町に宇宙人がやってきた
町に宇宙人がやってきた。それは夏休みのとても暑い日だった。やってきた宇宙人は体が小さく、ひ弱そうな宇宙人だった。
「ワレワレハ宇宙人ダ」
目の前に宇宙人があらわれてサブローとタクヤはおどろいた。でも宇宙人は一人しかいなかった。そして弱そうだった。強気になったサブローは言った。
「『ワレワレ』じゃないだろ」
タクヤは続けて言った。
「一人だろ」
宇宙人は言いなおした。
「ワタシハ宇宙人ダ」
けれどサブローは満足しなかった。
「宇宙人ってことはさ、君は宇宙に住んでいるの?オレたち、地球に住んでいるから地球人だけど、君は宇宙人だからうまれ故郷の星とか無いの?家とかないの?宇宙でずうっと、うかんでいるの?」
とサブローは言った。
「だとしたらかわいそうだよね」
とタクヤは続けて言った。
宇宙人は言いなおした。
「ワタシハ異星人ダ」
宇宙人の声はだんだん小さくなっていた。
しかし二人はそれでは引き下がらなかった。
「異星人って言ったってさ、星っていっぱいあるでしょ。どこの星だかわからないよ。それで自己紹介したつもり?それって失礼だよね?ちなみにオレはサトウ・サブロー、十一才。第二小学校五年」
とサブローは自己紹介した。
「ちなみにオレはタナカ・タクヤ、十才。第二小学校五年」
続けてタクヤも自己紹介した。
宇宙人はまた言いなおした。
「ワタシノ名前ハ、グリュリュリュリュパガッド、五百三十八歳。さそり座十八番星の第二惑星人ダ」
宇宙人の声はほとんど泣き声になっていた。
「ふーん。グリュリュ…なんだっけ。まあいいや。グリュはさ、何しにこの町に来たの?旅行?そっちも夏休み?」
とサブロー。
「オレたち、今からペンギン公園に行く途中だけど一緒にくる?」
と続けてタクヤ。
宇宙人はそれを聞くと頭をふりふりと横にふってどこかへ消えてしまった。きっといたたまれなくなったのだろう。
あとに残されたサブローとタクヤは宇宙人がいなくなって、はじめて「なんか恐いな」と思った。そして自転車のペダルをギコギコふんでペンギン公園に向かった。もうそこに集まっている友だちに、自分たちが宇宙人に会ったことを話すために。
その日のうちに二人目の宇宙人が町にやってきた。今度やってきたのは大きくて強そうな宇宙人だった。
「ワタシノ名前ハ、エミュミュミュミュラポック、二百三十八歳。さそり座十八番星の第二惑星人ダ」
目の前に宇宙人があらわれてチカコおばさんはおどろいた。でもその宇宙人は力が強そうだったのでチカコおばさんは両手に持っていた大きな買い物ぶくろ、二ふくろをその宇宙人につき出した。目の前にふくろを出されて、思わず宇宙人は両手で受けとってしまった。
「エミュミュ、なんだっけ?まあエミュ君でいいよね。じゃあそのふくろを持って私のあとについてきて。」
そう言うとチカコおばさんは歩き出した。宇宙人はあとからだまってついていった。買い物ぶくろはあんまりにも重いので宇宙人は腕がちぎれそうになった。それに暑いので汗でだくだくになった。ひーひー言いながら宇宙人はチカコおばさんのあとをついていった。
チカコおばさんのあとを歩いている宇宙人を見ても、町の人はまったく気にしなかった。
チカコおばさんは家についた。そして宇宙人に頼んで玄関に買い物ぶくろをおいてもらった。そしてチカコおばさんは、ちょうどいいからタンスの整理も手伝ってもらおうと思って宇宙人のエミュ君のほうをふり返った。
けれど宇宙人はどこにもいなかった。きっと、またお手伝いを頼まれると思って逃げてしまったのだろう。
チカコおばさんは宇宙人がいなくなって、はじめて「なんか恐いわ」と思ってドアの鍵を二重にしめた。そして近所に住んでいるおしゃべり仲間のミホおばさんに電話をした。宇宙人に会ったことをおしゃべりするために。
「ミホさん、お久しぶり。私ね、宇宙人に会ったのよ。」
「あらチカコさん。またまた宇宙人なんて。ところで最近、ご主人のほうはどう?」
「主人なんてどうでもいいのよ。宇宙人がね、私の買い物ぶくろを運んでくれたのよ」
「またまた宇宙人なんて」
ミホおばさんはチカコおばさんから宇宙人の話を聞いても「チカコさんって変なことを言う人だわ」くらいにしか思っていなかった。
そして夕方になってサブローが家に帰ってきた。ミホおばさんはサブローのお母さんだったのだ。そして夕食を食べながらサブローはミホおばさんに、自分が宇宙人に会ったことを話した。けれどミホおばさんは、サブローの言うことをまったく信じなかった。
「お母さん、信じてよ。本当にオレは宇宙人と話したんだから」
ミホおばさんは食器を洗っていた。
「サブロー、早くごはん食べちゃって。片付かないでしょ。宇宙人なんているわけないじゃない。チカコさんといいあなたといい、暑くて頭がおかしくなったんじゃないの?宇宙人のことはどうでもいいから、夏休みの宿題をちゃんとやりなさい。」
サブロー君はごはんを食べながらテレビをつけた。テレビではニュースをやっていた。アナウンサーがニュースを読みあげる。
「速報がはいりました。町に宇宙人が来ました。さそり座十八番星の第二惑星からこの町に宇宙人がやってきたもようです。危険ですので町の人は公民館や学校などに避難してください。くりかえします…」
そのニュースを聞いてミホおばさんの顔からさっと血の気がひいた。すっかりあおざめた。そしてあわて出した。タンスからいそいでリュックを取り出すと、ミホおばさんは非常食に水、着がえや下着、それに預金通帳をそのリュックにつめはじめた。そしてぼけっとニュースを見ているサブローをどなった。
「あんた、なんでそんなにのん気にしていられるのよ!殺されるわよ!早くこの町から避難しなくちゃ!お父さんに連絡して!」
けれど、サブローは落ち着いて言った。
「でも、夏休みの宿題をやらないと」
ミホおばさんはサブローをおこった。
「宿題なんてどうでもいいわよ!それどころじゃないわ!だって、宇宙人が来たのよ!」




