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『ガタゴトッガタゴトッ...』
都心からおよそ200km。道は殆ど整備されておらず、
周りにはうっそうとした木が生い茂っている。
そんなへんぴな場所に小さな村がある。
俺は今その村に向かっている。
...いや、正確にはそこから更に森の奥へ進み
5km離れた所に息を潜めて佇んでいる一軒家に、だ。
村に行くまでの交通手段は2つ。
1日2本しか通ってない村行きの列車に乗る。
それか、馬車で村まで向かう、のどちらかだ。
ここで重要なのは、両方とも村までしか行けない、という事だ。
馬車なら一軒家に辿り着けると思った人もいるかもしれない。
実際、俺もそう思っていた。
だが、誰も村より奥に行ってはくれなかった。
理由は分からない。
ただ、運転手を見る限り村の先が深く暗い森だから、
というだけではないようだ。
「...お客さん着きましたで。」
「あぁ、ありがとう。」
「いえ、毎度。」
この村にくるのは3回目だが、いつ来ても暗い。
人の影はあるが...失礼だが葬式後にしか見えない。
「さて、行くか。」
帽子を深く被り、服装を整え、
深呼吸をしてから森へと歩き出す。
ここから約1時間歩かなければならないと考えると
軽く気分が悪くなり嫌にもなるが、
それでもあそこの家は俺にとって
最高のご客人なのだから我慢するしかない。