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08 - きゃっとふぁいと(※分類上、獅子も虎も可愛いキャットちゃんです

どうしてこうなった!?


+

「何者?」



 不審者を見る目つきでラッヒェルを見るアーネット。

 そう言えば初対面か。

 どうでも良い話だ。



「五月蠅いゴリラ! 必要な(イベント)時に居ないから大変だったのに今更出て来るな!! 六桜じゃもう出番は無いモブなんだから!!!」



「はぁ?」



 電波(ラッヒェル)の勢いに、流石のアーネットも呆気にとられる。

 というか、初対面の相手にアレだけポンポンと言えるのって凄いわ。

 悪意と言うか言葉の汚さが外に出た顔つきといい、本当に凄い。

 礼節が無いとか言う次元を超えている。

 アレを天使とか可憐とか言ってた奴が居たな。

 そういう節穴だから道を踏み外す。


 馬鹿に同情する気は無いがな。



「ウィー君、手伝って、星が言ってるの! 始まる(・・・)って!!」



 電波だ。

 濃度ユンユンな電波だ。

 意味が判らない。

 その前の意味不明(ゴリラ)発言は更にどうでも良い。

 改めて判った。

 アレの考えている事を理解しようとするのは深淵を覗きこむのと一緒だ。

 理解しようとしちゃいけない。

 電波に感染するのは趣味じゃない。


 なので、実際的に対応するとしよう。


 ベルベット坊やを見る。

 まだクリスティアナ嬢の隣で寝入っている。

 クリスティアナ嬢と目が合う。


 何かが判る。

 1つ頷く。

 さっきに泣いて謝る様な心根になってた子供だ。

 今更に、この場にアレな感じの雰囲気で来る様な手合いと連絡する事もないだろう。


 となれば侵入か何かか。

 ともあれ、不審者だ。



「ラッヒェル・ランメルツ、君は何の権能があってこの場に居る? 私の名を妙に省略する? そしてアーネット嬢を罵れる?」



「ウィー君! もうそんな場合じゃないの!!」



 怒鳴られた。

 電波は理解が出来ない。

 とは言え、舐められる訳にもいかない。

 この場に居るのが準身内とは言え、否、準身内だからこそか。

 俺にだって対面がある。

 電波なんぞに良い様に言われたくない。



「黙れ痴れ者」



 殺気を目と声とに入れる。



「さっさと去れ。いかなる理由があって学園に来たのかは知らないが、その目的を果たしに行け。それともう我慢が出来ん。君の不作法にはほとほと呆れた。正式にゼキム家からランメルツ家へと抗議が行くから覚悟せよ」



 身分に関しては緩いのがトールデェ王国なんで、不作法が批判される事はそう多くは無い。

 なので過度な礼節知らずに対して抗議が行われる場合でも不敬罪みたいな刑罰は無い。

 だが公式に刑罰は無くとも、舐められるのを良しとしない貴族としては報復をしない訳には行かない。

 故に抗議。

 正式に貴族家から派遣される抗議は、相手とその周囲に怒りを持っている事を示す事となる。


 その結果は、抗議を受けた家の村八分となる。


 緩いとはいえ身分のある社会で、抗議をしてきた貴族家が余程のアレ(・・)でない限り、抗議を受ける家は何がしの問題がある家と見られるのだ。

 であれば、誰も関わり合いたくなくなるというのが人情だろう。

 それに加えて、正式な抗議をする場合には貴族社会の中で回状を回すのだ。

 此方が、ラッヒェルの実家にとっては厳しいだろう。

 商家にとって貴族は大口顧客だ。

 そのお客様に、身内の悪評が伝われば、よっぽどの関係を築いていた相手以外との商売は成り立たなくなるだろうから。


 正直な話として、そこまで話が大きくなりそうな事は好みじゃない。

 だから今までは口頭での注意だけにしていた。

 だが、もう認めない。



「どうしてそんな!?」



「警告は何度もした。それを受け入れなかったのは君だ」



 とは言え、ここで泣いて謝るなりするなら受け入れる。

 二度は無いという事で流したい。


 俺、女性には弱いんだよな。

 内心でため息がでそうになるけど、それを顔には出さない。

 睨む。


 睨んだ。

 睨んだら、反応が斜め上だった。



「ウィー君が悪系に戻った!!」



 意味が判らん。



「コレってゴリラが来たから恋パラがリセットされたの!? ならミニゲームよっ!!」



 ラッヒェル、意味不明発言を繰り返した挙句に電波の赴くままに決闘(ケンカ)を売りました。

 アーネットに。

 意味が判らん。

 意味の分からないラッヒェルの行動をアーネットは素直に受け入れた。



「決闘なら、売られた私が内容を決めて良いのよね?」



 笑顔。

 怖い笑顔で笑うと、アーネットはハンカチを取りだした。



「でも女性同士で武器を取ってと言うのは、少し、ハシタナイワ。だから踊り(戦い)ましょう」



 1枚のハンカチ、その端と端とを掴んで交互に叩き合うという淑女決闘(ハンカチ・デュエル)

 淑女何て言われるのは、掴んだハンカチを手放せば負けというルールの為。

 武器も禁止。

 腰を入れての打撃も距離が近すぎて難しい。

 それが淑女決闘(レディ・デュエル)


 ほぼ平手の叩き合いで相手の心を折る事が目的。

 しかも平手と言う関係上、ほぼノーガードで顔を叩き合うという事になるという。

 ある意味で男の決闘よりも酷いかもしれない。

 それが淑女決闘ビンタ・デュエル



「どんな競争(ミニゲーム)だって、負けないんだから」



決闘(ミニゲーム)、本気で相手をしてあげる」



 ラッヒェルは多分、誤解している。

 雰囲気が戦うって感じじゃない。

 鬼気としたものがない。

 それをアーネットは判ってて訂正してやらない。


 女性って怖いよね。



「では、見届け人は私が」



 艶やかに笑うクリスティアナ嬢。

 それから俺に言われた。

 ベルベット坊やと一緒に離れろと。



「女性同士の戦いは、男性に見せれるものではありませんから」



 問答無用に追い出された。

 見てて楽しいモノでも無さそうなので、言う事に従う。

 女性、怖い時は本当に怖いからね。











「ねぇ貴方、私は悪役よ? 無慈悲で非道、血も涙もない尊大で平民を足蹴にする様な冷酷な貴族の令嬢 ―― そう言ったのは貴方よ? そんな悪逆非道な貴族令嬢が慈悲の心を見せるとでも?」











 鍛錬場から下りて公園に行く。

 ベルベット坊やを適当な芝生の上に寝かせる。

 良く寝ている。

 俺も眠りた。

 電波の事なんて棄てて忘れて眠りたい。

 怖い笑顔を見せたクリスティアナ嬢の事も。

 凄く良い笑顔を見せてたアーネットの事も。



「やぁ、ゼキム伯爵家のウィルビア」



 名を呼ばれた。

 見る。

 いけすかない笑顔を浮かべた奴が居る。

 名前だけは知ってるし、顔も判っているが、会話をしたい相手では無い。

 見なかったことにしたい。

 割と真面目に。



「何の用か、フォード男爵家のアーヴィー」



 唯一、残っているラッヒェルの取り巻き。

 細身な顔と身体をした奴。

 オールバックに髪を固めて眼鏡を付けた、如何にも(・・・・)な知性系な雰囲気を漂わせている奴だ。

 キレ者との噂は聞いたことがある。

 ラッヒェル曰く、軍政の鬼才さんとやらだ。

 所で、我が学園は主が文官教育機関なんだが、なんでコイツは軍政なんだろうか。

 しかも電波(ラッヒェル)話だと軍略もとか言ってたな。

 無茶苦茶だ。

 電波だから当然か。

 この程度の奴に指示されたくないぞ。

 せめてゲルハルド記念大学の奴にしてくれ。

 脳筋パワー・オブ・ジャスティスでも良いから。



「そう警戒しなくても良い。私は何もしないよ」



 気に入らない。

 何というか口調が、イントネーションが頭が良いと自認する(バカ)のそれだ。

 俺が理解できない理由で、自分が上位者だと思う馬鹿とも言う。


 要するに、生理的に受け付けないのだ。



出来ない(・・・・)の間違いだな」



 友好的に接する義務も義理も無い。



「はっはっはっ、嫌われたものだな。だが害意が無いのは本当だ」



「好かれると思うのか? だとすれば余程に物事が見えぬと見える」



「………君には礼儀と言うのもが無いのか? やはり剣を振る野蛮人は知性が無いな」



 皮肉を言って来るけど、この国で武を馬鹿にするのって凄いぞ。

 その蛮勇だけは評価してやる。

 蛮勇だけな。



「剣も振るえぬ貧弱な者の怨嗟など心地良いと返すべきかな?」



「知の無い武に意味などないっ!!」



他者()に敬意を払えぬ知の言う事など聞く馬鹿は居ないわ」



「愚かな武辺者めっ!! 我ら知に使われる者の分際でっ!?」



「意味が判らんね。武力を使うのは知性。それは確かにその通りだ。だが何故、俺が貴様如きの指図を受ける? たかが男爵家の人間が伯爵家の人間に? もはや国に仕えども出世など望めぬ者に?」



 ほぼ家からも縁を切られるだろう。

 やらかした事が大きすぎて長男であっても家は継げないだろう。

 だから、憐れみの目で見てやる。


 この世界に生まれてはや10と余年、おれも貴族的な性格の悪い態度が出来るに様になった。

 これは進歩なのか退化なのか。



「貴様っ!!!!」



 軽く煽るだけでこの体たらく。

 コレがかつては学園で知性派の筆頭な位置に居たってのは、ある意味で学園の黒歴史だ。

 とは言え、激高しても殴り掛かってこない辺りには、まだ知性派の名残がある。

 勝てない喧嘩を選ばないだけの余裕が。


 何度も深呼吸して、ズレても無い眼鏡を調整してから話し掛けて来る。

 メンタル的にはタフだ。



「まぁいい。今日は、今日は単純に感謝を言いに来ただけだ」



「感謝?」



「そうだ。お前のお蔭で俺は彼女を独占する事が出来た。言い寄る彼女を貴様は安い計算であしらって気を引こうとした。だがその策は失敗した」



「お、おう」



「もう彼女は私のモノだ。私だけのモノだ。その感謝だっ!!」



 電波(ラッヒェル)を心底愛したのは、同じ電波(キチガイ)でした。

 めでたしめでたし。

 この馬鹿の祭典から抜け出せたベルベット坊やは、実に幸せだ。

 ベストの汚れは、被害者でもあったクリスティアナ嬢の擁護があれば漂泊できるでしょ。

 多分。



「今後、彼女は俺と共にある。俺が守る。もう二度と貴様らに話しかける事は無い」



「………有難う?」











「あれ、すいません、僕、寝てました?」



「ああ。だが気にするな。人間、疲れる時もある」



 世の中、見ないで済む事が出来るならハッピーって事が多い気がする。

 現実と戦う必要はあるけど、逃げても良い現実ってのもあるよね。





陰険眼鏡が壊れました。

煽り耐性が低すぎるのか、そもそも、エリート意識の高い石北会計さんが現実に打ちのめされてなのか。

まぁ、可愛そう(だが慈悲は無い

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