馬鹿なことほど夢中になるのが男子というものだろ?
大昔の記憶がふいに蘇ったので^^;
授業が終わり掃除の時間。
普通、俺たち男子はサボったりやる気無くダラダラとして女子に叱られたりするのが普通の中学での光景だが、この中学の二年の廊下掃除は違う。
真剣にテキパキとそれこそ各クラスが競う様に掃除をする。
それどころか違う場所の担当の人間すら手伝うことすらある。
ピカピカの床は磨かれ過ぎて、滑りが良くなり過ぎてかえって危険なほどだ。
……だが、それがいい。
掃除が終わる。
普段は大人しい奴も、ヤンキー入ってる奴も、皆の目が「戦う男の目」に変わる。
掃除道具はそれぞれの手に握られたまま。
それぞれのクラスごとに参加メンバーの確認が進む。
4クラス分の廊下。
その中央に2クラスの男子が向かい合う。
俺もメンバー、帰宅部組なのでレギュラーメンバーの一人だ。
残りの2クラスの男子の中から一人が選ばれ、向かい合う両者の中間に立つ、真面目なメガネくん、2-Bのクラス委員だな、なにかとやらされることが多いだけあって慣れている。
塾通いで途中で抜けることも多いけどな。
真面目だが話しの分からない奴では無いし、あれで結構お笑い好きでテレビも良く見てる。
「いい成績取ってれば、テレビどれだけ見ても怒られないんだよ」とは本人の弁。
勉強自体も嫌いじゃないらしいが、成績がいいことのメリットを理解して最大限に有効活用している。
「今日はこの間は風邪で居なかった山下が居るからな、俺たちの勝ちだ!」
「ふん、連敗記録をせいぜい伸ばすんだな、ギネス申請でもしてやろうか!」
それぞれのクラスの中心格の二人、近藤と大江が睨み合っている。
別に嫌いあってるわけではなく、同じ部活で普段は仲が良くてしょっちゅうつるんでいるんだが、クラス対抗となるとライバルと化す。
青春だなあ、などと俺としては少し精神的距離感を感じる。
「「フンっ!」」
「えー、では2-Aと2-Cの試合を始めます」
審判の声にそれぞれのクラスの人間が廊下に散っていく。
それぞれの準備が整ったのを確認した審判がパック代わりの雑巾を残った二人の中間に落とす。
激しくぶつかる箒と箒。
肩や肘もガシガシと当たる。
このホッケー以外の時にやられたら「イジメ?」と言いたくなるんだが、試合中は気にならない。
むしろこっちからもガシガシと行く。
競り合いに勝った大柄な男子、あれは高橋か……が箒で雑巾を弾く。
それを追って皆が廊下を「滑る」。
走るのはこのゲームの場合反則だ。
この為に一所懸命廊下を「良く滑る」様に掃除をしたのだ。
皆の努力に水を差す行為はNGというものだ。
そんな奴には足をかけたりするが、かけられた方が謝っている。
足を引っ掛ける行為よりも「反則」の方が悪いことだからだ。
そう、俺らは廊下を利用したホッケーを楽しんでいるのだ。
部活や帰宅の前の掃除後のほんのわずかな時間を使い、見事なまでの団結を見せての行動だ。
女子のほとんどは「馬鹿なことを」という目で見ているが、廊下を通行する必要のある人間に対しては自発的にゲームを中断して対応するなどしているため、問題にまではなっていない。
もともと、俺は女子には縁がないしな……。
教師も「気をつけろよ!」とは言うものの、叱ったり禁止したりはない。
ウチの担任の爺さん先生じゃ怒るに怒れないってのもあるかもしれんが……。
いや、確かにちょっとばかし危ないかもしれないが、目的のためにしっかりと掃除をするし、クラスの男子のまとまりが良くなっているし、「ホッケーの際に不利だから」と上履きの踵を踏み潰している生徒が居なくなったなどと意外な点でも好要素がある。
上履きの踵を踏み潰して履くのは一応校則違反なのだが、チョイ悪気取りでそういう格好をする奴が一年はともかく二年辺りからは増えてくるものなのだ。
朝礼やらなんやらで注意はされているんだが、俺らの年頃の連中がそういう「注意」を素直に聞くなんてことはます無いだろ?
下手に「いい子ぶり」認定なんてされるとイジメまではいかなくてもハブられたりする危険もあるし。
自分の中での「適度」に崩した格好をするのが普通。
成績が良ければ「ぶってる」のではないからかなんか知らんが平気なんだけどな。
「加藤!」
「抜かせるな!」
「こっち、いったんバックパス!」
「2-B、もう少しマジに掃除しろよ! 滑り悪ぃぞ!」
「うおぅっと、つまづいた!」
「池山、いけっ!」
「シュート!」
「ナイスキーパー、山下!」
「こっちこっち」
「おし、反撃だ!」
パックが雑巾であるため、本物のホッケーの様に壁面で跳ね返って来ないし、打ち合う内に絞った形で転がり易かった雑巾が開いて思った様に打ち飛ばせなくなるが、それもこの廊下ホッケーの味だ。
時々中断してバケツでゆすいできつく絞りなおしたりしてるがな?
攻守が目まぐるしく入れ替わり、疲れを見せる人間も居るが口元は笑っている。
俺も楽しい。
学校で一番楽しい時間帯だ。
学校に来る理由の半分近くを占めているかもしれない。
「おしっっ! いける」
「ちょ、タンマタンマ、女子通るって!」
「中断、中断!」
「くそ、いいトコだったのに!」
「顰蹙買ったらホッケー自体出来なくなるんだからな! あ、佐々木さん部活?」
「ちょ、待って、ウチのメンバー引き摺ってくなって!」
「あああ、高橋、完全に尻に敷かれてるなぁ」
「マネージャーが最強の柔道部って……」
「悪い! 俺、抜ける!」
「あ、塾か、またな!」
よくセーブされているというか、この「楽しみ」を続けていくための暗黙の了解。
参加者以外には極力迷惑をかけない、というのが徹底されている。
特に女子は敵に回すと男子以上の結束を見せる。
例えその場では一人相手であっても、後で集団で来るのだ。
二年生ともなればその辺は学習済みだ。
自分が痛い思いをしたか、他人の哀れな姿を見てかの違いはあるが。
俺か?
敵対されるほど女子に関わってないし、認識もされてないんでもちろん後者だ。
試合が再開され、2-Aの小林のシュートが決まり試合終了。
限られた時間でプレイするため、どちらかが得点を入れた時点で試合終了。
次のゲームに移る。
2-B対2-D。
フルメンバーだと2-Bの方が強いが、部活に所属する男子が多い2-Bは滅多にベストメンバーにならないため、普段は割と拮抗している。
狭い廊下、有りものの掃除道具を使って、ということもあって、運動部連中とそれ以外でさほど差は出ない。
まあ、狭さのせいで体格による有利不利ってのは大きいけどな。
俺みたいなチビはチビなりに乱戦潜りこんで雑巾かき出したりとか活躍のしようはある。
体を動かすのが苦手なデブもキーパーとしては有能だ。
山下とか体格で柔道部に誘われて、三日で辞めた奴でも活躍出来る。
2-B対2-Dは2-Dの勝利。
卓球部の海老原がゴールを決めた。
三試合目ともなると残る面子が大幅に減るため、クラス単位のチーム分けでなく残った人数で適当に割ることになる。
普段、話したことも無い奴と意外と話しが合ったりとか、一年の時一緒のクラスだったりした奴と近況を話したりとか、これもホッケーの恩恵だな。
一度もクラス一緒になったこと無い俺と同じ帰宅部の太田と友だちになったのもそんな経緯だ。
ゲーム開始のゴチャゴチャからはじき出された雑巾をかっさらいゴールへ向かう。
西久保手足長過ぎ、邪魔だって!
かわしてゴール前でキーパーに背を向けバックパス。
ほらな、やっぱり居た。
滑ってきた勢いのまま、太田が大きく振りかぶってシュート。
ゴール!
超エキサイティン!
半分くらいフィクションです
あとアメフトモドキとかもしてましたwwwwww
学ランのズボンの尻が破れたりとか、コケて保健室送りになったりとか、今の時代だとモンペ案件ですねぇ……
妙な団結と絶妙の自主規制は本当にありました




