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人生...いや、狼生は楽じゃないね!  作者: ゴンピ~
第4章:それぞれの道
125/131

125話目



僕たちは凄く大きな船に乗っている。

まだ出発はしていないけれど、水の波で足元が揺れる。

レイはもう既に気持ち悪そう。

地面が揺れることなんて、なかなか無いから不思議な感じ。

もうそろそろ出発する予定なんだけど、後1組が遅れているらしく、出発する気配がない。

僕は予約を取った後、無事にジェフロワを狩りお爺さんに鞄を作ってもらった。

腰に巻き付ける様に固定する鞄で、動きも阻害されないし、そこそこ物が入るから結構気に入っている。

その後は依頼をしたり、狩りをしたりでお金を稼ぎ、門の近くの屋台で買い物をして、色々な美味しいものを見つけた。

特に気に入ったのは、魚の形をした甘い冷たい食べ物。

外側の魚の形をしている部分はモチモチしていて、中には甘い冷たいクリームが入っている。

クリームには色んな味があって、ミルクだったり卵だったり、果物の味もあった。

レイも気に入ったようで、今日の朝も屋台で買って鞄の中に入れてある。

時間は止まってないから、冷たくなくなっちゃうけど、それでも美味しいから……


「ふん!

少し遅れたくらいなんだ。

俺は勇者なんだぞ!

大体遅れたのは2日前しか予約が取れなかったのが悪い!

そのせいで余計な荷物が増えたんだ!」


何やら騒がしい。

船の入り口を見れば、前予約の所で騒いでた人と同じ人が愚痴を言っていた。

今日は3人いるようだ。

前の時に居なかったのは、あの鎧に覆われている人か。

騎士の人は男の子に一生懸命話をしているけれど、鎧の人はただ立っているだけ。

勇者ってなんだろうね?

勇者だぞ!って威張ってるから何か偉い人なのかな?


「皆様揃いましたので、レヴィアタン号出航します」


ボーっと汽笛を鳴らし、船が動き出す。

ザザザッ水の音がする。

動き出しは結構揺れたけど、今は静かに進んでいる。

風があって気持ちいい。

水の方を見てみると光が反射してキラキラ光っている。


『もう………む……り……』


レイが船の外に顔を出して、吐いた。

とても辛そう。

僕はレイの背中を擦ってあげる。


「おや、大分辛そうですね。

この葉っぱを食べると少しマシになりますよ」


声がする方を見ると、少し丸みを帯びた体型の口髭がある男の人がいた。

その人は小さな緑色の葉っぱを持っている。


「えっと?」


「おや、唐突にすみません。

私サーべルキャット商会のコルネと申します。

どうぞ、此方を獣魔に食べさせてあげてください」


コルネさんは葉っぱを掌に乗せ、此方に差し出してくる。


「あ、ありがとうございます。

レイ、これを食べると気持ち悪いのマシになるんだって…

食べれる?」


レイの口元に葉っぱを持っていく。

レイが口を開けたから、葉っぱを入れてあげる。

口を閉じ、1回、2回咀嚼した後、体をビビビッと震わせ


『うぅ……』


「レイ大丈夫?」


『すっごく、苦いわ………』


耳も尾も力なく、涙目で舌を出してそう言う。


「おや、やはりお口には合いませんでしたか。

でも、気持ち悪さはなくなったかと思います」


「レイ、気分はどう?」


『……確かに、さっきまでの不快感は無くなったわ』


レイは腹ばいになっていた体勢から、座る体勢に変えてそういった。


「おやおや、気分はマシになったようですね。

良かったです」


コルネさんはニコニコ笑いながら、レイを見ている。


「あの、ありがとうございました。

僕では何も出来なくて……」


「おやおや、良いんですよ。

まだまだ島に付かないので、少しお話しませんか?」


「え、はい、良いですが……」


「おや、それはありがたいです。

実を言いますと、貴方と話すために取っ掛かりとして葉っぱを渡したのもあるんです。

いや、この船に乗ってる大半の人は私みたいな商人で、後は予約を取るのが遅かった冒険者の人たちばかりなんですよ。

けれど、貴方はどちらでもなさそうでしょう?

それで少し興味が湧きましてね」


「……?

確かに僕は早めに予約を取れたのですが、ゆっくりしたかっただけで、特に何もないですよ?」


「おや、それでは容量の大きな拡張鞄を持っておられる…と?」


「いえ、小さなものしか持ってませんよ。

最近ジェフロワを使って、作ってもらったんです」


不思議そうな顔をするコルネさんに、腰に付いている鞄を指差しながら言う。


「………それでは当日まで宿や食事はどうするのですか?」


「………無いんですか?」


「えぇ、100年に1度しか島に行かないので、宿というのは無いですね。

食事は明日からなら、私たち商人が屋台を出すので何とかなりますが………」


なるほど、鞄の中にはおやつしか入ってない。

今日は他の生き物狩るしか無いかな。


「食べれそうな生き物って島にいますか?」


「いえ、あの島生き物が何故か居ないんですよ」


そんな事あるの!?

仕方ない、1日くらいなら飢えても大丈夫だから我慢かな。


「…ふーむ。

これも何かの縁ですかね。

良ければ、私共のテントに来ますか?

少し手伝いをしていただければ、食事も用意しますよ」


前半は小声で言ってたけど、狼の耳は良いから聞こえてる。

けど、提案してくれたことは凄くありがたい。


「良いのでしょうか?」


「おや、私から誘っているのですから、大丈夫ですよ。

それでは、島に着いたらよろしくお願いしますね」


コルネさんはペコっと頭を下げてから、違う人の所に歩いて行った。


『なんか地面が光ってるの、私が居たとこと似てるわね。

こんなに揺れないけど……』


レイが、海を見ながらそう言う。

気持ち悪いのがマシになって、景色を見る余裕がでてきたみたい。

僕も船の欄干にもたれ掛かりながら、景色を見る。

上も下も青色。


『…なんか、また気持ち悪………』


レイは船の近くの波を見て、ぶり返してしまったみたい。


「レイ、出来るだけ遠くを見てるんだよ。

近くを見たら気持ち悪くなっちゃうよ」


『早めに知りたかったわ……』


僕はレイの背中を擦りながら、空を見た。

鳥が飛んでいる。

青い空。

鳥。

何か……



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



僕たちはポトナフィーラが行われる島に着いた。

商人が多いって聞いたとおり、大荷物を持っている団体が沢山いる。

コルネさんは何処だろう?


「あの、すみません」


船から降りてくる人たちを見ていたら、声をかけられた。

声のした方を見ると、赤茶の髪の少女がいた。


「えっと、白い狼と一緒にいる狼獣人の人……

ってこの人のことで良いんだよね?」


レイを見て、僕を見て、そう呟いている。


「コルネ商会長と話をした人であってますか?」


「コルネさんとは話をしたよ。

手伝いをしたら、寝る所を用意してくれるって…」


「あってた、良かったぁ。

えっと、案内をするように言われて来ました!

リリアって言います。

よろしくお願いします!」


「此方こそよろしく。

えっと、僕はネムアでこの子はレイだよ」


そう言えば、コルネさんに名前言うの忘れてたや。


「それではネムアさん!

こちらです、付いてきてください!」


少女が歩きだす。

僕は少し斜め後ろに付いていく。

少しすると、数人の人が荷物を持ってあっちへこっちへ走り回っている場所に来た。

側に1つだけ屋根がある場所で、何か話をしている人達がいる。

その中心にコルネさんが居た。


「お話中失礼します!

ネムアさんを連れてきました!」


話をしていた人たちが一斉に此方を見た。


「おや、リリア。

ちゃんと連れてきてくれたんだね。

ありがとう、お母さんのとこに行っておいで」


コルネさんがそう言うと、リリアは走って何処かに行ってしまった。


「ネムアさんって言うので大丈夫ですかね。

私としたことがお名前を伺うのを忘れてしまって……」


「いえ、僕も名乗るのを忘れてました。

改めて、僕はネムアって言います。

後この子はレイって言います」


「おやおや、ご丁寧にどうもありがとうございます。

私はサーベルキャットの商会長をしておりますコルネと、補佐をしてくれているトルネ。

現場監督のステコ、タルンです。

ネムアさんにはタルンの指示の元、荷物を運んで欲しいのです」


タルンさんは青い帽子を被った、細身の男の人。


「それでは、一旦この様にやってみましょうか」


コルネさんが手を叩きそう言う。

4人は散らばり、それぞれの仕事をするようだ。


「えっと、ネムアさん……でしたっけ。

こっちに来ていただけますか?」


タルンさんに呼ばれたのでついていく。

付いていくと、木の柱が沢山積んであった。


「この柱を4本ずつ、指定の場所に運んでいっていただけますか?」


「指定の場所って、何処ですか?」


「一定の間隔で白い旗が立ててあるでしょう?

あの白い旗の側に置いていってください。

また何かあれば声をかけてください。

私は別のことをしておりますので……」


タルンさんはそう言って、何処かに行ってしまった。

この柱を4本ずつか……

1本持ち上げてみる。

んー、3本ずつなら持てるかな?


「レイはここで待っててくれる?

僕は柱を運ばないといけないから」


『そうね、私では手伝いが出来なさそうだものね』


僕は柱を3本担ぎ、1番近い白い旗の所に置く。

戻って3本担ぎ、1番近い所に1本置き、次の所に残りを置く。

僕は無心でそれを繰り返していく。

僕が置いていった柱を使って、簡単なお店が出来上がっていく。


「おー、それで最後だ。

ありがとよ。

よっしゃお前らこれで最後だぞ!

気合い入れろ!」


「「「「「おぉーー!!」」」」」


僕は柱を人に渡して、近くの地面に座った。

疲れたぁ………

運ぶだけだけど、結構体力を使った。


「はーい、皆様お疲れ様ー!

ご飯出来てますよー!」


頭に布を巻いた女の人が、声をかけながら歩き回っている。


「…えっと、ネムアさん。

早く行かないと、取っておいてはくれると思うけど、少なくなっちゃうよ?」


隣から声が聞こえた。

振り向くとリリアちゃんが居た。


「そうなんだ。

教えてくれてありがとう。

僕も食べに行って良いのかな?」


「大丈夫だ……ですよ!

こっちです!」


僕はレイを呼んで、リリアちゃんについていった。

沢山動いたからお腹すいた……




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