休息で終わるエピローグ
窓から差し込む陽の光と、小鳥のさえずりによってリリアは目を覚ます。リリアが最後に目を閉じた時からずいぶん時間が経っていた。
「ん……よく休めました……」
リリアはゆっくりとベッドから起き上がると、自分の右手が温かいことに気づく。右手を持ち上げると、そこにはユノの手が握られていた。ユノはリリアが心配で座りながら、リリアの手を握って寝ていたのだ。
リリアが起きたことにも気づかず、ユノはぐっすりと眠っていた。リリアは一瞬だけ驚き、ユノに感謝した。自分は、こんな幼馴染を持てて幸せだと。
リリアは静かに手を離し、ベッドから抜ける。部屋の窓を開けると、太陽の光が一気に入ってきた。
「もう朝ですか……本当によく眠ってたみたいですね私」
そんな独り言を言って、ふと机を見ると、そこには八等分に切ってあるリンゴがあった。ユノが切ってくれたのだろう。リリアは小さく笑ってリンゴを手に取る。
「いただきます」
シャリという音がする。新鮮なリンゴだったのだろう。窓枠に腕を乗せながらリンゴを食べていると、メルが部屋に入ってきた。
「あ、おはようございますメルさん」
「ああ、おはよう。もう起きていたのだな。体調は? 良くなったか?」
「もちろんです」
リリアは両腕を上げて元気なことをアピールする。それを見るとメルは笑いながら言った。
「それは良かった。だが病み上がりだ、無理はするなよ。今日は店を休んでおくといい」
「いえ! もうバリバリ働きますよ!」
それを聞いてメルは目を丸くした。普段なら「じゃあもう一眠りしま〜す」などと言いそうなものだが。
「おかしい……やはりまだ熱があるのではないか?」
「むっ、失礼な。私だってここの店主ですからね?」
リリアは頬を膨らませながらそう答え、ユノの方を見た。
「ユノちゃんは……もう少し寝かせてあげましょう」
「そうだな。昨日は夜遅くまで起きてお前の面倒を見ていたのだから。あと寝かせるならベッドにきちんと寝かせてやれよ」
「……そうだったんですか。ありがとうございますユノちゃん」
ユノをベッドに寝かせリリアは万歳をする。
「よーし、今日も頑張りますよ!」
「張り切りすぎてまた風邪をひくなよ」
そんないつも通りの会話をしてリリアとメルは下に降りる。
アクスベリー魔道具店〈おひさま〉。本日から営業再開。
少女と黒猫の日常は、まだ終わる気配はなさそうだ。
とりあえず第一章はこれで終わりです。この話はエピローグですがまだまだ続きますよ!




