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人生...いや、狼生は楽じゃないね!  作者: ゴンピ~
第4章:それぞれの道
119/131

119話目



僕はギルドの入り口で固まってしまったけれど、誰に話しかけようか?

丸いテーブルで話している人たちは何か食べてる?

1番奥のカウンターで此方側を向いて立っている人のほうが良いのかな?

その隣では紙が何枚か留められてて、それをみている人たちもいる。


「入り口で立ってんじゃねぇ!

邪魔だ、どけ!!」


声がして、後ろから右肩を掴まれて引っ張られた。

ガタイの良い男が此方をひと睨みして、1番奥のカウンターに行ってしまった。

彼処に行けばいいってことなのかな?

カウンターの所に行って、声をかけてみる。


「あの、すみません。

ギルドの登録をしたいのですが……」


「はい、登録ですね。

銀貨1枚掛かりますが、持ってますか?」


髪の長い女の人が対応してくれた。

銀貨?

登録に何かいるのかな?

何も持ってないんだけど……


「いえ、持ってないです。」


「分かりました。

それでは、仮登録にしておきます。

費用が払えるようになりましたら、また行ってください。

お名前を伺ってもいいですか?」


「名前はネムアです。」


「……はい。

記入出来ました。

このカードを持っていてください。

本登録のとき、本当のカードと交換します。」


受付の人がカードを渡してくる。

真っ黒のカードに白字で名前が書いてある。


「他に何かありますか?」


「えっと、幾つか聞いてもいいですか?」


「はい、大丈夫ですよ」


「まず、仮登録って何ですか?」


「仮登録は簡単な身分証明にしかなりません。

門の出入りで使えるくらいです。

本登録でないと、依頼も受けられませんし、ランクも上がりません。

ギルドの施設も利用できません。」


「施設って何ですか?」


「お金や物を預かったり、簡単に泊まったりすることができます。」


「最後に銀貨って何ですか?」


受付の人は驚いたような顔をした。


「えっと、お金のことですが……」


お金?

お金って……

物を買ったり、何かしてもらったりする時に渡すやつ……

なるほど、そんな物があるのか。


「すみません。

まだいいですか?

お金ってどう稼いだら良いんですか?」


受付の人は困惑した顔で


「え……、その、本登録の人でしたら、隣の依頼表から自分が出来そうな物を受けて、達成されればそのお礼としてお金を貰えるかと………

仮登録ですので、外で魔物を狩るか、収集をした物を売るかすれば稼げるかと思います。」


うーん、仮登録から本登録にするのに銀貨1枚。

簡単に稼げるのかな。

他にもお金が必要になってくるんだよね?

なかなか、大変だなぁ。


「魔物とかってどこに……」


「おいおい、何も知らねぇ犬がギルドに迷い込んでんじゃねぇぞ!」


誰かが言葉を被せてそう言ってきた。

え、もしかして狼に戻ってる!?

自分の手や足を見てみるけれど、2足歩行だし、毛も生えていない。


『何よあいつ!

さっきからムカつくわ!』


レイが唸っている。

声をかけてきた人の方を見る。

あ、さっきの入り口であった人だ。


「かぁー!!

犬、2匹かよ!

犬は外だ外!

ほら、ついてこい」


ガタイのいい男がそう言って、ギルドの出口に向かう。


「どうしよう、レイ。

ついてこいって言われちゃった。

ついてく?」


『変な奴についてっちゃだめよ。

何されるか分からないもの。』


そうだよね。

なんか怖いし、やめとこうかな。


「あの、すみません。

さっきの……」


「おいこら!

さっさと来いや!」


受付の人に話をしようと思ったら、さっきのガタイのいい人にまた肩を掴まれた。


「あ、あの急にどうしたんですか?」


「どうもこうもねぇ!

邪魔だからとにかくこっち来い!」


「うわわっ!?」


腕を掴まれて引っ張られる。


『ちょっと、離しなさいよ!

噛みつくわよ!?』


レイが唸りながらついてきている。


「レイ、噛んじゃだめだよ。

罰を受けることになっちゃう。」


僕は腕を引っ張られながら、レイを宥め、ギルドを出た。

そして、僕達が来た道を戻っていく。


「あの、どこまで行くんですか?」


「外だ外!

さっきも言ったろうが!」


せっかく街に入ったのに追い出されるってこと?

僕何もしてないと思うんだけど……

門の所まで戻ってきた。


「おい、さっきのカード出せ。」


言われたとおりに、さっきの黒いカードを渡す。

すると、門番の人がそのカードを確認して、僕に返してくれた。

そのまま門から少し離れた草原まで歩いて、やっと腕を離してくれた。

ずっと引っ張られていたから、少し痛い。


『本当になんなのよこいつ!』


レイはずっと男を睨み唸っている。

僕が噛まないでって言ったから、ちゃんと聞いてくれているみたいだ。


「お前、どんな田舎から出てきたんだよ。

それもこんな忙しくなる時期に…

まだ今の時間は人が少なかったから良いけどよ。」


男は腕を組みため息をつきながら言う。


「えっと、僕今までの記憶がなくて、何も分からないんです。」


「はあ!?

じゃあなんでわざわざこの時期に此処に来るんだよ。」


「それは、此処に来る前に知り合った人に、強くなるなら此処に行けばいいって、教えて貰ったので……」


「なるほどな。

だが仮登録では行けねぇぞ。」


じゃぁ、やっぱり早く本登録しないといけないんだ。


「レイ、このままじゃポトナフィーラに行けなさそうだよ。」


『それなら、ゼロに直接乗り込んでもらったほうがよかったのかしら?

でも、ゼロだと大きいから見つかっちゃうのよね。』


「早くお金を稼がないと駄目みたいだよ。」


『お金?なにそれ?』


「何か人の為にした時に貰える物だって」


『ふーん、よく分からないわ』


「おい、お前!

隣の犬とばっか喋ってねえで話を聞け!」


ガタイのいい男が怒っている。


「レイは犬ではないですよ?」


男は髪の無い頭を搔きながら言う。


「だぁー!

こまけぇーなー!

犬も狼も変わんねぇだろうが!!」


男は深呼吸をして少し落ち着いてから言う。


「取り敢えずだ。

本登録しないとポトナフィーラに行けねぇ。

で、銀貨1枚を稼ぐには、此処にいるホーンラビットを10匹狩ればいい。

お前らがどれだけ強いか知らねぇが。

ホーンラビットも狩れねぇようなら、冒険者なんて向いてねぇから辞めとくんだな。

ほれ、ちょうど居たぞ。

試しに狩ってみろ。」


男が顎をシャクるようにしている。

そちらの方を見てみれば、離れた所に角の生えたウサギが草を食べている。

あれが、ホーンラビット……


「レイ、あのウサギ狩れる?」


『余裕よ!』


レイが駆けていく。

ウサギは途中で気づいたみたいだけど、レイの方が速く、首をくわえてブンブン振り回している。

で、ウサギが伸びたようで、こちらに戻ってきた。


『こんなの楽勝よ!』


胸を張って、そんな事を言うからウサギが落ちた。

それを慌ててくわえ直している。

…?なんか見たことあるような?


「これを、どうしたら良いんですか?」


「あぁ!?

捌いて売るんだよ!

そんな事も分かんねぇのか」


捌く?

どうやって?

首を傾げていると、男はため息をついて


「はぁー、かせ!

捌き方を教えてやる。

綺麗に捌かねぇと、値が落ちるからな。

10匹じゃ足りなくなるぞ。

まずは首を落としてだな……」


僕は隣で男の手元を見ながら、この人案外優しいのではないかと思っていた。



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