表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

5* 説明してくれ!

 目を開くとそこにあったのは、見覚えのない天井だった。

 くそ、デジャビュ…じゃない! なんだ何があった!

 …状況の整理をしよう。


 ①俺屋上から落ちる

 ②起きたら白い部屋

 ③馬鹿がボタン押す→部屋が光る

 ④今


 …全然納得できない。というか①から②がそもそも意味不明なのに、④が納得できるはずがない。

 起き上がると、そこは狭くて白い…入り口の無い部屋ではなく、教会のような場所だった。

 見上げたそこには逆十字架のようなモチーフが描かれた天井画、つるされた逆十字。

 とりあえず、あの白い部屋のように出入り口の無いと言うことはなさそうだ。


「あ、日高君おはよう!」


 今度は察して振り返ると、やはりそこには茶色のツインテールが座っていた。

 どうでもいいが、なぜいつも背後を取る。

 なんていうか多分こいつがもろもろの元凶。もう何も言わないけど…。


「おまえ…脊髄反射じゃなくて、脳に情報を持って行けるようになろうな?」

「…どういう事?」


 皮肉は通じないよな、当然だよな、それがお前だよな、友達になりたくないのになんでどんどんお前が分かってくるんだよ…。

 とりあえず、額に手を当てて深くため息を吐く。

 俺、こいつといると早く老けそうだ。


「ここ、どこだか分かるか?」


 特に期待をしないで疑問を口に出す。

 普段は黙って色々考える方が性に合ってるのに、こいつといるとどうも口がゆるい。

 これもこの女の力か。恐ろしい。


「んとね、ココは聖シュヴィント教会だって」

「へー、聖シュヴィントね…は?」


 思わずスルーしかけて、持ち上げかけた腰を再び落とす。

 何も言わずに目を見開くと、教祖女は自分の後ろにあった…教会の一番前にあるデカい机の後ろを指す。つまり俺からはかなりの死角。

 立ち上がり、机の陰から顔を出して、一瞬のうちに自分が凍りついた幻を見た。


 そこには、俺に期待の目を向けるでっぷり太ったカエルのような司祭風の男と、シスター、果てはRPGとかで出てくる一般市民(モブ)風の人々が…広い教会にぎっしりいた。

 俺が完全に立ち上がった瞬間、赤だの青だの緑だの白だのなカラフルな髪の人々がわっと声を上げる。え、なにこいつらコスプレ集団?

 それを、机を挟んで呆然とみる俺。と楽しそうな教祖女改め馬鹿女。


「あの人たちが教えてくれたんだよ!」

「あいつらが…?」

「ギシュリアバアオガガガシェテルファァァ」


 俺が口を開いた瞬間、司祭風のカエル男が、意味不明な言語で俺にひざまずき、腕を組む。

 あ、あれだ、物を考える人がやる、両腕を組む奴。アレを、膝立ちでやってる。俺に。


「「「ヴァリョグシュバアァルファァァァ」」」


 そして声をそろえてそれに倣い、同じポーズをとるシスター&一般市民達。俺に。

 まてまて、落ち着け、俺。

 いくら俺でも、初対面で、なんか感激されてるっぽくて、涙流してる人までいて…

 そこで空気読まないのは、あれだよ? 日本で育ってきた俺としてはね、もう、その…

 あ、だめだ。俺すごいパニックになってる。白い部屋とは比べ物にならない。

 思考がぐちゃぐちゃだ。とりあえず思いっきり息を吸って…


「アウトーーーォォォォォ!!」


 だめだ、深呼吸は失敗だ。思いっきり叫んでしまった。

 もう馬鹿女と知り合ってから、こんな事ばっかりだ。めったに叫ばなかった俺はどこに行った…。

 いやもうこの際だから言うけど!?


「言語がキモい! なんだそのモンスターみたいな言葉!? ここはどこだ!? んでなんで教祖女は普通にその言葉分かるの!? 誰か教えてくれ、俺がおかしいのか!?」


 ああ、ダメだ、なんか分からないけど凄く感激してる人たちを思いっきり怒鳴りつけてしまった。

 だって俺、まだ高校二年だぞ? 16歳、ガキだ。

 それがこんな予期せぬ出来事に順応できるか! この馬鹿がおかしいんだ!


「日高君、ひどい! ちづは千鶴だよ! せめてちゃんと名前で呼んでよ」

「突っ込みどころはそこじゃないッ! ああでも呼ぶ呼ぶ、呼ぶから夜坂! 説明してくれ!」


 俺の精神は、その時ほとんど限界だった。



 俺が屈したことに満足したのか、満面の笑みを浮かべた馬k…夜坂は、パニックの俺の肩を背伸びして掴んで深呼吸させ、机を挟んだ向こうで、急に叫んだ俺をきょとんと見つめる人たちに片手を上げた。


「今のは、ちづ達の世界の挨拶だよ! 心配しなくていいよ!」

「「「バリィグシ! アウトーォォォォォォ!!」」」


 おまえどこでも教祖するんだな!!

 …もう、もうわかった、俺がおかしいんだ。あの白い部屋はきっと精神病棟だ。

 そこにこの夜坂と言う幻影を作りだし、謎な妄想をしているんだ。

 …ああ、頭が痛い。もう一度寝て、起きたら自分の部屋ならいいのに。

 もうどこから夢でもいいから、覚めてほしい…切実に。


 だが俺の願いは聞き届けられることは無く、にこにこと笑う馬k…夜坂と、喜ぶ謎言語の人々はワイワイと俺の前で嬉しそうに騒ぐのだった。

 誰か…もう、夜坂じゃ無ければあの子分ABでもいい…誰か助けてくれ…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ