二
「別にいいけど今まで剣術で俺に勝ったことないだろ」
「だからだ。今更違うことで勝ったって認めてくれないと思うんだ」
「そりゃあそうだな。じゃあ三本勝負でいこう」
叔父の書斎に二人で向かう。ドアの前にサンを残すと部屋に入った。
「来たな・・傷が証拠か。結果は?」
「・・・負けました」
「そうか。自分の部屋に戻れ」
サンと別れ部屋に戻りベッドに横たわった。覚悟だけが自分を強くするとは限らないと分かっていても悔しかった。そのまま疲れて眠った。
家政婦が来る前に目が覚めた。時計を見ると昼の二時、昼食の時間はとうに過ぎているが気を使って起こさなかったのか起きなかったのかは分からないがお腹が空いてしかたがない。何か食べ物を求めて厨房へと向かった。
「すみません」
中に入ると何をするわけでもなさそうに雑談をしている。この時間は洗い物をしている頃だと思っていたのに。
「これは王子、息子が世話になっております。寝ていたよう・・その傷はどうしたんですか?」
「ああ、気にしないでいいよ。それよりお腹が空いて・・何か作ってもらってもいいかな」
顔を見合わせて何やら不思議そうにしている。
「ええ、それはいいのですが・・今日は皆様昼食はいらないとの話でしたのでてっきり王子も・・」
慣れた手つきで料理の準備を始めた。
「聞いてないです・・」
「料理人が少し聞き過ぎました・・・御無礼をお許しください」
「いえいえ。一人前でお願いします」
「かしこまりました」
出来上がったパスタをその場で食べた。
「このような所でよろしいのですか?」
「いつもの部屋が閉まってて・・自分の部屋までもっていくと料理長の美味しい料理が冷めちゃうし」
「勿体ないお言葉、ありがとうございます」
「こちらこそ」
食べているとサンが後ろから来た。
「父さんお腹好いた・・よっ」
隣の椅子に座る。
「こんな所でどうしたよ」
「こら言葉に気を付けなさい」
「大丈夫ですよ。さっきまで寝てて・・お腹空いたから」
そうして話しているとすでに一時間経っていた。
「お邪魔しました。サン行こう」
「はいよー、じゃあ行ってくる」
「お気をつけて」
外で遊んでいると閉まっていた部屋から人が出てくる姿が窓から見えた。そこには父と叔父がいた。すぐに自分のことだと理解した。
「ごめん、ちょっと」
すぐに叔父の元へと駆け寄る。
「父さん!」
「丁度よかった。部屋で少し話があるんだ。来なさい」
自分の部屋に入り二人でベッドに腰掛けた。
「父さん・・もしかして」
「安心しなさい。これからもここでは住める」
いつものように頭を優しく撫でた。母がすでに他界してから父は以前よりも優しさを行動であらわすようになった。
今まで通り父と暮らせること、サンと遊べることがただ嬉しかった。それから六年の月日が経った。