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人生...いや、狼生は楽じゃないね!  作者: ゴンピ~
第3章:平穏の終わり
100/131

100話目

大分長い間お待たせしました。

それでは、どうぞ。



住処に帰って来てから2回ほど寝た。

何してたのかって?

別にこれと言ったことはしていない。

獲物を狩って、食べて寝てを繰り返しただけだ。

今日は何をしようか....

今日こそは氷の所に行ってみようかな?

見つけてから1回も行ってないものな。

ぐっと起き上がり、出口の方へ行く。

ライガーは起きているがゴロゴロとしていたのだが、俺が出ていこうとすると耳をぴくりと動かし此方を見た。


『...ぬ?

ブラン殿何処かに行くのであるか?』


『あぁ、ちょっと探検にな。

氷が張ってある所があったから、何か変わった事や物は無いかなとな......』


『氷?

.........あぁ、あそこであるか。』


『ん?行ったことあるのか?』


『うむ、我が行った時は何も他と変わりなかったのである。』


『そうか...

まぁ、それならそれで獲物を取ってくる。

景色が変わるというだけでも良いからな。』


『確かにずっと一緒では飽きてくるであるしな。

......我はもう少しゴロゴロしてから獲物を探すのである。

む?

ヴィオラ嬢?

どうしたのである?』


ヴィオラがライガーの毛の中から出て来てこちらを見ている。

どうしたんだろうか?


『...気をつけて......と言っているのである。』


ん?

別にすぐに帰って来るから大丈夫だと思うのだが...


『分かった、気をつけるよ。

そう言っといてくれるか?』


『分かったのである。』


今度こそ出口から外に出た。

さて、行きますか。

俺は駆けだし、雪を俺の周りにまわせながら氷が張ってあった場所へと向かって行った。




・・・・・・・・・・・・・・・




...よし、着いたな。

ここからはヴィオラも気をつけてと言っていたし、特に注意しながら進んでいくか。

氷の上に右前足を乗せ、体重をかけてみる。

...全然割れそうにないな。

相当厚く氷が張っているみたいだ。

......と言うか、この下は水なのだろうか?

水っぽくなさそうなんだが...

氷が厚く張っているからそう思うだけであろうか?

氷の透明度は高いんだが歪んで下はどうなっているのかサッパリ分からない。

...そもそも何故ここだけ雪が積もっていないのか。

ここに来てから何日かは雪が降る日もあった。

だから雪が積もってもいいはずなのに少しも積もっていない。

やはりここには何かがあるのかもしれないな。


もしも下が水で1部分だけ薄いとかあったら嫌なので、慎重に歩きつつ何か変わった所はないか探していた。

すると気配察知に反応があった。

左斜め後ろから何かが近づいてくる?

んー......1匹か。

それにこれはアイスウルフ、それも前に逃がしてやった奴だな。

走ってきているようで、距離がだんだんと詰められていく。

折角逃がしてやったのに、また挑んでくるとはな......

アイスウルフが来る方へ向き直り、いつでも攻撃できるようにしておく。

アイスウルフは近づくにつれ走るスピードを落としているようだ。

まぁ、向こうも俺の事が見えてるだろうし、こんな臨戦態勢の奴に迂闊に近づくほど馬鹿でもないだろう。

10メートルほど距離をあけた所でアイスウルフは1度立ち止まった。

......ん?

何か咥えている?

よくよく見てみればペンギンのようなものを咥えているようだ。


「ガウッ(待って、攻撃しないで)」


鳴いた為ペンギンが落ちる。

それをササッと咥え直し、俺の方を見る。

んー、やっぱりこいつの言うことは何でか知らないけど分かるんだよな。


「グルルルッ(何の用だ)」


相手の言葉がわかるのでアイスウルフも俺の言葉が分かるかもしれない。

そう思い、返答をしてみた。

さて、通じるか?


「ワオンッ?(もう少し近寄ってもいいかしら?)」


これは通じてるのか?


「ガルルルルッ(ダメだ。それ以上近づくと攻撃するぞ。)」


「クゥーン(お願い。私は何もしないわ)」


耳を伏せ、低い姿勢をとるアイスウルフ。

...うーむ。

これは通じていると見て良いだろう。

俺にそんなスキルは無いし、アイスウルフにも前見た時は無かった。

スキルとは関係なしに言葉が分かる?

それとも何か表示されていないスキルがあるのか?


そう言えば、俺はウィンダー言語を習得しているがクラウドは習得していなくても話したり、書いたりしていたよな。

それについて前から疑問に思っていたんだっけ......


「...キューン(...あの、だめ...なのかな)」


おっと、考え事をしている場合ではないな。

アイスウルフを見れば、怒られてシュンとしている犬のようにしか見えない。

何も危害を加えようとは思っていなさそうだ。


「ガゥッ(お前は動くな。俺が近づいていく。)」


そう言って先程の半分。

5メートルくらいまで近づく。

駆ければすぐ届く距離、しかし飛びかかるには届かない。

まぁ、俺もアイスウルフも遠距離攻撃があるから関係ないんだけどな。

でも、先程の距離でも使おうと思えば使えたし、俺は考え事をしていて好きがあったのにも関わらず攻撃してこなかった。

つまり、本当に襲ってくるつもりは無いという訳だ。


「ガウッ(ここまでが限界だ。この距離で我慢しろ。)」


それでも微妙に距離を開けているのは...まぁ、念の為?

としか言えない。


「ウオンッ(分かったわ。)」



アイスウルフは地面に落としたペンギンを鼻で押して此方に近づけてくる。

その場に留まって押しただけなので、全然届かないんだがな。

...これは一体どういう意味だろうか?


「グゥッ?(これは一体何だ?)」


「グ............ガル?(え............お肉?)」


「グルルルッ。ガウッ?(いやいやそうじゃない。これは一体どういう事だ?)」


「ガウゥッ(えっと前逃がして貰ったからそのお礼と...その...)」


「ガルッ?(何だ?)」


「グウゥゥッ...(あの...えっと......私を群れに入れてくれないかなって...)」


は?何故そうなる?

ポカーンとしているとアイスウルフは俯き、


「クゥーン...(そうね。私は追い出されたし、追われる身...こんな厄介な奴入れたくないわよね。)」


何かすごく落ち込んでる。

アイスウルフは群れでいるのに、こいつは1匹だけでいるから何処かの群れに入りたいのか。

けど、1匹でいる理由は追い出された...か。

前居た群れで何をしたんだろうな。

別にこう話している感じでは悪いやつっぽくはないんだがな。


「グルルッワォン(別に俺はそんなこと知らないから気にしないがな。突然群れに入りたいとか言うから驚いただけだ。)」


「ゥ...ワオン?(ぇ...じゃぁ群れに入れてくれるの?)」


「ウ〜、グウゥゥ...(うーむ、だがな、あいつらに聞いてみないと分からないし...俺らは今問題があるし...)」


そう、別に俺は気にしないんだがライガーとヴィオラはどう思うだろうか?

まぁ、あいつらは良い奴だから拒否しない気がするけどね。

それよりも俺らは今首輪に縛られている状態だからな。

さらに最終的に俺はクラウドの所に帰るつもりだし...


「ガゥッ...(そう...あのトラとトカゲね。)」


「ウォン(だからその肉は受け取れない。それにお前肉を奪おうとするぐらい飢えてたんだから自分で食べろ。)」


そう言うとアイスウルフはピクっと反応し、ペンギンの方を見る。

やっぱり今でも飢えてるんだな。

まぁ、群れで狩りするはずなのに1匹だからな、中々獲物は捕まらないだろう。


今日は一旦帰るかな。

この場所はまた明日探索することにしよう。

俺は住処の方へゆっくりと歩き出した。

アイスウルフはまだペンギンを見ていて、葛藤しているようだ。

ま、俺が居なくなったのが分かれば普通に食べるだろう。



・・・・・・・・・・・・・・・



ブランが居なくなってから少しして、アイスウルフはハッとしたように顔を上げた。

そして、キョロキョロと辺りを見回し、


「ウッ!?ゥワオオォーーン!」


遠吠えを1つ上げた。

しかし、


「グルッ!」


何か焦ったように当たりを見回し、ばっとペンギンを咥え元来た道を走っていく。

それは真っ直ぐ駆けるのではなく、ジグザクに走ったり、急に大きく飛んだりとすごく無駄な動きに見えた。


そして、1匹のアイスウルフが見えなくなった頃、新たに多くのアイスウルフが氷の地にやって来た。

鼻を地面に近づけ、辺りの匂いを探りグルグルと言い合っている。

そこへ他のアイスウルフよりも大きくがっしりとした体付きの狼が来た。

その狼には左の口元から真っ直ぐに切り傷があった。

塞がってはいるものの、まだ新しい傷のようだ。


「グルルルッ!」


傷のある狼が唸れば他の者達は動きを止め、傷のある狼を見る。


「ガルルッ」


1匹のアイスウルフが傷のある狼の前に行く。

尻尾は股の下に入り、足は僅かに震えている。


「ガウッ」


「ク......クゥーン」


「ガアッ!!」


「キャインッ」


傷のある狼が体をぶつけ前に来たアイスウルフを倒し、その体を右前脚で踏みつけ、牙を剥き出しにした顔をアイスウルフの顔に近づける。


「...キュ......キュイーン」


フンっと鼻を鳴らし傷のある離れていく。


「ゥワオオォォォォォオン!!!」


ビリビリと感じるほどの遠吠えと共にアイスウルフの群れは動き出す。

彼らが向かった先はブランでも、1匹のアイスウルフが帰って行った方でも無かった。





ブックマーク&評価ありがとうございます。

そう言えば今回で100話ですね。

元号も変わるみたいですし、区切りがいいですね。

まぁ、物語的には全然区切り良くないんですけど笑

これからも読んでくれると嬉しいです。


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