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人生...いや、狼生は楽じゃないね!  作者: ゴンピ~
第4章:それぞれの道
120/138

120話目



男の人に捌き方を教えて貰った。

何となく分かった気がする。

でも僕は捌くための刃物を持っていないから、どうしたらいいんだろう?

腕を狼のものに戻しても、あんなに綺麗に裂けないと思う。

ゼロみたいに大きかったら……

いや、そしたら潰しそうだね。


「お前、もしかして何も持ってねぇのかよ。

仕方ねぇな、これをやる。

これは解体用だから、これであんま戦うんじゃねぇぞ。

さっきみたいに、その狼に倒してもらって、金貯めてまともな武器でも買え!

武器がねぇと戦えねぇから死ぬだけだぞ。

ここならホーンラビットしか居ねぇから何とかなるだろ。」


そう言って、小型のナイフの柄を此方に差し出してきた。


「ありがとうございます。

怖そうでしたけど、案外優しいんですね」


「あぁ!?

文句でもあんのか!?」


優しいんじゃ?って思ってたからつい言ってしまったら、凄まれてしまった。

やっぱり怖いかも…


『ちょっと、何よ!』


レイがびっくりして、また唸り始めてしまった。


「ったくよ!

俺はギンって言うんだ。

また何かあれば言えよ。

ギルドに居るか、居なけりゃ受付に言付けてくれれば話は通るからよ。

じゃ、後は勝手にやってろ!」


そう言うと、踵を返して街に帰っていった。


『結局なんだったのよ、あいつ?』


「うーん、なんかお金の稼ぎ方とか教えてくれたしいい人なのかなって…」


『ふーん?』


レイは首を傾げて、男の方を見ている。


『で、これからどうしたら良いの?』


「なんか、さっきのウサギを10匹綺麗に持っていったらギルドの登録ができるみたい。

でも、他にもお金を使うと思うから出来るだけ沢山狩っておきたいかな。」


『そうなの?

よく分からないけど、分かったわ。

で、あなたはその姿のまま狩りをするの?』


「うーん、この姿だと遅いし、狼に戻っておこうかな。

そのうち、人の姿で狩りの練習をするかもだけどね。」


狼の姿に戻る。

4つの足で地面を踏みしめる感触。

草や土の匂い。

遠くで獣の声がする。

感覚が鋭くなった。


『やっぱり、その姿の方がいいわ』


レイが頭を擦り付けながら言う。


『僕もこの姿のほうがしっくりくるよ』


記憶がないから、人間に化けている時間と狼の姿の時間。

そんなに差は無いけれど、狼のほうが僕って感じがする。


『近くの林に入ってみるの?』


うーん、さっきの人ギンって言うんだっけ?

此処なら安全って言ってたんだけどな……

でもやっぱり早くお金を稼がないといけないしな。


『うん。

林の方に行ってみようか。

魔物が逃げるようなら、僕が追い立てて挟み撃ちしようか。』


『あなたの方が速いから、その方が良いわね。』


僕達は林の中に入ってみる。

匂いを嗅ぐと、様々な獣の匂いがした。

近くには……いなさそう。

気配を消しながら、辺りを注意しつつ、ゆっくり林の中を歩く。

遠くの方でザザザっと、何かが木の葉に当たる音がする。


『何か走ってる?

近づいてみようか?』


『いいわ。

近づいてみましょう』


僕達も駆け足で音の方に近づいていく。

近づいていると、音の主が止まって、こちらの様子を伺っているようだ。

どうするかな?逃げるかな?


音の主は僕らの方に来ることにしたようで、音がどんどん近づいてくる。


『正面から来るみたいだから、突っ込んできたら左右に避けようか。』


『分かったわ』


敵が見えてきた。

茶色の丸が転がってくる。

スピードは落とさず、そのまま突っ込んでくるつもりのようだ。

押しつぶすつもりなのかな?

僕達は敵を近くまで引き寄せ、左右に分かれる。

そのまま真っ直ぐ転がっていくのかと思っていたら、Uターンしてレイの方を追いかけ始めた。

僕の方を追いかけてくれたら、レイに遠距離で攻撃してもらおうと思ってたのに、僕では攻撃手段がない。


『ネムア!

これどうしたら良いの?』


『その状態で氷の攻撃って出来る?』


『逃げながらだから無理!』


『じゃぁ、太い木にぶつけて敵の動きを止めよう!』


『やってみる!』


レイが太い木の側まで駆け、敵に向きなおる。

姿勢を低くし、飛び掛かるようにみせかける。

当たりそうと思えるくらい近づいた時、レイが勢いよく右に跳んだ。

敵は木を避けようとしたみたいだけど、流石に近すぎて木にぶつかった。

ドシーンと大きな音が鳴り、木から葉が沢山落ちてきた。

敵の回転が止まり、足と尾を出し、歩いて方向を替えている。

アルマジロ?に似ていると思った。

体全体は尖った鱗に覆われている。

手足には鉤爪が生えている。

今のうちに攻撃しないと、また転がられると大変だ!

幅広い尾に噛みつき、引っ張れないか試してみる。

尾にも鱗があるけど、刺さる程ではない。

ずずずっと少し引っ張れるけど、投げてひっくり返したり、ぶつけたりは出来なさそう。

また噛みついてみて思ったけど、結構鱗が固い。

これは攻撃が大変そうだ。

レイも後ろ足に噛み付いたみたいだが、


『かたっ!?

歯が折れそう…』


敵は尾を振ってみたり、頭を此方に近づけようとしたりしてくるが、此方のほうが力は強いみたいで、尾は振らせないし、頭が近づいてこようとすれば反対に逃げている。

このままではダメだな。

僕は尾を離し、背中を駆け上がって噛まれないように上側から首元目掛けて噛み付いた。


「ヴゥゥ!」


噛まれるのを嫌がり、首を振ったり、体を跳ねさせたりして振りほどこうとしてくる。

牙が食い込んではいるんだけど、足が地面につかないから踏ん張りが効かない。

これでは仕留められない。

一旦仕切り直しかな。

首を咥え込むのではなく、口の前半分で噛みつき、食い千切れないか引っ張ってみる。

ブチブチっと鱗数枚と少しの肉を噛みちぎり、背中を蹴って敵から離れる。


「ぐうぅゔぅぅ!」


敵は暴れ、手をブンブン振っている。


『頭付近に氷で攻撃してみてくれる?』


レイが氷の針を敵の頭目掛けて飛ばしているが、刺さることはなさそう。

敵は手で頭を庇い、尾を地面に叩き付け飛び上がったかと思うと、体を丸め転がって来た。

これは駄目だ。

逃げるしかない。


『今、僕目掛けて追いかけて来てるから、レイは先に都市の方に逃げて。

撒いてから僕も都市の方に行くから。』


『本当に大丈夫なの!?』


『うん。

速さは僕のほうが速いから大丈夫だよ。

行って。』


レイは少し振り向きながら、都市の方に駆けていった。

僕はまず、都市とは反対の方向に敵を引き付けながら走る。

都市から随分離れた。

もうそろそろ大丈夫かも。

今までは極力真っ直ぐ走っていたけれど、スピードを上げ、ジグザグと曲がり始めてみた。

敵とは徐々に間が開いていく。

右寄りに曲がっていき、都市の方に進路を変える。

もう、敵の姿は見えない。

気配を探っていると、スピードを落としているようだ。

追ってくる気はなくなったみたいだ。

レイと合流しないと……

走っている途中、緑色の鳥がいた。

逃げようとしてたみたいだけど、跳び上がり手ではたき落とす。

地面でまごついている間に首に噛みついて、思いっ切り振る。

口の中でポキっと音がして、鳥は動かなくなった。


『経験値を153得ました。』

『ネムアのレベルが1上がりました。』


この鳥も売れるのかなー?

さっきのアルマジロみたいな敵に時間がかかったから、これならギンっていう人の言うように草原でウサギを狩ってた方が良かったかなー?


林を出るまでに鳥を3羽狩ることができた。

レイと合流しないと、どこにいるかな?

辺りをキョロキョロ見回す。

左側で林の中を覗いながらウロウロしているレイを見つけた。

鳥を地面に置き、


『レーイ!

こっちだよ!』


耳をピンとさせ、僕を見つけると此方に駆けてきた。


『大丈夫だったの?』


『うん。

速さでは負けてないからね!』


『そう。

なら良かったわ。

前は私が早とちりしちゃって、貴方を危険な目に合わせてしまったから……』


『そんなことがあったんだ…』


『えぇ、それでこれからどうするの?』


『もう日が大分傾いてきてるからね。

ここに来る途中狩った鳥と最初のウサギを合わせても、4羽しか狩れてないから大人しく草原でウサギを狩ろうかな。

手分けしてウサギを狩って、日が落ちかける時に此処で待ち合わせはどうかな?』


『分かったわ』


僕はレイと別れて、ウサギとナイフを置いておいた場所に向かう。

うん、ちゃんとあるね。

鳥の捌き方は教えてもらってないから、分からないけど、一応血抜きだけはしておこうかなって思ったんだよね。

僕はナイフを咥え、思いっ切り振り下ろし、鳥の首を刎ねる。

逆さまに吊るしておきたいけれど、狼の手では上手く木に引っ掛けられない。

こんな事なら、さっさと獣人化しておけば良かった。

獣人になり、近くに生えていた蔦みたいな植物を使って、鳥を木に吊るし固定する。

うん、これなら簡単には落ちなさそう。

血の匂いがするけど、他の生き物が寄ってこないかな。

僕は狼の姿に戻り、気配が感知出来る範囲で獲物を探すことにした。

折角狩った獲物が取られたら嫌だものね。




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