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人生...いや、狼生は楽じゃないね!  作者: ゴンピ~
第4章:それぞれの道
108/131

108話目



さて、どうするか。


『おい、黄色いの!

俺の話を聞け!』


そう言うと、黄色いのは辺りに視線をさ迷わせ、俺に目が止まった。


『貴方が今の言葉を発したのか。

私は忙しい。

後にしてくれるか。』


怒りに満ちているが、此方に対しての反応はそれほど悪くない。

普通であれば無言で襲うか、煩いとか、邪魔だとか言って襲う。

それに比べれば受け答えをしてくれる当たり、この黄色いのは根はいい奴なのだろう。


『忙しいというのは、そこの人間を殺すためか?』


『まだ話をするのか。

そうだ。

だから脇に退いてくれ。』


『それは出来ないな。

この人間は俺の主人なんだ。

殺されては困る。』


そう聞くと黄色いのは疑問に感じたのだろう...


『......主人?

人間が...か?

あぁ、なるほど。

貴方も無理に従わされている口か。

それならば、やはり殺すべきだ。』


『違う。

俺は無理に従わされているわけではない。

自分の意思で主人といるんだ。』


黄色いのは目を見開き


『自分の意思で...従っている?

人間にか?

人間など、自分の都合のいいようにしか使わないのに!

それに使い物にならなくなれば、すぐに捨てる。

捨てるだけならいい、私達を散々利用したあげく素材として、体を剥いでいくのだぞ!!

なんとおぞましい生き物か!

そのような者に従うとは貴方は気が触れたのか!?』


話している内に興奮してきている。

これはちょっとミスったか?

だが、事実だしな。


『お前の言う人間と俺の主人を一緒にしないでくれるか。

俺だって人間は嫌いだ。』


『なら、何故!』


『まぁ落ち着け。

確かに俺は人間が嫌いなんだ。

色々とあって、俺は飛べる種族なのに飛べないという欠陥持ちだ。

それでお前の言うように、前に俺を飼ってた奴は俺を捨てた。

それも飛べないことを嘲笑うように、傷口に塩を塗るように...

だから人間は全てこんな奴らなんだと思っていた。

だが、今の主人は俺が飛べないということを何とも思わず、最初など態度が悪かったのに、それでも優しく接してくれていた。

主人が特別なのかもしれない。

主人以外の人間は悪い奴かもしれない。

だが、人間全てが悪ではなかった。

それならば、もしかしたら他にも人間の中に悪ではない奴がいるかもしれない。

だからお前も...』


『そんな話はどうでもいい。』


話を途中で切られてしまった。

やはり俺は口下手だ。

どうにも、響かなかったらしい。


『じゃ、単刀直入に言う。

俺の主人を殺すな。

それにお前には借りがあるんだぞ。』


『借り?』


『そうだ。

お前今の状態は前より幾分かましだろ。

それ、主人が一生懸命身を削る勢いで癒してたんだぞ。

俺らが止めなければ、本当に身を削っていた。

ちゃんとした契約もしていないお前に対してだぞ?

あのまま放って置いたら確実にお前は死んでいた。

云わば命の恩人だ。

それを殺そうとは、流石にしないよな。』


『......そんな事私は頼んではいない。』


少し殺すことに抵抗が出てきたか?


『頼んでいなくても、お前本心では現状を助けてほしかったんだろ?

そうでないと召喚術から出てこないはずだ。

主人の力に対して強すぎるお前がな。

お前、最後に運が良かったんだよ。

助けて欲しいと思っても召喚術が使われなければ喚ばれないし、あんな傷だらけでは喚ばれても直ぐに捨てられるしな。

それだとお前は結局死ぬことになっていただろうよ。』


黄色いのは沈黙している。

根は良さそうだからな。

命を救って貰ったということを知れば、流石に命を奪いには来ないだろう。

これでも襲ってきそうなら決死の覚悟で相手をしなくてはいけない。

俺だけではすぐに殺られそうだがな。

だが、クプレには主人を連れて帰ってもらわないと、主人だけでは絶対に逃げないだろうからな。

やはり俺だけで相手するしかないだろう。


『............了解した。

私は不義理を働くつもりはない。

命を助けて貰った礼は必ず返す。

この契約も礼が返せるまでは結んでもいい。』


おぉ!

無事に解決したぞ。

主人にこの事を伝えよう。


『主人、この黄色いのが契約を結んでもいいと言っている。』


『...えっ...あ、うん。

分かった。

どうしてそうなったのか気になるけど、ありがとうね。

多分話をしてくれてたんだよね?』


『まぁ、そんなとこだ。

それじゃ、黄色いのとは繋いでおくから契約を終わらせてくれ。』


そういって、主人と黄色いのを繋ぐ。


『ありがとう、サファイア。

...えっと、それで僕と契約してくれるって聞いたんだけど、良いのかな?』


『はい。

先程は無礼を働き申し訳ございませんでした。

聞けば、私の命も救っていただいたようで...

それなのにあのような無礼、重ね重ね申し訳ございません。』


...ちょっと待て。

さっきまでの口調と全然違うのだが!?


『...おい、黄色いのその口調はどうした。』


『私の種族は元々何方かに仕えることを善としており、礼を返すまでとはいえ、仕えるのであればそれ相応の態度にはするべきかと思いましたので...』


『へぇ、そんな種族もいるんだね。

でも僕に仕えるって言うのじゃなくて、対等な感じでいて欲しいんだけど...』


『いえ、それは出来ません。

貴方様は私の主であり、敬うべき存在です。

本来であれば他の方達もそのようにすべきだと思うのですが、私は新入り。

言うなれば、1番下っぱなものですから、上司にそのようなことを強要するべきではありません。

でありますから、私だけでもこのような感じでいきたいと思っております。

どうかこの願いを叶えさせては貰えませんでしょうか?』


『えっ......う...うん。

わ、分かったよ。』


『ありがとうございます。』


黄色いのは鼻を右から左に揺らし、頭を軽く下げる。

なんか、性格が変わりすぎて変な感じがする。

さっきまで凄く人間を嫌っていたというのに......


『えっと、君は名前はあるの...かな?

あれば教えて欲しいんだけど...』


『私には名前はありません。』


『そうなんだ。

じゃー、僕がつけてもいい?』


『はい、主に名前を頂けるなど光栄でございます。』


『そ、そう。

えっと、じゃぁ.........アキレアなんてどうだろう?』


『アキレア....良い名前ですね。

これからはアキレアと名乗らせてもらいます。』


黄色いのはもう一度礼のような動きをし、腹を地面につけて横たわった。


『だ、大丈夫!?』


完全に体力が戻っていないのに少し無理をしたから疲れたのだろう。

主人は黄色いのに駆け寄った。

クプレがいいのか?といったような顔をしている。

クプレまで繋いでいると消費が多すぎるからな。

切っていたから話の内容は分からないのだろう。

だが、針積めていた空気が揺るやかになり、危険では無さそうだから主人を止めなかったって感じか。

しかし、不安ではあるから俺に確認を取ろうとしたってところだろうな。

だから俺はクプレに頷いておく。

すると少し安心したようになった。


『申し訳ございません。

まだ本調子ではなかったようで......』


『良いよ。

今日の分はまだ途中だったしね。

ちょっと気になることがあって上の空だったんだ。』


そうだ。

黄色いのが攻撃する前、主人は何か不思議そうな顔をしていた。

何を考えていたのだろうか?


『主人気になることと言うのはなんだ?』


『なんかね、僕たちが何かをしたわけでないのに経験値を獲得したんだよ。

サファイア達は聞こえなかった?』


経験値?

俺は何も聞こえていない。

いや、俺も直前まで考え事をしていたから聞き逃したか?


『クプレ、お前はさっき経験値を獲得したか?』


『私?

いや、何も倒してないのに獲得なんてしないよ。』


そうだよな。

俺たちはなにもしていない。

主人だけ聞こえたと言うのは何故なんだ?


『主人、俺もクプレも聞こえていないぞ。』


『そっか、じゃぁあれは何だったんだろう.........

気のせい...だったのかな。』


主人は考え事をしながら、黄色いのを治していった。

俺も考えては見るが、さっぱりといっていいほど分からない。

俺は考えるのを止め、辺りの気配を察知する練習を再開した。



結局主人の謎は解けず、俺も気配察知をすることができずに黄色いのの治療が終わり、俺達は宿に帰る事になった。




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