112話目
やっと人間の用事が終わり、解放されたのである。
『では、1度住みかに向かうのでいいであるか?』
『ええそれでいいわ。』
我は今度こそ立ち上がり駆け出すのである。
そういえば、他の者には何かしていたようであるのに、我にはしなかったであるな。
なんだったのであるか?
『ヴィオラ嬢、少し聞きたいのであるが他の者は一体何をされていたのである?
我だけされていない気がするのであるが......』
『貴方もされているわよ。
ボーッとしてたじゃない。
そのときに貴方も私も終わったわ。』
『そうだったのであるか。
で、一体何をされたのである?』
『集めていた魔石を抜き取っただけよ。
だから一瞬だったわ。』
『なるほどなのである。
しかし集めてどうするのであるか?』
『はぁ...そんなの私には分からないわよ。
人間の考えてることなんて全然理解できないんだから...』
何か凄く呆れられたのである。
しかし本当に何に使うつもりであるか?
我は人間と過ごしたことがないから分からないのである。
ヴィオラ嬢は少しは人間と居たらしいから聞いたのであるが...
こういう時、ブラン殿が居れば何か分かるであるのに......
それから住みかに着き、中を覗いたのであるがブラン殿は居なかったのである。
なので、ブラン殿が最後に向かったであろう氷の場所に行くことにしたのである。
・・・・・・・・・・・・・・・
...大分氷の場所に近づいてきたのである。
ブラン殿が見つかるといいのであるが......
すると右側に何か動くものが見えたのである。
あれは......アイスウルフであるな。
またついてくるのであるか?
なんなのであるか。
凄く気になるのである。
しかし近づこうとすれば逃げるのは分かりきっているのである。
ここは無視をするのである。
アイスウルフが付いてきたまま、やっと氷の場所に着いたのである。
何故かアイスウルフの数が増えて、3匹になっているのがちょっと気がかりなのである。
『ヴィオラ嬢、取りあえず着いたであるがこれからどうするである?』
そういうと、背中の上で少し身じろぎをしているようである。
先程まで寒いからと、我の毛に出来るだけ埋もれていたであるからな。
顔を出して辺りを見ているのかもしれないのである。
『何か、つけられてる?』
『そうなのである。
最初は1匹だったのであるが、最終3匹に増えたのである。
しかし一定の距離から近づいては来ないのである。
気色が悪いがどうにもしようがないのである。』
『そう、取りあえずは置いておくしかないのね。
まずはこのまま真っ直ぐ歩いてみる?
何も目印となるようなものがないし、確かにどう動くのがいいのか分からないわ。』
『そうであるな。
でわ、何か変なものが見つかるまで歩いてみるのである。』
我は辺りを注意深く見ながら、ただひたすらに歩いていくのである。
それにアイスウルフもついてくるのである。
しかし嫌な感じについてくるのである。
3匹纏まって居ればいいのであるが、お互いの間隔を開けてついてくるのである。
それも前を向いて歩けば見えないところであるし......
物凄く気が散るのである。
気が散りながらも暫し歩いていると、前方に何か見えてきたのである。
あれは何であるか?
白っぽくて周りの色と似ているから分かりにくいのである。
そのようなものがポツポツと......うーむ数えられないである。
兎に角、沢山あるのである。
いや、これは危険なのではないであるか?
我が近づいているだけではなく、これは向こうも近づいて来ているのでは......
点が大きく見えてきたのであるが、あれは後ろに付いてきているアイスウルフと同じなのではないであるか?
取りあえず、生き物ではありそうなのである。
このまま真っ直ぐ進んでも大丈夫なのであるか?
少し右に逸れるのである。
右にずれようとしたとたん、右側にいたアイスウルフが我の隣まで駆けてきて、威嚇を始めたのである。
な、なんなのであるか?
逸れてはいけないのであるか?
これはヤバいのである。
前の群れと付いてきていた3匹は同じ群れっぽいのである。
我、獲物にされているのである。
これは、威嚇を無視してでもこの包囲を抜けなくてはいけないである。
更に右にずれて行けば、もう1匹も威嚇にまわってきたのである。
しかし、我に手を出そうとはしないであるな。
なぜである?
威嚇だけでは我を止められないである。
む?
群れの方から何匹か此方に走ってくるのである。
早く抜けなくては...
もう少し足を早めて威嚇をしている方へ突っ込むのである。
「ギャウッ!?」
2匹は驚いたように離れたのである。
我はそれで良いのだが、それではリーダーに怒られないであるか?
取りあえず、ここから逃げるのである。
「ウオンッ!」
「ガッ!?」
気付けば我は地面に突っ伏しているのである。
一体何が起きたのである?
いや、そんな事よりも早く逃げねばならないのである。
1、2匹なら何とかなるであるが、この大勢では勝ち目がないのである。
起き上がり、走り出そうとすると前に3匹のアイスウルフが立ちふさがったのである。
ぬぅ、今度は先程みたいに退いてくれなさそうである。
それならば戻ることになるが、更に右に方向を変えるのである。
ばっと右に走り出そうとしたのであるが、此方にもアイスウルフが来たのである!
ぐぅぅ、完全に囲まれる前に怪我を覚悟で抜け出した方がいいであるか?
「ワオンッ」
ぬ?群れの中から特に大きな個体が出てきたのである。
此方をじっと見て、何かを伝えたそうである?
意思疏通を繋いでみるであるか?
『我はライガーである。
何か我に用があるのであるか?』
大きな個体に話しかけてみたのであるが、片耳をピクリと動かしただけで動きがないのである。
むぅ、やはり単純に我は獲物にされているだけであるかな。
その割には今も襲おうとはせず、此方を見ているだけなのであるが......
『私はこの群れの主のスノウウルフだ。
お前にいくつか聞きたいことがある。』
おぉ!返事が帰ってきたのである。
しかし、スノウウルフであるか?
アイスウルフの群れであるのに?
『私は突然変異種であるのだ。
だから、他の者より少しだけ強くリーダーをしている。』
疑問に思っていたことも答えてくれたのである。
意外と良いやつなのである?
『そうなのであるか。
で、聞きたいこととは何なのである?』
『お前は私達と同じ系統の奴と一緒にいたな?』
『う、うむ。』
『そいつは今何処にいる?』
何故ブラン殿の事を聞くのであるか?
というか、それは我等の方が知りたいである。
『何故その様なことを聞くのである?』
『そいつが私の妹と一緒に居たことを部下達が見ている。
そして、この氷の場所でまた会ったことも分かった。
しかし妹は匂いを辿られぬ様に動き、居場所が分からないのだ。
そこでその前に会っていたそいつなら居場所を知っているかと思ってな。』
妹?
仲間になりたいと言っていたアイスウルフの事であるかな?
『それが、我等もブラン殿を探している途中なのである。
ここ数日会えていないのである。
もし良ければ、一緒に妹殿とブラン殿を探さないであるか?』
『ふむ?
それは良い考えだな。』
おぉ、これでブラン殿を見つけるのが早くなるかもしれないである。
『では、最後に訪れていたのはここなのである。
今からバラバラになって......』
『しかし、今更一匹増えようが対して変わらない。
このように話が出来たのは儲けものだ。
まぁあまり収穫は無かったがな。』
なに?
辺りを見回せば綺麗に囲まれてしまっているのである。
じっと此方を見ていたのは、我がどう動くかの観察をするためであったのであるか。
そして、我が話しかけたから丁度良い時間稼ぎとして使われたと......
そういうことであるか?
してやられたのである。
ここから何とか抜け出せれば良いのであるが.........
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