114話目
頭がフラフラとするのである。
い、一体何が起きたのである?
そうである、ヴィオラ嬢は?
『ヴィオラ嬢大丈夫であるか?』
『......えぇ、なんとかね。
でも寒くて動けないわ。』
『寒いであるか?
何処にいるのである?』
『貴方の前、壁のすぐ側よ。』
壁......であるか?
何故この様なところに......
前をよく見れば、真っ白の壁があるのである。
もしや我、これにぶつかったであるか。
と、それよりも早くヴィオラ嬢を回収せねばならぬのである。
何とか背中に乗せると、ハッハッという息づかいが聞こえてきたのである。
追い付かれたであるか?
これはこの壁を背に戦うのがいいであるかな?
走っていたときよりも、少し視界が通るようになってきたのである。
壁を背に、走ってきた方を見ればスノウウルフが真ん中に、両脇にアイスウルフが1匹づつ近づいてきたのである。
ゆったりとした足取りで、顔にも余裕綽々といった表情なのである。
ぐぬぅ、これは追い詰めたとでも思っているのであるか?
視界が悪くなければ、すぐにでも仕留めることができるのである!
ノコノコと出てきたのは間違いなのである!
バリバリッ!
「「ギャンッ!!」」
うぅむ、流石に倒せなかったのである。
ドナゾイルを3匹に向けて放ったであるが、スノウウルフにはかわされたのである。
そしてまた雪の中に隠れ、見えなくなってしまったのである。
『経験値を1752得ました。』
む?
敵が結構離れているようであるな?
今倒れた2匹と、その手前に攻撃していた何匹かが死んだみたいであるな。
相手もどう出るべきか考えているところであるかな?
ぬ?
背中の上がモゾモゾするのである。
ヴィオラ嬢が動いているようである?
うーむ?
何か大きくなってきてる気がするのである?
『ヴィオラ嬢どうしたのである?
気のせいか、大きくなってきている気がするのであるが?』
『えぇ、そうね。
大きくなってるわ。
降りるわね。』
『いや、降りたら寒いであるよ!?
まだそのぐらいなら乗っていても大丈夫である。
それよりも、何故急に大きくなったのである?
その方が気になるのである。』
そう言ったのであるが、ヴィオラ嬢は我の背中から降りてしまったのである。
慌ててヴィオラ嬢の方を見ると、体の色がこの寒い地の晴れた空の色に薄く白を足したみたいになっているのである。
それに体は細長く伸び、前の2倍はあるのではないであるか?
尻尾の先は尖った氷の針が四方八方に付いており、叩かれたら刺さって痛そうである。
見た目が随分変わっているであるが、もしや進化をしたであるか?
『分かったかしら?
さっきの経験値で進化したのよ。
それに普通こんな寒い所に居たら死ぬのだけど、貴方達が温めてくれたから死なずにすんで、耐性が得られていたのよ。
それで、今までに耐性のレベルが凄く上がっていて、今回の進化で特殊な者になれたみたい。
アイシクルリザードっていうのだけど、もう寒さを感じないのよね。
でも、まだまだ貴方やアイスウルフには負けるからひっそり隠れながら貴方の援護をするわ。
私が乗ってないから、何も気にせず殺っちゃいなさい。』
『いや、我は別に気にしてはなかったのであるが......』
『嘘ね。
貴方は全力が出せてないもの。
私、目は良いと思うのよ。』
うーむ、そう言われても特にそんなつもりはなかったのであるがな。
確かに我は近接が得意で、素早い動きで敵を翻弄しつつ、スピードに乗った攻撃で殺るのが常であるが...
今回は敵が多過ぎたであるし、囲まれて速さが活かせなかったであるし......
そう言うことであるから、別に気にして、こうなったわけではないのであるが.........
『......まぁいいわ。
私は隠れているから、そのうちに......』
ガキンッ
ヴィオラ嬢が話している途中に何か飛んできたのである。
爪で弾いたから何ともないであるが、これは相手の作戦が立ったようであるな?
次々に氷の刃が飛んでくるのである。
視界は大分見えるようになってきているであるから、相手もぼんやりと見えているのである。
では、ヴィオラ嬢も全力でと言っていたであるし......
パチパチッと毛皮の上を電気が走るのである。
今は瞬発まで使うのは止めておくであるか。
敵が多く居るなかで動けなくなっては、いけないであるからな。
『では、我は行ってくるのである。
ヴィオラ嬢も気を付けるのである。』
我は大地を蹴り、一直線に敵に迫るのである。
「ガゥッ!?」
ふむ、こやつはアイスウルフであるな。
我が急に近づいて驚いているのである。
今のうちに、アイスウルフの横を駆け抜けるのである。
駆け抜けた後、ズバッと首元が裂け、アイスウルフは倒れたのである。
次近い奴は何処であるか?
・・・・・・・・・・・・・・・
我は止まることなく、駆け回り爪や牙を赤く染めていくのである。
まぁ、爪や牙だけではなく体中血塗れであるな。
返り血だけでなく、我の血も混ざっているである。
我は一匹であるからな。
同時に攻撃をされれば、かわしきれない分の傷は負ってしまうのである。
ヴィオラ嬢が近くに居るときは、氷の針を飛ばして牽制をしてくれたり、尾で足に傷を負わせそちらに注意が行くようにしたり、してくれるのであるが、我は常に移動をしているであるからな。
一匹の時の方が多いのである。
「ガァアッ!」
むぅ、アイスウルフが飛びかかってくる方に向き、噛みつきをかわすのである。
するとズキリと背中に痛みが走ったのである。
が、それは無視して飛びかかってきたアイスウルフに爪を叩きつけるのである。
「ギャンッ」
揉んどりうって、遠くに飛んでいったのである。
我はすぐに反転し、攻撃してきたアイスウルフに向けてサンダーアローを放つのである。
「ギャッ!!」
電気で体が痺れ倒れた奴に追撃は加えず、我は走り出す。
ザクザクッと我が居たところに氷の刃が刺さったのである。
一匹一匹に止めがさせないであるから、時間がたつと戻ってくるのである。
かといって、深追いをすれば怪我を負う危険が上がるであるし.........
やはり、早急に頭であるスノウウルフを倒さなければならないである。
が、奴が何処に居るか分からないである。
奴を探すためにも走っているであるのに......
「ウオオォォォォン」
ぬ、またなのである。
遠吠えが聞こえると雪が降る量が増え、視界が悪くなるのである。
雪の量が減り、視界が通るようになってくると遠吠えをあげるのである。
故に、我はスノウウルフを見つけることが出来ないのである。
先にこの雪を発生させている奴をどうにかした方がいいであるかな。
.........いや、待つのである。
「グゥッ!?」
右後方から来たアイスウルフに蹴りを加えつつ考えるのである。
そういえば、一番最初に雪が降り始めたのはスノウウルフが遠吠えをあげた時ではなかったであるか?
いや、違ったであるか?
うーむ、どっちだったである?
3方向から同時に突進してきたアイスウルフを跳躍してかわし、そこにドナゾイルを放つのである。
もうそろそろ、これも放てなくなりそうである。
少し頭が疲れてきたのである。
「ガアァァッ!?」
「シャーーッ!!」
ぬ?
我から離れた所で何か叫び声が聞こえたのである。
それに2回目のはこ奴らの声とは違う気がするのである。
我に噛みつきを繰り出そうとしていたアイスウルフも、叫び声に気を取られたらしく、動きを止めたのである。
「ギャンッ」
取りあえず叩き飛ばしておいて、声のした方に行ってみるのである。
ブックマークありがとうございます。