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人生...いや、狼生は楽じゃないね!  作者: ゴンピ~
第4章:それぞれの道
104/132

104話目

暫く更新できませんで申し訳ありません。



メイルさんのヴィオラが盗まれてしまった。

そしてそれをブランが追いかけて行ってしまった。


「くっそ、まさかヴィオラが入ってるカバンを狙われるとは思ってなかったぜ。」


「いったい何処に行ったんでしょう?

ブランも追いかけて行ってしまいましたし...」


「取り敢えず、俺らも追いかけるぞ。」


「そうですね。」


ブランが曲がった所までメイルさんと来てみた。

けれど、そこまで来て見てもブランの姿はもうない。

何処に行ったんだろう?

獣魔である事を示す首飾りは付いているから大丈夫だとは思うけど、少し心配だなぁ。

メイルさんと共に色々な通路を調べていく。

何処かにブランが通ったとか、盗人が逃げた痕跡はないか探す。

大通りではなく、細道で人がほとんど居ないから目撃情報もない。

ブランは賢いから無事に帰ってきそうだけど......


キィィーーンッ


突然耳鳴りのような音が聞こえた。


『召喚獣:サファイアが強制帰還しました。

再召喚まで丸1日。』


え?何で?

外に出ているのが好きなサファイアなのに、何で急に、それも強制帰還を?

強制帰還すれば、自分の身に負担がかかるから再召喚まで時間がかかる。

理由を聞きたいけど...


......待って、サファイアってブランと一緒に行ったよね。

もしかして二人の身に何か危険があったのかな。

それで殺られるよりは、という事で強制帰還を選んだ?

...じゃぁ、一緒に居たブランは?

ブランは召喚獣じゃない。

......もしや.........死?......


「...おい、クラウド。

立ち止まってどうしたんだ?

......って、本当にどうした!?

顔が真っ青だぞ!」


「...あぁ...メイルさん、実は...」


サファイアが強制帰還で戻ってきたんです、と言おうとして止まる。

...そうだ、メイルさんには召喚獣であることを言ってなかった。

テイムした魔物だと...

そう言って、仲良くなって一緒に依頼も受けて...

召喚獣であることを黙っていたのは、何だか裏切りのような気がしてメイルさんに話すことが出来なかった。


「.........いや、何でもないんです。

ちょっと悪い想像をしてしまって...」


「...?

...あぁ、大丈夫だ。

心配するなとは言わない。

だが、そんなことはないと思うぞ?」


「何故、そう言いきれるんです?」


「クラウドの狼...ブランが簡単にそんな事になるはずがないだろう?

アイツは素早いし、普通よりも賢い。

普通の町の盗人なんかに遅れは取らないだろうよ。

...取りあえず探そうぜ?

狼だからな、逆にブランの方が俺らを見つけてくれるかもしれないぜ?

...ヴィオラをつれてな。」


最後は小さく呟いていたが、僕には聞こえた。

...そうだ、メイルさんのヴィオラもいるんだ。

メイルさんだってヴィオラに無事に帰ってきてほしいんだ。

...もし、明日もブラン達が見つからなくて、サファイアの召喚が出来るようになったら、メイルさんにも話をしよう。

出来れば今日見つかってほしいけど...


......けれど僕の願いは叶うことはなく、第4の鐘が鳴るまで探したけれどブランもヴィオラも見つからなかった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




僕とメイルさんは一度別れて宿に帰った。

部屋に入り、椅子に腰を下ろす。

何時もであれば側にブランが居り、その背中の上にサファイアがいる。

最初は迷惑そうだったブランもいつの間にかサファイアと仲良くなって何時も背に乗せてたなぁ。

けれど、今は二人とも居ない。

いい宿だし、ブランも部屋に入るという事で一人部屋の割に広い部屋を貸してくれた。

値段は変わらず気をきかして、何も言わずにこの部屋を貸してくれた宿の人はいい人だよね。

そして、こんな宿を紹介してくれたギルベルトさんにもありがたく思う。

...けれど、今はその広さが嫌だ。

誰も居ない、ポツンと僕一人で居れば周りから沈黙の圧力が僕を押し潰そうとやって来る。

叫び、暴れて圧力から逃れたいけれど、そんなことをしても意味はない。

最悪の想像が頭から離れない。

僕は...


『召喚獣:クプレの進化が終わりました。』


気持ちがどんどんと落ち込んでいきかけた所で、僕はばっと起き上がった。

クプレと約束したんだ。

進化が終わったら直ぐに喚んであげると...

何より、僕は今一人でいるのが嫌だ。


部屋の扉に鍵をかけ、外から見えないように窓にも布をかける。

クプレが進化でどれ位のMPを持っていくのか、分からないから腕輪を外して元の姿に戻る。

召喚をする時、強い光が出るから目を瞑り、召喚術を使う。


「我、汝を呼び出し者。

我の呼び掛けに答え姿を現せ、召喚。」


目を瞑っているから分からないけれど、体から何かが抜けていった。

多分魔方陣が出ているのだろう。

少しくらっとしたけれど、大丈夫。

最近MPをよく使うから量も増えてるみたいだし、腕輪をしていても喚べそうだ。

瞼が一度赤に染まり、黒に戻った。

もう目を開けても大丈夫かな。

目をうっすらと開けて行けば、大きながっしりとした鹿が立っていた。

元から僕よりも視線が高かったけど、もう見上げなきゃ行けない位に大きくなった。

角は前みたいに頭から真っ直ぐ上に伸びるような物ではなく、クプレからしたら斜め後ろに生えている。

それに真っ直ぐじゃなくて、上方に緩やかに曲がっていっている。

角も随分立派だね。

もしこれが前みたいに上に真っ直ぐ生えていたら天井に刺さってたかも...

前は角に刺や花がついていたけれど、今回は何も付いていない。

でも、角の枝分かれが鋭くて、角そのものが尖ってるからぶつかると刺さりそうだね。

クプレが首を伸ばして顔を下に降ろし、僕の顔の前より少し下に来て、つぶらな瞳で見てくる。

なんだか、嬉しいというより困惑、不安、心配のような感情が赤い瞳に映っている。

多分、僕の様子からそんな感じになってるんじゃないかな?


「大丈夫だよ、僕は大丈夫。

クプレは凄くかっこよくなったね。」


クプレの顔に手を伸ばし、頬を撫でる。

柔らかい、新芽のような手触りで仄かに暖かい。


「前は足に茨が巻いていたけど、なくなったんだね。」


足を見ながらクプレにそう言えば、一度首をかしげたけれど、


「ツィンッ」


と高く、響くような声で小さく鳴くと、足から一本蔦が出て来て、僕の頬を撫でた。


「出し入れ可能なんだね。

まぁ、前も茨を出して足止めしてくれたもんね。」


蔦を優しく掴んでみた。

つるつるしていて、柔軟に動くみたい。

少し蔦の感触で遊んでいると、ツンツンと腕をつつかれた。

どうやらクプレがもう一本蔦を出したみたいで、その蔦を見るように促してくる。

もう一方の蔦を見てみれば、


「ツリィンッ」


蔦が前の茨のように変わった。

どうやらこの蔦は形を変えられるみたいだね。

今度は木の枝のように変わり、葉が生え蕾ができ、花が咲いて、枯れて実が出来た。

植物の成長を早送りで見ている気分だね。

実は赤く、艶やかで一口で食べられそうな大きさだ。

僕がさっきまで弄っていた蔦が、その実をちぎり僕に渡してくれた。

これは僕にくれたのかな?

クプレの方を見れば、僕がどうするのか観察するように見ている。


「ありがとう。

僕にはこれが何の実か分からないけど大事にするね?」


取りあえず鞄に入れておこうとすると、蔦が鞄の入り口を覆った。

入れちゃ駄目なのかな?

どうしたら良いんだろう......


手のひらに乗せ、考えていると蔦が実を取り、僕の口元に近づけてくる。

...これは、食べろって事かな?

口を開けると実をそっと口の中に入れてくれた。

この蔦随分器用に動くね。

そんな事を思いつつ、実に歯をたてる。

プツリと皮が破れて甘い味が広がる。

甘くても、甘過ぎると言うことはなく優しい甘さでスッキリとしている。

自然と口許が綻び、


「美味しいよ。

ありがとうね、クプレ。」


そう言えば、何だか少しほっとしたような顔をクプレがした.........気がする。

お礼も兼ねて、クプレを撫でようと手を伸ばす...と、


「...んぅ...あれ?

鹿さんがいる?」


...あれ?

クプレの後ろからひょっこりと顔が覗いた。

青と金のオッドアイで、犬耳のついた女の子。


「あっ、クラウドもいる。

お帰りなさい...あれ?

何か......いつもと違う?」


そうだった。

メイルさんにクプレが疲れたから宿に預けて来ると言った時に、ついでにリーシアも疲れてるだろうと思って宿に先に帰って貰ってたんだった。

案の定、疲れてたみたいで今まで寝てたらしい。

リーシアには前、仮契約をしている子を呼び出すときにこの姿を見せてあるし、秘密であることも言ってあるから問題はない。

今は寝起きだからその事を忘れてるみたいだけど...


そんな事より僕は一人だと思ってたけど、全然一人じゃない。

今は僕よりもか弱いリーシアがいるんだ。

僕がちゃんとしてなくてどうするんだよ。

勝手に悪い想像して、落ち込んでちゃダメだ。

明日サファイアに真実を聞かないと分からないじゃないか。

もしかしたら、何か事情があったのかもしれないし......


うん、そうだよ。

きっとそうに決まってる。


僕はそう自分に言い聞かせながら、明日の為の準備を始めた。





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