので、あまりよくわかってないですしね」
メイルさんは少し口をモゴモゴ動かし、クラウドさんの右側、僕に取って左側の椅子に座り、
「おぅ、すまねぇ。
少し緊張しちゃって……
なんか、あれだな。
ネムアさんは獣人っぽく無いな」
獣人ぽくない?
もしかして、何か変!?
「あ、いや、悪い意味じゃないんだけど。
獣人ってこう、プライドが高いというか……
怒りっぽいというか……」
メイルさんはキョロキョロしながらそう言う。
「人によって性格が違うこともありますから、ネムアさんは凄く落ち着いた人なんですね」
クラウドさんがフォローを入れている。
なるほど、獣人はプライドが高いのか。
けど、今から変えても変だし、このままでいいかな?
「あの、さん付けなくていいですよ?
僕は気にしませんし」
「そうか?
じゃー、俺のこともメイルって呼び捨てでいいぜ。
ネムアも気にせず普通に話せよな」
「分かった」
「僕にもさんは付けなくていいですよ!」
「うん。
じゃークラウドもさん無しで、普通に話してよ」
「あー、難しいぜ?
クラウドは俺でもさん付けだもんな」
「努力はしようと思うんですけど、なかなか難しくて……」
メイルがクラウドを見ながら言うとクラウドが困ったように笑う。
「そんなことより、依頼の話をしましょう!
草原にしたのはやっぱり遮るものが無くて、連携しやすいからですか?」
クラウドが急に話題を変える。
メイルは仕方ないなと言ったふうに息を吐き、
「それもあるんだけどよ。
林の方は様子がおかしいらしいんだ」
様子がおかしい?
僕はここに来て数日だから、林がおかしいかどうか分からなかったな……
「ここ数日、林の一部が雪に覆われていたらしい。
それも1箇所だけじゃなく、何箇所かあったんだと……
これは噂だが、氷雪系統のランクの高いやつが移り住んできたんじゃないかって話だ。
あの林にはサンゼンコウって言う主がいるらしい。
もし、主の座をめぐって争いが始まったら他の魔物もどう動き出すか……」
「そんな事が起こってるんですね。
それなら、予定よりも早めにここを出発したほうがよさそうですね」
2人は神妙な顔で話し合っている。
あの林に主が居るんだ。
あの硬かったアルマジロより強いのかな?
今ならレベルも上がったし、アルマジロくらいなら倒せそうだよね?
でも、2人が深刻な感じで話しているから、もっと強いのが居るんだろうな。
僕も早く強くならないと……
「じゃー、この依頼を受けて何も問題なさそうなら、明日にはここを出発するってことで良いか?」
「そうですね。
昼過ぎ位に依頼を終えて、そこから旅の準備をすれば間に合うと思います」
「よし!
なら早く終わらせないとな!」
2人が立ち上がる。
話は終わったみたい。
僕はレイを起こして、2人についていく。
「あ、そうだ。
ネムアさんに僕の仲間を紹介するの忘れていました。
今はギルドの外で待って貰ってるんですけどね」
クラウドはそう言いながら少し早足でギルドの外に出た。
ギルドを出て左側に向かう。
すぐそこに、大きな鹿?が見えた。
「サファイア、クプレ。
一緒に旅をすることになったネムアさんと、その相棒のレイだよ!
ネムアさん、青い鳥の子がサファイアで、大きな鹿がクプレです」
青い鳥?
キョロキョロと辺りを見てみると、いた。
鹿の足元に濃い青色の鳥がいた。
素っ気ない態度で此方をチラッと見た。
すぐ視線を外す。
今度は凄い勢いで此方を凝視している。
どうしたんだろう?
何かあるかな?
首を傾げていると、青い鳥がトコトコ歩いてきた。
そして僕を色んな角度から見ている。
「サファイアも何か思うところがあるんだね……」
クラウドがポツリと呟いた。
僕はじっとサファイアを見てみる。
サファイアも僕をじっと見てる。
少しの間そうしていたけど、サファイアの方が先に視線を外した。
少し落ち込んだような様子で鹿の所に歩いて戻っていく。
「ネムアさん、すみません。
サファイアも僕の親友と仲が良かったので、多分似てると思ったんだと思います」
そうなんだ。
その親友は大事に思われてるんだ。
僕にもそういう人達はいたのかな?
心配とかしてくれてたりするのかな……
「まぁ、取り敢えず早く行こうぜ。
早く依頼を終わらさなきゃな」
メイルの声かけで、僕達は草原に来た。
「よし!
まずは切り裂きホッパーはランクDと少し高めだ。
だが、クラウドの獣魔たちが居るから危険はないだろう。
それで確認なんだが、ネムアはランクFだが、最近登録したばかりって事で良いんだよな?」
頷いておく。
「けど獣魔を見た感じ、Fランクの低級ではないんだろう?」
「うん。
レイはアイスウルフでランクはCだよ」
クラウドとメイルは少し驚いたような顔をした。
「あんまり見たことない種類なのに、種族が分かってるのか。
凄いな。
頑張って調べたのか?」
「いや、調べてないよ。
僕にはステータスが分かるスキルがあるんだ」
「な、なに!?
もしかして鑑定持ちなのか!?」
メイルが勢いよく詰めてくる。
「……ち、近いよ。
そう、鑑定を持ってる。
よく分かるね」
メイルは僕から離れため息をついている。
「ネムアさん。
あまり、鑑定を持っていることは言わないほうが良いですよ」
クラウドが少し心配そうに言う。
「鑑定って他の人のステータス、数値やスキルが見えるから冒険者にとっては嫌な人も居るんですよ。
それと、あまり無闇に使わない方が良いです。
レベルが高い人なら鑑定をかけられたって分かるみたいで、揉め事になっちゃいます」
そんな事になるんだ。
昔の僕は良く使ってたのか、鑑定のレベルも高い。
まぁ、敵のステータスが分かるのって生きていくのには、凄く重要だよね。
人間にはあまり使わないでおこう。
後、高位の魔物も分かるのかな?
「分かった。
気をつけておくよ」
「………あの、そう言っておいてなんですが、少しお願いをしてもいいですか?」
ん?
なんだろう?
「サファイアとクプレの種族を教えてほしいんです」
「いいの?
ステータスを見ても?」
「はい。
本人に確認を取りましたので、お願いします」
本人に確認?
何も聞いているような素振りはなかったけど?
それに、人間って魔物の言葉なんか分からないよね?
まぁ、いいか?
僕も彼ら?彼女ら?の言葉は分からないし。
鑑定をかけてみよう。
。。。。。。。。。。。。。。。
サファイア
種族:カースバード
Lv35/50 状態:健康
HP 1029 MP 5057
力 147
防御 53
魔力 2604
俊敏 52
ランクC−
。。。。。。。。。。。。。。。
。。。。。。。。。。。。。。。
クプレ
種族:フトゥリーディアー
Lv31/52 状態:健康
HP 1364 MP 279
力 651
防御 1395
魔力 124
俊敏 595
ランクC−
。。。。。。。。。。。。。。。
スキルまでは見なくていいかなと思って、ランクまでにしてみた。
「サファイアがカースバードっていう種族で、クプレがフトゥリーディアーって種族みたいだよ」
「ありがとうございます!
2人とも聞いたことない種族だね。
なかなか、調べられないわけだ……
でも、これで種族名から調べることができる!」
クラウドは喜んでいるようだ。
「おーい、取り敢えず依頼を終わらせようぜ。
早くしないとだろ?」
「あ、そうでした!
ごめんなさい!」
「取り敢えず、ネムア。
お前からどんな感じか見せてもらっても良いか?」
「レイと一緒に?
それとも僕だけ?」
「うーん、レイはランクCなんだろ?
じゃー俺らより強いからな。
ネムアだけで見せてくれ」
僕だけか。
どうやって戦おうかな?