最高の客人 3
「あの...」
「何。」
「今回の出来のほうは...」
「普通。」
今回のは個人的に自信作だったんだけど...
このガ...この客人は並な作品じゃ満足しないってか。
こりゃ、帰ったら怒られるな。
「分かりました。それでは...」
「...ねぇ」
「はい。」
「ここ、この中盤の所...」
そこは、俺が一番悩みに悩んだ所...。
どうでもいい所に凝るなって怒られたけど。
「ちょっと面白かった...」
「...!」
「もう少し内容濃くすれば良いと思う。」
「わかり...ました。戻って直ぐに
改善させて頂きます。出来上がり次第、
再度こちらにお持ちしても宜しいでしょうか。」
「うん。」
「では、失礼します。」
俺がここに通い始めて3回目。
初めてこの子の面白いを頂けた。
大体の人は1回、大してやらずとも
物の珍しさに面白いといってしまう。
だが、この子は一言も面白いと言ってくれなかった。
だから、俺の中ではこの子を満足させるのは
凄く難しいと思っている。
そんな彼からの面白いは俺にとって
物凄くでかい言葉だ。
嬉しさを抑えるのに必死で
少年相手に声が軽く震える。
『キィ...』
「お邪魔しました。」
『バタンッ』
ここからまた数日かけて
帰らなくちゃ行けない。
だが、俺の心は褒められた事の嬉しさで
全く時間を感じさせなかった。