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人生...いや、狼生は楽じゃないね!  作者: ゴンピ~
第4章:それぞれの道
117/131

117話目



目を開ける。

地面が近い。

何してたんだっけ?

そうだ、ゼロから血を貰って進化先が変更されたっていう声を聞いた後、気絶したんだった。


『あ、目が覚めたのね。

急に進化しだすからびっくりしちゃった。』


白に薄く青色が入った綺麗な毛並みの狼が此方を見ながら言う。


「どうやら、進化寸前まで来ていた所に我の血で進化が起こったようだ。」


ゼロが人間の姿で腕を組みながら言う。


『あなた、毛が真っ白なのかと思ったら透き通っているのね。

見る角度によって白かったり、透明だったり、キラキラしててすごく綺麗ね。』


狼がクルクル僕の周囲を回りながらそんな事を言う。


「うむ。何の種族になったのだ?」


『ブリザードウルフって声は言ってた。』


「ふーむ。

我の雪系統が追加されたとすると、お主は元は風系統であったのだな。

何故この様な地に風系統のお主が来たのか?」


ゼロが首をひねって考えている。


「うーむ、まぁとりあえず、お主らこれからどうするのだ?」


これから……

僕はとりあえず記憶を戻さないと。

一体今までどう過ごしてきたんだろう。


『僕は記憶が戻るまで、いろいろ見てみようと思う。

何か見たことあるものを見たら、思い出すかもしれないし。』


「うむ。

それは良いかもしれぬな。」


『わ、私は貴方に付いていきたい!

元々群れに入れてもらおうと思ってたし……』


群れ?

ってことは僕は一人ではなかったってこと?


「群れとは、仲間がいたということなのか?」


『はっ!そうだった!

トラとトカゲが一緒にいたの!

他にも沢山見たことない魔物が居たけど、その魔物とは殆ど一緒にいるのを見たことはなかったわ。

トラとトカゲとはずっと一緒に居たの!

巣みたいなの作ってて、その場所私覚えてるよ!』


ってことはその2匹に会えば僕のことが分かるかも!


「トラとトカゲとは、何とも変な組み合わせだな。

まぁ、お主のことを知っておる者なら、会ってみれば記憶を取り戻せるかもしれんな。

取り戻せなくても、何をしていたのかくらいは分かるであろう。」


ゼロがそう言って、右手を突き出した。

バキバキと音をたてながら氷が形を作っていく。

地面から上の氷まで階段?が出来上がった。


「これを登っていけば、上のお主が落ちてきたところまで戻れる。

もし、会えなくて困ったなら、またここまで戻ってくると良い。

少しなら手助けしてやろう。」


『ありがとう、ゼロ。

ちょっと行ってきます。』


僕は記憶が戻るかもしれないと、少しワクワクしながら階段を登る。

狼も僕に続いて、階段を登り始めた。


一番上まで来た。

辺りは戦闘があったのか、氷が隆起していたり、鋭い亀裂が入っていたりする。


『ここで、私と貴方は大きなクマと戦ったの。

最後は気絶していて分からないんだけど、貴方は大きなクマと一緒に下に落ちていったんだと思う。』


大きなクマと戦闘……

駄目だ、思い出せない。


『ごめん。

思い出せないみたい。

巣みたいなのに案内してくれる?』


『大丈夫よ。

…こっち!ついて来て!』


狼が辺りを確認して、小走りで駆け出す。

僕はそれに続いた。

地面が固い氷からフワフワの雪?に変わった。

地面の感じが急に変わって、少し足がもつれたけど、直ぐに適応できた。


暫く走っていると、狼の走るスピードが落ちてきた。

そして地面を匂いながら、辺りを確認しつつ進む。


『確か、この辺だったはずなんだけど……』


ウロウロと歩きながら首を傾げている狼。

僕も何かないか探してみる。

………

うーん?

半分埋まってるけど、穴?みたいなのがある?

雪を掘って、除けてみるとやっぱり穴があった。

周りより固くなっているから、作られた穴だと思う。


『ねぇ、穴があったけど、これかな?』


狼が此方に駆けてくる。


『…多分そうだと思う。

入ってみる?』


『うん。入ってみよう』


何かあっても対応出来るように、ゆっくり静かに入っていく。

直ぐに少し広めの空間があった。

誰もいない。

小さい3つの穴があるけど、魔物の毛皮があるだけで、後は何もない。

雪で塞がってたし、もしかしたら此処に帰ってこなくなった?


『誰も居ないわね。

……どうする?

帰ってくるまで待ってみる?』


どうしよう。

仲間なら僕が居なくなって、心配とかしてないかな。

僕は生きてるってことをどうにか知らせたいけど、此処に帰ってこないかもしれないし……

ずっと此処にいるわけにもいかない。


『一度ゼロの所に帰ってみようか。

穴が雪で塞がれかけてたから、最近は此処に帰っていないみたいだし……』


『そう、会えなくて残念ね。』


穴を出る。

記憶が戻るかもって思ってたけど、何も感じなかった。

少し残念に思いながら、ゼロの所に戻る。

2匹で走っていると、右横から何かが近づいてきている。

…なんだろう?

魚?

白くて細長い魚が3匹こちらに近づいてくる。


『白い魚が3匹此方に近づいてきてるけど、どうする?』


『魚?

あいつら、空に居るから届かないし、アイスニードルも当たりにくいのよね。

貴方の見えにくい風?の攻撃ならどうかしら?』


風の攻撃?

……待って、僕攻撃の仕方が分からない!

爪とか牙の体を使う攻撃は出来るけど、他の攻撃手段が無い!


『風の攻撃ってどうやるの?

僕、攻撃の仕方が分からないんだけど…』


狼は目を丸くして、凄く驚いている。


『まさか、記憶喪失で技の名前が分からないの?

進化のとき、何か聞かなかった?』


進化の時……

僕気絶しちゃったから、何も聞いてない!?


『気絶してたから、何も聞いてない……

どうしよう……』


『そ、そんな事って……

と、取り敢えず、私が頑張ってアイスニードルで地面に近づけてみるわ。

そこを狙ってみてもらえる?』


『うん。

ごめんね、足手纏いで……』


『大丈夫よ!

いざとなれば、ゼロの所まで走って逃げれば良いんだし!』


うぅ……

これはもう僕の進化した先の、身体能力が高いことを祈るしか無いかも……


『いくわよ!アイスニードル!』


魚が近づいて来た所を先手必勝と言うように、狼が氷の針を沢山飛ばす。

魚はバラけるように躱す。

群れの真ん中を狙ったアイスニードルを躱すために、少し高度が下がった魚が居る。

届くか分からないけど、届かなければ、僕に攻撃手段は無い。

逃げるしかなくなる。

届いて!

僕は助走をつけ、思いっ切り跳び上がる。

あ、あれ!?

と、跳び上がりすぎー!?

下側に躱した魚は飛び越えて、上側に躱した魚の高さまで、飛び上がってしまった。


「コオッ!?」


魚もこんな高さまで来ると思ってなかったらしく、凄く驚いている。

お、驚いている場合じゃない!

今のうちに攻撃しないと!

僕は右前脚を魚に叩きつけた。

魚は凄い勢いで地面に落ち、雪に埋まってしまった。


『………なんか、大丈夫そうね。

この調子で私が注意を引くから、貴方は魚を叩き落としてくれる?』


僕がスタッと地面におりると、狼がそう言った。

うん。

思ったより、どうにかなるかもしれない。



『経験値を480得ました。』

『−−−のレベルが2上がりました。』



後2回、同じ様にして戦闘は終わった。

雪に埋まってしまった魚を掘り起こし、口にくわえる。


『けど、技が使えないのは困ったわね。

それもゼロに聞いてみたら、どうにかなるかしら?』


そうだよね。

今回はどうにかなったけど、もっと強い魔物と出会ってしまったら、技があるのと無いのとでは大違いだと思う。

どうにか、分かれば良いんだけど……

まさか、記憶喪失ってこんなに大変だとは思わなかった。


次、何か強い魔物に出会わないように、行きよりも速く走りゼロの所に戻ってきた。


「おぉ?

早い帰りじゃな。

群れの奴等とは会えなかったのか?」


ゼロは人間の姿のままだった。

僕の首についていた輪っかの破片を手に持っている。

僕は魚を地面に置き、座った。


『そうなのよ。

住処に行ってみたけど、居なかったの。

それと、大きな問題が発覚しちゃって……

ゼロどうにかできない?』


「大きな問題だと?

こんな短時間で何が起きたのだ?」


『それが、記憶喪失で技が分からないみたいで、攻撃手段が無いみたいなの』


「なんと!?

そこまで忘れてしまったのか。

うーむ、しかし我ではお主がどういった技を持っていたのか分からぬ。

確なる上は、人間の所に行くのが早いかもしれん。」


人間の所?

魔物の僕が行ったら殺されないかな?


『人間の所なんてどうやって行くのよ?』


「この姿のままでは、人間に殺されてしまう。

だが、人間に化けてしまえばいいのだ。」


『『人間に化ける?』』


「そうだ。

今我がしている様に、人間に見えるよう姿を変えるのだ。

少し難しいが、時間はたっぷりあるであろう?

我が直々に教えてやる。

そうして、人間に化けたら街に入って冒険者と言うものになると良い。

そうしたらステータスと言って、本人にしか見えないが、自分が何を使えるのか分かるカードを貰える。

そうすればお主も技を使えるようになるであろう。」


おぉ!

そうしたら僕も戦えるようになる!

強くなれるかも!


……うーん?やっぱり何故か強さを求めてしまう。

記憶を失う前の僕は何を思っていたんだろう。


『ゼロ。

強くなるにはどうしたら良いのかな。

何故か僕は強くならなければいけないみたいなんだよね。』


「ふむ?

まぁ、記憶を取り戻すためにも力は必要であろう。

……そうだな…………

…そうだ、今はちょうど100年の周期ではないか。

世界で一番大きな木があるのだが、人間の祭りの名は何であったか………

そうだ、ポトナフィーラと言うのだ。

その木は世界中から栄養を吸収し、100年に1度葉っぱを落として世界に還元するのだ。

落とす葉は動物へと姿を変え、世界中に散っていく。

その葉っぱが栄養を還元する者であるから、倒してしまえば経験値が良いのだ。

それに元々は葉っぱであるからな、倒すのも容易であるのだ。

人間がその時期祭りとして、大きな木のある小島に集まっておったはず。

後、もう少しで落葉が始まるはずであるから、そこに行ってみると良いのではないか?」


『世界に還元する栄養を奪ってしまっても大丈夫なの?』


「どれだけ倒そうと、微々たるものよ。

どれだけ大きく、どれだけ多くの葉があると思うのだ。

それに、葉は地べたを走る動物だけではない。

空も海も飛んだり、泳いだりできる者に変わるのだ。」


それなら、僕もそこに行ってみたい。

それまでに人間に化けれるのかな。


『じゃぁ、人間に化けれるよう頑張らないと。

教えてくれる?』


「うむ。

良いであろう。

しかし、人間に化けると言ったが、お主らは綺麗に人間に化けぬ方が良いであろう。」


え?

綺麗に化けないとバレちゃうんじゃないのかな?


「お主らには獣人と呼ばれるものになってもらう。

人間に化けると、細かいことが出来るのは良いが、能力が大幅に下がってしまうのでな。

獣人であれば、少し今の獣要素があるから、人間に化けるよりは能力の下がりが少ないのだ。」


獣人?ってなんだろう?

能力が下がり過ぎるのは確かに危険なのかも?


「だが先に、お主らに名前を付けておこうか。

人間は必ず名前があるのだ。

名前が無いと不便であるからな。

しかし、白いのはいいとして、お主は名前がつけられるのか?

忘れているだけであるから、元は名前があるのかもしれん。

まぁ、大抵は名前は無いはずであるから、大丈夫だとは思うが……」


僕の名前………

あったのか、無かったのかも分からない。


『でも、無いと不便なのならつけてみてくれる?』


「…いいのか?

もし名前があったなら、我の格が高いから前の名前を上書きしてしまうかもしれん。」


『上書き?』


「うむ。

名前を同意してしまえば、前の名前は消え、新しい名前になってしまうのだ。

存在も少し変化するかもしれん。

名前とは存在を固定するものであるからな。

前の名前を付けた者の格が高ければ、我の名付けは失敗するが、なかなか我より格の高い者もおらん。

ほぼ、名付けは成功するであろう。」


名前を変更することで存在が変わる。

前の僕が消えるのかな。


『前の僕が消えてしまうってこと?』


「消えはしない。

が、記憶が戻った時、今のお主が主人格にはなるであろう。」


そっか、もし記憶が戻ったら前の人格に僕が統合されちゃうんだ。

今、ゼロっていう格の高い者から名前をつけてもらえれば、僕は僕のままでいられる。

………それで良いのかな。

前の僕は消えないって言うけれど、消えているのと変わらないような……

でも、僕も消えるのは嫌だ。

ちょっとごめんって感じだけど……


僕は、僕でいたい。





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