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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

仲間

作者: ペッパー魚

 寂しい。寂しい。皆には家族がいるのに、私にはいない。友達も、恋人も、何も無い。家に帰っても誰もいない。許せない。

 学校は楽しくない。誰とも話さない。誰も私の仲間じゃない。たまに話しかけてくる奴もいたけど、私はそいつの言葉を聞いていたから。「あの子、いつも一人で可哀想だから話しかけてあげようよ。」だとか。可哀想って何だよ?どうして上から見下して来るんだよ?そんな奴等とまともに話せるわけが無いじゃないか。

「あいつ、せっかく話しかけてあげたのに生意気じゃない?」

「ちょっとイジワルしちゃう?」

 どうでもいい。私が自分の思い通りの返事をしないからって、馬鹿みたい。

 放課後トイレに来るようにって手紙を渡されたから、先生に報告してから学校を出た。

 馬鹿ばかり。馬鹿ばかりでつまらない。家に帰っても何も無い。家に帰らなくても誰も、何も言わない。

 学校から家に帰るのを下校というなら、私は毎日下校をしていないことになる。家とは反対方向の公園に、何故か毎日いるオジサンに会っている。オジサンは道場主だとか言っているけど、多分嘘だと思う。リストラされたサラリーマンが小学生くらいなら騙せると思って法螺を吹いてるのだろう。可哀想だから騙されたふりをしてあげてる。

「君、今日もここへ来たのかい。もしかして、わしの道場に入りたいとか?」

「違います。ただの暇つぶしです。」

「そうか。それは残念だなぁ。」

 本当に残念そうに言う。でも、私が道場を見せて、とか言ったら困るんでしょう?

「道場、中々人が集まらなくてね。真面目に鍛錬しているのは息子くらいだよ。あぁ、わしの息子はちょうど君くらいの年でねぇ。そのくせちょっとわしのお爺さんみたいなことを言ってるから少し困ってるんだよ。」

 ……、もしかするとオジサンが道場主だというのは本当かもしれない。寂れた道場なら似合いそうな風格してるし。

「その子、名前は?」

 訊くと、オジサンは少し困ったような顔をした。

「家の決まりでねぇ、言えないんだよ。ごめんね。あんな決まり、わしは気にしてないんだがあの子がね。」

「結構変な子供なんですね。」

「はは。耳が痛いよ。この前保護者アンケートに、子供の友人の名前を書く欄があってね。あの子は「友人はいない。出来ないものはしょうがない。」だなんて言うものだから少し困ってしまってね。人は弱いから人と結びつくものだと聞いたことがあるけど、強すぎるとああなってしまうのかもしれないねぇ。」

 友達がいない、か。けど、家族はいる。

「その子はオジサンみたいないいお父さんがいるから、友達なんていらないのかもしれませんね。」

 そう言うと、「そんな感じじゃないんだけどね。」と言いながら照れてるようだった。その後も少しだけおしゃべりして、寂しい家に帰った。

 そんな、毎日だった。



 ある日、私は毒入りのおにぎりを持って行った。オジサンの言うことが本当なら、オジサンと奥さんが死ねば、その子も私の仲間になると思った。準備は十分。昨日、「オジサンの奥さんにも会いたい。」と言ったら、「明日連れて来るよ。自慢の妻なんだ。」と誇らしげに言っていた。その顔を見るまでは、純粋に会いたいという気持ちだったような気がするけど、やっぱり殺す為に会いたいと言った気がする。

 公園の少し前、線路の向かいにオジサンが立ってて、オジサンの奥さんと仲良く手を繋いでいて、居ても立ってもいられなくて、カンカンカン、電車の音も気にならなくて、走って、それでもオジサンは気付いてくれなくて、あいつが気付いて、私は突き飛ばされて、やっとオジサンはこっちに気付いて、あいつに駆け寄って、赤が弾けた。

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