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01 - ヒロイン()の行動力は理解不能

ヒロイン()たるは!

退かぬっ!

媚びぬっ!!

顧みぬっ!!!

逆ハー作るまでは、負けぬのだー


と本人は思ってますが、砂上の楼閣です。

現実って厳しいねー

+

 舞踏会(プロム)の騒動から2週間。

 年の瀬を控えてトールデェ王立学院は平安を取り戻した、と思ってました。

 既に年内の授業も大方が終わり、寮に入っていた学生もそれぞれの実家に戻って閑散とした学院。

 残ってるのは勉強の虫か、実家と折り合いの悪い奴か。

 或は、俺のように他の連中との鍛錬の為に居る奴か、だ。


 木剣を持って、鍛錬場に行く。

 木剣は鉄芯入りで、剣と同様の重量がある鍛錬用だ。

 少し緩く曲がってて、何処か木刀染みたデザインになっている。

 俺がデザインして発注したのだ。

 刀風だ。

 この世界だと剣は、対〈黒〉の化け物(モンスター)相手なので幅広直剣(ブロードソード)が好まれているが、斬るという意味では、緩く曲がってる刀スタイルの方が便利なのだ。


 そんな自家製の木剣を持って行く鍛錬。

 鍛錬自体は実家(ゼキム家)でも、それこそ郊外の下屋敷に行けば幾らでも出来るんだけど、学院だと腕を磨き合える相手が居る訳で。

 というか同志が。

 (リベラル・アーツ)のみならず(マーシャル・アーツ)をも磨こうという仲間が。

 普通、武を磨きたい奴は軍令府が関与する士官学校みたいなゲルハルド記念大学に行くから、王立学院で文武両道をめざす俺たちみたいなのはごく少数派な訳で。

 いや、文武両道は貴族の基本だ。

 嗜みなのだ。

 何たってトールデェ王国では、騎士爵位持ちも含めて爵家当主もしくは当主代行は、有事には軍役に就くことが決まってるのだから。

 子爵家以上の家は私兵を持って。

 それ以下の場合は、軍に参加し、指揮官として働く事が求められているのだ。

 貴族の義務ノーブル・オブリゲーションって奴だ。

 文武両道なんて普通普通。

 その中で俺たちが少し毛の色が違うのは、俺とかは嗜み以上の先の強さ、要するに無双野郎(インコンパラブル)を目指そうというからだ。

 男だったら誰だって、誰よりも強い自分ってのに憧れるよね! という事だ。

 厨二病ともいう。


 とはいえ、現実には無理であるが。

 トールデェ王国の武のトップ陣って、リアルチート集団な〈十三人騎士団〉を筆頭に、化け物目白押しなんで、10代の学生が腕を磨いてもたかが知れているって奴だ。

 先は長いぜ、全く。



「ウィー君」



 とも角。

 知の要素が強い王立学院で武の才を磨こうとしている時点でひねくれ者(・・・・・)とも言われているが、だからこそ、俺たちの団結は強いのだ。

 たった3人だけれども。

 別枠で、護衛役なんで腕を鈍らせたくないと言って修練所での鍛錬に参加してくるパークス・アレイノートも居るが、それでも4人だ。

 寂しい現実である。

 或は、トールデェ王国で馬鹿(パワー・モンガー)は少ないと喜ぶべきか。



「ウィー君!!」



 と、誰かが俺の進路を遮った。

 物事を考えすぎていたかと反省しながら相手を見る。

 緑の髪をした小柄な女性、ラッヒェル・ランメルツだ。

 何故に居るし。



「退学と聞いたけど?」



 私服だし言外に、不法侵入者かと尋ねたら、そんな事は問題じゃないのと怒られた。

 理不尽だ。

 いや、電波に意思疎通を行おうとするのは時間の無駄か。



「どうして私を守ってくれないの!? これじゃ私、退学になっちゃうよ!!」



 いや、もう退学してるだろ。

 常識的に考えて。

 それに、そもそもの問題が1つ。



「何で俺がお前を守らねばならないんだ?」



「え? 何を言ってるのウィー君!?」



「それも止めろ。何度も言ってるが、俺の名を妙な形で略称にするな」



「ウィー君はウィー君だよ?」



 しれっと言うランメルツ。

 正に電場娘だ。

 罪のない顔で言ってくる辺り、ガチでイラっとくる。



「それより聞いて! このままだとこの国は大変な事になるのっ! 皆で力を合わせて、桜誓六騎団で守らなきゃならないの!!!」



 ランメルツの説明によれば、大乱が近づいている。

 それから人々を守る為には6人が集まって団結しなければならないのだと言う。

 頭が痛くなりそうな電波だが一応は聞いてやる。

 旗頭には王子であるチャールズ・アバランテが、

 軍略を軍政の鬼才君であるアーヴィー・フォードが、

 一騎当千の魔法の天才児のベルベット・パーシーが、

 傷ついた人を助けるのが治癒魔法の寵児ラッヒェル・ランメルツが、

 これに俺とパークス・アレイノートが加わって桜誓六騎団だという。

 正直な感想としては厨二病乙、だ。

 M64星雲だとかかあら何かをマジで受信んしているようにしか思えない。

 年齢的には、ガチで中二辺りだけど、にしても呆れる話だ。



「皆を傷つけない為に」



 あ、俺とパークス・アレイノートが攻撃力担当らしい。

 男らしく前線で振るう役だそうな。

 要するに雑兵担当って事だろう。

 白けるとしか言いようがない。

 使ってやるから来いとか言われて喜ぶのは奴隷か変態だけだ。



「そうか頑張れ。後、学院は部外者立ち入り禁止だ。退学したなら部外者だ。去れ」



「どうしてそういう事を言うの! ウィー君はツンデレ枠じゃないんだから、面倒くさい話は抜きにして私を助けて(取り巻きになって)よ!! イベントだってこなしているんだから(ヒロイン)に落ちてよ!!!」



 益々もって電波発言だ。

 電波強度ユンユンと上がり過ぎ。

 イージス艦並みだ。

 付き合ってられない。



「いい加減にしろラッヒェル(・・・・・)ランメルツ(・・・・・)



 力を込めて名を呼び、木剣の切っ先を向ける。

 ついでに睨む。

 女性大事にが俺のモットーだけど、コレ、電波だし淑女じゃないよね。



「なっ、ウィー君!?」



「2つ程告げよう。1つ。イベントが何であるかは知らんが、俺はお前に気を許す気は無い。2つ。俺の名はウィルビア・ゼキムであり、君に妙な略称を使う事を許した覚えは無い」



「えっ、そんな、ウィー君!?」



「そもそも君は俺の友人であるクリスティアナ・フォルゴンを虚言を持って陥れようとした。そんな奴と俺は会話なぞしたくない。失せろ」



「そんな、クリスティアナはチャールズ様のライバル役(悪役令嬢)なのに、何でここで名前が………、まさか、ウィー君を泥棒猫された!?」



 余りの意味不明っぷりに睨みつけると、少し退いた。

 そのままとっとと去れ。

 そう思ってたら乱入者(バカ)が来た。

 魔法の天才児(ベルベット・パーシー)だ。



「何をしているっ!」



 魔法の天才であったが故に、飛び級じみてで学院入りした奴なので実にチビだ。

 可愛い弟系という奴も居るが、余り可愛いとは思わない。

 そもそも、俺、男だし。

 そのチンチクリンな体を俺とランメルツの間に差し込む。

 というか、俺をにらみつけて来る。



「ベル君!!」



「大丈夫だラッヒェル、僕が来たからもう安心して。君は僕が守る」



 信者乙。

 というか、魔法を唱えてこようとするのは、学院内でソレどーよ? という奴だ。

 基本的に許可のある場所以外で使用禁止だろうに。



「ウィルビア・ゼキム! 可愛そうなラッヒェルに何をする気だ!! その返答次第では僕が相手になる!!!」



「盛り上がってる所を悪いが、俺は用は無い」



「嘘だっ! なら何で木剣を突き付けている」



「自衛だ」



「フザケルナッ! なら僕だって自衛してやるぞ!!!」



「ベル君もウィー君も、私の為に喧嘩は止めて!!」



 自己陶酔している電波が居るが無視して、僕ちゃん魔法使いを睨みつける。


 木剣なら峰打ちじゃないが、致死以外の攻撃も可能だが、魔法にンナ手加減は無い。

 だから俺は魔法の準備をするんじゃなくて、木剣を構えているんだが、天才君は魔力を集め出しやがった。

 やる気か。

 となればガチになる。

 詠唱を潰せば何とかなるし、その意味では、至近距離なのは有難い。

 俺の間合いだ。


 木剣をゆっくりと正眼に構えていく。

 一触即発、何で学院でこんな事になったのかと思えばアレだ、電波が悪い。



「止めてよ、危ないよ!!」



 必死に止めようとしている風の電波だが、俺と坊主の戦闘半径からは脱している辺り、計算高い感じだ。

 ウザいので無視。


 さてさて。

 こうなったら、噂の天才君の技量を見させて貰おうか。

 膝を曲げてバネを貯める。

 但し、本気でやるから呪文の1小節だろうが詠唱させる前に潰してやるがな。


 と、俺たちの間に影が入った。



「そこまで」



 凛とした声と共に木剣の剣先が掴まれた。

 天才君は、喉元に手刀が突き付けられている。


 その主は少女、小柄な、赤毛の少女だ。

 メイド服を着ている。

 誰?

 見た事が無いけど、良い動きだ。

 横からとはいえ、俺の木剣が完全に抑えられた。

 天才君も、下手には動けない状態だ。

 実に見事。


 っと、頭のフリル帽子から腰まで伸びる2本の赤色リボンが見えた。

 お、赤、警戒色(・・・)だ。

 金糸で紋章が入ってるっぽいから、王府認定武装メイドか。


 ウチ(ゼキム伯爵家)にだって居ないぞ。

 初めて見た。



「学院内での私闘は規則違反ですわ」



 はしと言い切ったのは、いつの間にか登場した小柄(スレンダー)な、綺麗な金髪をひっつめにしたお嬢さん。

 いやまぁ、校則通りなんですけどね。

 可愛いのと美人なのが割とバランスよくなっている感じだ。

 制服を着ているから生徒だね、多分。

 でも見たことが無い。

 誰?



「じゃ、邪魔をさせるな!」



「学院内での魔法の使用は、それも攻撃魔法は罰則規定があります。であれば同じ付属魔道院生マジック・ステューデントとして見逃す訳には参りません」



 凛とした感じは、中々のお嬢さんだ。

 しかし付属魔道院ね。

 そら知らん筈だ。

 一度見たら忘れがたい美人さんだが、校舎が離れているから当然だ。

 というか、馬鹿のように学院本校(コッチ)に来ていた天才君意外は知ってる筈がない。


 そんなお嬢さんと見事な技量の武装メイドさんの顔に免じて、剣を引くとしましょ。

 と、力を抜いたら武装メイドさん、木剣を握る力を緩めてきた。

 コッチの事が判るのか。

 こら、使い手(・・・)だね。



「悪いね」



「失礼しました」



 少し距離を取る。

 一触即発の間合いに、女性を入れておくというのは少し紳士的じゃないからな。


 俺が距離を取ったら、天才君は座り込んだ。

 実戦経験とかない奴には、この武装メイドのお嬢さんの気迫は怖かったかもね。

 そもそも、ゼロ距離の手刀って、素手でも怖いし。



「何だよ、畜生………」



 あ、泣き出した。

 体育座りっぽい辺り、ガチで凹んでるな。

 飛び級っぽく学院に入学しているから、子供なんだよね。

 子供にゃ刺激が強かったか。


 それに木剣を突き付けた俺は、大人げ無いって奴だな。

 反省しないけど。

 躾だから。



 泣いてる天才児君だが、ランメルツは常々に「大事なお友達」と言ってた割に助けようとはして無かった。

 慰めてやれよと思うのだが、それ以上に、天才児君の同級生っぽいお嬢さんを睨みつけてた。

 キツい目つき。

 馬鹿大将チャールズ・アバランテは、よくもあんな目つきをする奴を、可憐とかか弱いとか言ってたな。

 恋は盲目、或は馬鹿だからか。


 しかしあの眼、あの眼は知ってるぞ。

 クリスティアナ嬢を見てた時と同じ目つきだ。

 嫉妬?

 ()を見る目だ。



「どうして貴方が居るの、ヴィヴィリー様」



 敬称付けてるけど、付けてないのと一緒な声色だ。

 凄いね、女って怖いね。



「又、ベル君に付まとって! ベル君の邪魔をしないでっ!!」



「笑わせないで下さい。その様な事はありませんから」



 ヴィヴィリー嬢? の反応は実に冷ややかだ。

 というか見た事ある。

 クリスティアナ嬢がランメルツに妙な形で絡まれた時の目だ。

 あー

 何か判ってきた。




 溜息が出そうな俺を他所に、2人の会話(バトル)は加熱していく。

 いや、まぁ、ヴィヴィリー嬢の方は常に冷ややかなので、アレだ、ランメルツの空回りっぷりが良く見える。

 そこの泣いてる天才君、君、アレのどこが良かったの?


 というか、エグエグと泣いてて可哀想になってきた。



「おい」



 そっとハンカチを出してやる。

 見上げて来る顔は実に子犬系だ。

 年齢相応に幼いとも言える。



「あ、有難うございます………」



「気にするな。人間、泣きたい時はあるもんだ。泣きたい時は思いっきり泣いとけ」



「はいっ」



 素直な坊やの天才君。

 そして、ヴィヴィリー嬢とランメルツを見る。

 いつの間にか武装メイドさんはヴィヴィリー嬢の後ろに回ってた。

 メイドさんの鏡か。


 だが敢えて言おう。



「何、このカオス」





前回は王女様。

今回は某作の妹系ヒロイン。

あるぇー

どうしてこうなった!?

主人公の影が! 影が!!

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