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人生...いや、狼生は楽じゃないね!  作者: ゴンピ~
第4章:それぞれの道
118/132

118話目



僕は僕のままでいる方がいい。


『ゼロ、やっぱり名前付けてみて』


「本当に良いのか?

………ふむ、考えた上でそう言っておるのだな。

分かった。

ではお主のも考えてみよう。」


ゼロは腕を組み少し考えているようだ。

良かった。

駄目って言われたらどうしようかと思った。

ごめん、前の僕。

でも、もう僕っていう人格が出来てしまったんだ。

自分を無くすことは出来ないよ。


「……よし、まずは白いのからな。

お主は"レイ"とこれからは名乗るが良い。」


『…レイ。

私はレイね。

分かったわ!』


白い狼、レイは少し考える様にした後、尾を振っている。


「次は"ネムア"と名乗るが良い。」


『名前をネムアに決定します。

よろしいですか?

YES or NO

注意:一度決めると余程の事がない限り変えられません』


名前、無かったのかな。

それとも記憶喪失だから、前の名前とか教えてくれないのかな。


僕の名前はネムア!

すると、何かがピッタリとはまったような気がした。


「ふむ、どうだ?

何か変化はあるか?」


『何かはまった気がしたわ。』


『僕も』


「ふーむ。

名前は無かったのか?

まぁ、何も違和感がないのなら良い。

それでは人化を教えるとするか。

今の私の姿が人間というものだ。

自分自身が私のような姿だと思い浮かべるのだ。」


僕は目をつむり、人の姿を思い浮かべる。

ゼロよりも短髪で、身長は180センチ、太くも細くもない…

見たこと無いはずなのに、何故かこの姿がすぐに思い浮かんだ。

自分はこれだと、凄く安心する。

体の感覚がぐにゃぐにゃと変化する。

2足で自然と立ち、首元はスースーする。

少し寒い。

体全体は薄い何かに覆われている。

変化が止まり、目を開けてみると見える景色が違う。

細かい所まで見える。


「なんと、一発で成功するとは……

それに見てくれも我と全然違うということは、お主は人間をよく見る所にいたのかもしれんな。」


人間をよく見ていた……


「まぁ、すぐに出来るというのは良いことだ。

それだけ時間を使わなくて済む。

で、本命の獣人の姿なのだが、我は竜でお主たちは狼。

見本にはなれん。

ただ、今の姿に耳と尾を狼のもので出せば良いのだ。」


耳と尾……

ファサッと音がする。

後ろを見ると尾がゆらゆら揺れている。

手を頭の上に持っていくと、モフッと髪とは違う感触がした。


「ふーむ、お前は本当に早いな。

人間は戦う時武器を使うが、今は持っていないから何処かで調達すると良い。

それまでは手も爪も変化させれば、攻撃手段となる。」


ゼロはそう言いながら腕を竜の腕へと変化させた。

腕は狼のもの……

何も生えていない手から毛が生え、鋭い爪が出てきた。


『な、なんでそんな直ぐに変化できるのよ』


レイが話しかけてきた。

なにか……変?


「あ、尾がなくなってるのか!」


『え、尾が無いだけなの!?』


レイが驚いた拍子に尾がブワッと生えた。


「フハハ、元に戻ってしまったな。」


『……これ、難しい…』


「ふむ、レイにはまだまだ時間が必要そうだな。

それではフォールリーフが終わってしまうかもしれん。

お主らは狼同士であるから、言葉が通じるであろう。

だから従魔契約したように見せればいいかもしれん。

そうすればレイが変化する必要はない。」


従魔…契約……


『そうね、私には人化は出来なさそうだし、その従魔契約?のフリをすればいいんでしょ?』


レイが少し落ち込みながら首を傾げる。


「うむ。

従魔契約とは人種が魔物や獣と契約をして、力を借りるものだ。

ネムアが人種で、レイと契約している様に振る舞えば大丈夫であろう。

さて、目処がついたな。

小島の近くの町まで送ってやろう。」


そう言ってゼロは僕たちから距離をとり、竜の姿に戻る。


「ゼロはどうするの?」


『我か?

我はまた此処でのんびりしておるよ』


「ってことは、此処に来ればまた会える?」


少し口角を上げながらゼロは言う。


『会えるとも!

土産話でも沢山持ってきてくれ。』


僕達はゼロの背中に乗り、空を飛んだ。

寒かったり、僕たちが落ちたりしないように、ゼロは気をつけながらゆっくり飛んでいる。

レイは凄く怖がっていたけれど、僕は青く白く広がる光景に圧倒された。

こんな光景を僕は知らなかった。

僕は何も知らないことばかり……

変な知識はあるけれど、いつかちゃんと記憶が戻ればいいな。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ゼロとは、島に行くために船が出ている港町の近くの森で別れた。

僕は人間に狼の耳と尾がついた状態…獣人の姿で道を歩いている。

レイは僕の隣をキョロキョロしながら歩いている。


『なんか不思議。

下は茶色だし、冷たくないし、周りはなんだっけ?

………木?っていうの?がいっぱいだし。』


「そうだね。

白くないし、いろんな匂いがする。」


息を吸い込むと緑や土の匂いがする。

なんだか落ち着く。

レイと話をしながら歩いていると、人間が列になっているのが見えた。

あれが、港町の入り口かな。


「人間が並んでるね。

順番に確認されてから入るって言ってたよね。」


『そう言ってたわね。

あんなに人間がいっぱいのところに行くなんて、なんか少し怖いわね。』


レイはグルルっと軽く唸っている。

列の最後に並ぶ。

ゼロは簡単にすぐ通れるって言ってたけど、大丈夫かな?

不安だ……


「よし、入っていいぞ。

………次の人!」


もう順番が来てしまった。

呼ばれたのでそこに近づく。


「獣人か?

身分証とか持ってるか?」


「え、えっと……身分証?は持ってないです…」


ドキドキする…

身分証ってなんだろう。


「そうか。

今回は何のようでロート都市に?」


「……お、お金も無くて、100年に1度のポトナフィーラで力をつけてお金を稼げたら良いな……と………」


ロート都市って言うのが、ここの町の名前なのかな?

ゼロにこう言ったら良いと言われていたのと、同じ様に言ってみた。


「ま、この時期に来るのはポトナフィーラ関連だよな。

お金も無し、力をつけるということは冒険者になるつもりか?」


「はい、まずは冒険者に登録しようかと……」


「それじゃ、隣の狼は何だ?」


レイを指差しながら、そう言われた。


「えっと、僕の獣魔契約したレイです」


「獣魔契約…テイムか。

何か指示を出して見せてくれ。」


「え……レイ回って?」


レイがその場でくるりと回る。


「もう少し何かできないか?」


「どうしよう……

2回吠えてみる?」


『何よそれ』


レイに呆れたように言われた。


「ガウガウ。」


凄く適当にレイが2回吠えた。


「ふむ、まあいいだろう。

もしその狼が何か被害を出したときは、お前の責任となるからな。

あと、冒険者になるのなら、ここを入って真っ直ぐ行ったあと、右手に見える剣と盾の看板がある大きな建物で手続きするんだな。」


真っ直ぐ行って、右手に見える剣と盾の看板がある大きな建物……


「分かりました。

ありがとうございます。」


「おう!

ようこそロート都市へ。

あっとそうだ。

獣魔にはこの首飾りを付けといてくれよ。」


そう言って、男がネックレスを渡してくる。

牙のようなものが3つ付いているだけの、簡単なもの。

レイの首にそのネックレスをかけてあげる。


『なにこれ。

ジャラジャラいってちょっと嫌。』


「ごめん。

それ付けてないとダメなんだって。」


レイは首をブルブル振って、取りたそうにしている。

レイを宥めながら、門をくぐると地面が土ではなく、何か硬いものに変わった。

えっと、此処を真っ直ぐ行って、右手の大きな建物……


『何か凄くいい匂いがするわね。』


レイはネックレスを気にしつつも、鼻を上に向けてスンスンしている。


「確かに、お腹空いてくるね。

冒険者になれる手続きした後、匂いの元を探してみようか。」


んー?

大きな建物……これかなぁ?


周りの建物より一際大きな建物に、剣と盾のマークが書いてある。


「ギ・ル・ド・ロート・支・店?」


『あら?

読めるの?』


「うん。

なんか読めるみたい。

言われてたのここみたいだね。」


ゼロが言ってたけど、僕は人間と一緒にいたんだね。

どんな人と居たんだろう?

考えながら扉を押して開けると、中にまばらに人がいる。

これは、誰に話せば良いんだろう?

僕は入り口で困惑してしまった。



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