一
「坊ちゃま、朝ですよ。ご飯の用意が出来ていますよ」
「・・・んーもうすこし」
家政婦はニヤリと笑った。
「強い男は朝早く起き、よく食べる者です」
ばさりと布団から飛び上がった。
「服を」
「ここにございます」
頷くと服を取り着替えた。
朝食は家族みんなで食べる。しかしいつも自分が遅れてくるので待たせてしまっている。
「おはようございます」
「小僧またか」
「おはよう。さぁ座りなさい」
二人の王は相反する挨拶をした。手を合わせ食材に感謝し食べ始めた。
「父さん、僕今日こそサンに勝つよ!」
「サンとは料理長の息子だったか。がんばってきなさい」
叔父がピタリと手を止めた。
「王の息子として負け試合を積むようではいかん。兄上のようになるぞ」
「父さんを馬鹿にするな!」
「ほう、なら今日こそ勝ってみろ。出来なければ小僧から王位継承権を剥奪する」
何のことだか意味が分からなかったが父さんが立ち上がり叔父と何か言い合いをしている姿で大事なのは理解した。
「それを決めるのはお前一人ではない!考え直せ」
「名前だけの王が何を言っている。私が建て直さねばこの国はすでに無くなっていた!未熟な王、兄上のせいであるぞ!」
「王子として名を挙げれば息子に名前を与え王と認めると、そう約束したではないか!早すぎる!まだ10にも満たない子だ」
「素質ありと判断する機会は決めていない、数もだ」
父は絞り出したような笑みで頭を撫でた。
「私も見届けよう」
「見苦しいぞ兄上、子供同士なら嘘もあるまいて」
「・・・終わったら叔父さんに報告しに行きなさい」
「・・・はい」
庭に向かうとサンが座って待っていた。石を上に投げ取ってまた投げる、長く待たせてしまったらしい。少し早歩きで近づくと笑顔でこちらを見た。
「よっ、遅かったな王子」
石を力強くキャッチした。
「サン、ちょっと話しない?」
となりに座り一連の流れを話した。
「僕が勝たないと父さんが困るみたいなんだ・・・」
「んー、今まで俺が全勝したからって言ったようには見えないしなぁ・・」
チラリと顔を見る。うつむいて表情をうかがっている様子はない。
「でもさ、どっかでこれ見てるかもしんないし、嘘の報告なんてすぐにばれるもんだよ」
「僕もそうだと思う・・でもどうしたらいいか分かんなくて」
また石を拾い投げた。
立ち上がり、小枝を日本拾うとサンに一本渡した。
「・・戦おう」