表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

短編もの

呪詛は転じて

掲載日:2012/03/16

シリアス風味に見せかけたほのぼのかと思いきや、

コメディですらない、ただし超展開、下ネタなカオスっぷり。

言ってる作者ですらよくわからない。

「末代まで呪ってやる」


決して楽しい台詞ではないだろうに、

そう告げられた勇者はくつくつくつくつ、

それはそれは邪悪な笑みを。


地面に這いつくばりながら、

せいぜいそんな恨み言しか吐けなかったわらわは、

そんな反応が返ってくるなんぞ思っている訳が無く。


思わず放心するわらわを見て、

勇者は無表情で呟いた。


「じゃあ俺で終わりってこった」

「……何故じゃ?」


急に湧き上がる勇者への興味。

さっきまで命を賭けて戦っていた相手だと言うのに、

わらわは呑気にも尋ねた。

純粋な疑問を抑えきれなかったのである。


わらわはもう抵抗も命乞いする気もなかった。

何百年も生きてるとなあ、自然と諦めが身に付くもんじゃ。

それにもうこれだけ生きれば未練もないんでな。


だが勇者もトドメを刺す様子はない。

ならばここは会話を交わしても良かろう。


「お前は確か王族の末裔だったじゃろう?

 それに顔も良い、魔力も素晴らしい、性格も悪くないだろう。

 ならば女子に困る事などなかろうに」

「……敵をそんな素直に褒めるか、普通。

 あと、俺は性格悪いぞ」

「単に語録が少ないだけじゃ、年齢の割に阿呆なのでのう。

 それにな、性の腐った輩に精霊は懐かん」


ふわふわ、勇者の周りを飛び交うそれを見て指摘する。

その懐きようと言ったら、異様なほど。

素質もあるかもしれんが普段から可愛がっている証拠だ。

弱き者を労れる者が悪い奴なわけがなかろう。


「……あー、語ってもいいか」

「おお、頼む」


わらわが是を示したところ、

男は何やら呪文を唱え始まる。

そして回復するわらわの体。

情けのある奴じゃのお、でもなあ。


「……わらわだけ回復させて危険だと思わんのか、ほれ」


戻ってきた体力のおかげで立ち上がる事ができた。

お返しという訳ではないが、わらわも奴に回復魔法を。

まあわらわはもう殺し合いはごめんじゃがな。


「……あんたも大概変わってるだろ。

 それはともかくな、俺は国に帰れば死ぬんだよ」

「何か呪いでもかかっておるのか?」

「違う違う、親父に殺されんだよ」


思わず瞠目する。父親、といえば国王か?

何故国を救った英雄に対し、そんな仕打ちを行うのじゃ。


「俺は勇者だなんて思われた事がない。

 せいぜい化物ってとこだろう。

 表面上以外は魔物と大差ない扱いなんでな」

「強すぎる故の偏見か」

「そうだな、ガキん時から兵器を見る目だ。

 だから魔王さえ倒してしまえば、

 後は役立たずな危険人物だから処分しちまえってこった」


人間は惨い事をするのお。

魔族は粗暴たる者が多いが、

決して血縁や同族を裏切るような真似はせん。

他種族と争うのも命がかかっている時だけじゃ。


だが人間は自分の欲がままに我らをいたぶる。

勇者の話を聞いて、いっそう嫌悪が増す。

それと同時に勇者には賞賛の気持ちが生まれていた。


恵まれた立場、優れた力、賜った美貌。

優遇された存在であり、多くの恩を得られるにも関わらず、

厭われ、怯えられ、命を狙われる。

それでも有り余る力を使って、復讐などは考えず、

敵であるわらわにも憐憫をかけるほど清い心を保つなど、

相当の聖人でなければ成し遂げられん。


「……そんな目で俺を見るなよ」

「ああ、すまん。

 おぬしを不快にさせるつもりはなくてのお」

「……たぶんさ、

 あんたの考えと違うと思うから言っとく。

 あんたの目、優しすぎて苦手だ。

 合わせるだけで……無性に縋りたくなる」


てっきり視線の中に安い同情を含んでしまって、

勇者はそれを感じ取り、嫌がった。

という考えじゃったんじゃが全くの的外れ。

ふうむ、まさか勇者に優しいと言われるとはのお。

さっきの勇者もこんな気持ちだったんじゃろうか。


「……おぬしは城に戻るのか?」

「どうせ面知られてるしな、どこにも逃げられねえよ。

 別にいいけどな、あんたみたいに強い奴と戦えて楽しかったし、

 最後にまともに話聞いてくれる相手がいて満足だ」


諦めたように笑う勇者。

わらわと話す間に吹っ切れたか。

最初の陰鬱さは欠片ほども見つけられなかった。

だがそれは同時に捨て置けぬ気持ちにもさせたのだ。


「……のお、勇者。

 おぬし、子供は好きか?」

「ん?なんだよ、急に。

 まあ好きだけどよ」

「じゃあ、おぬし、わらわの婿になってみんか?」


仰天か、困惑か、激怒か、

様々な反応を推し量るものの、勇者は違った。

真剣な眼差しをわらわへ向ける。


「……あんたも俺と同じで、

 なんか曰く付きなのか」

「聡い男はいいのお。

 そうじゃ、わらわは大きな問題がある。

 ……子供が作れんのじゃ」


わらわは当に成人しておるが、

夫どころか、恋人すらできたことがない。

それには相応の理由がある。さっぱりモテん訳ではないぞ!


「身籠もるまでは大丈夫なのじゃ。

 だが魔力が強すぎてのお、

 普通の種でできた胎児では流れてしまうんじゃ。

 ……推測じゃがな」


でも歴史上、母親の魔力が高すぎた故に、

死に絶えてしまった赤子は数千に昇る。

おそらく、わらわも当て嵌まるはずじゃ。

なんたって歴代の魔王の中でもずばぬけておる。

よって、どうあがいてもこの性質からは免れんだろう。


「それにわらわの場合、種族が魔兎だからのお。

 一回で3、4匹身籠もる。

 一度間違えれば多くの子供を殺す事になる、

 そうなると試そうなんて気にはさっぱりなれん。

 ……子供は欲しいんじゃがのお」

「……だから、俺が必要だと」


頭部に生えている白い耳を動かしつつ、経緯を話してみた。

ならば、すぐさま勇者はわらわの真意を掴む。

直接的にねだるのはちと恥ずかしいから助かるのお。


周囲の魔族では10人集まっても劣るが、

勇者の魔力はわらわと同等である。

だから勇者が父親であれば、おそらく子は無事じゃ。

子供が欲しいわらわにとっては唯一の希望の星。


「人間が魔王の婿なんぞなったらクーデター起こるんじゃねえの」

「魔族は弱肉強食じゃ。強ければ問題無い。

 反抗分子を作るのは勝手じゃが、弱ければ早々に叩き潰される。

 人間の世界より遙かに単純じゃろう」

「……俺が寝首を狩るとか」

「その時はその時じゃ、天命じゃったという事でお終いお終い」

「……あっさりしすぎだろ」

「わらわとの結婚自体には異論を唱えぬおぬしもな」


うーんと唸りながら、頬をかく勇者。

ほんのわずかじゃが耳が赤いのは見間違いでは無かろう。

こう照れられると、わらわもむずむずしてくる。甘酸っぱいのお。


「あんたがいいなら、いいけどよ……」

「むしろ大歓迎じゃぞ!なら早速祝宴じゃー!」

「……き、切り替え早えよ」


なんて呟きながら、対応する勇者も勇者であろう。

最初の笑みとは違う、優しげな微笑みを浮かべ、

勇者は名前を教えて欲しいと呟いた。




元々の相性も良かったんじゃろうが、

勇者……キースもよう頑張ってくれたからのお。

わらわは早々に身籠もった。


心配していた流産の傾向もなく、子はすくすく育っていった。

臨月となった今、3人はいるであろう腹は物凄い大きさである。

腹の中で毎日毎日元気に暴れ回っておる。

健やかなのは良い事だが、正直、元気すぎではないか……。


「こらこら、母親はもうちょっといたわらんか……」

「……辛いか?」

「そうじゃのお。

 好物の林檎でも食べれば少しは楽になるかもしれん」


もちろん冗談だが、無言でキースは林檎をむき始める。それも兎型に。

同族食らいではないか!と最初は思ったが、今はこれでないといかん。

むき終われば、口元へと運ばれる。それをわらわは遠慮無く食らう。


「やはり美味いのお」

「なら良かった」


髪をゆるゆると撫でられる。

これでもわらわはこやつより随分年上なんじゃがの。

不思議と悪い気はせんから止めんが。


続いて手は腹を優しくさする。

おなかの我が子を見つめるその目は慈愛に満ちていた。

それを見て、わらわはついつい口にしてしまう。


「のお、キース」

「なんだ、ベルティーナ」

「どうしても言いたかったんじゃ。

 怒らず聞いてくれ」

「……俺のおやつでも盗み食いしたのか?」


何故知っておるのじゃ!

って違う違う、それもあるがもっと大事な事じゃ。

むむむ、言うと決めたものの、なかなか勇気がいるのお。

キースは懐の広い男じゃが今度こそ怒られるかもしれん。

深呼吸で心を落ち着かせ、一気に吐き出した。


「わらわのお、キースが好きじゃ」


体を重ねた事で情が湧いたのかもしれんが、

それ以上にこの男の優しさに惹かれた。

自分から利益的な結婚を持ちかけておいて、

恋愛感情を抱くなど、とんだ間違えだとは気付いておる。

けれど、隠したまま過ごせるほど器用ではない。


「……知ってる」

「な、何故じゃ!」


さらっと衝撃の発言。

思わず訴えれば、キースは恥ずかしそうにそっぽ向いて。


「そりゃあ……なあ、散々言ってたし。

 ……そのー、夜に」

「なんじゃと……!」

「……無意識だったのか」


だってそんな事言われても覚えておらんもんはおらん!

すぐどろどろにされるんじゃ、お前の手でな。

最中の事なんぞ記憶にないわ!そんな事言わせるで無い!このすけべめ!


「自分ですらわからないって事は、

 俺が言ってるのもわかってないんだよなあ……」

「む?」

「あー……と、俺も、ベルティーナがす」

「あだだだだだだだだ!!」


キースの目が見開かれておるが、気にする余裕がなかった。

突如襲いかかってきた痛み。ぶわーっと脂汗。

感じた事のない激痛に呼吸すらうまくいかず。


「え、何?!どうした?!」

「う゛、生まれる……」

「ちょ、ま、待て待て待て!!」




と、まるで空気を読まない陣痛のおかげで、

わらわはキースの告白を聞けずじまいになってしもうた。

ぐぎぎ、くやしいのお!くやしいのお!

絶対にいつか言わせてやるのじゃ!


あと子供は無事に生まれたぞ。

その後もぽこっとできた、さすがわらわ獣だけあるな。

もちろんキースの愛もあってこそじゃが!


「……そういえば、確かにキースで言う通りじゃのお」


ふと、キースとのきっかけになった言葉を思い出す。

末代まで呪ってやると。それにキースは自分で終わりだと。

で、結局わらわは呪えずじまい。

当たり前じゃ、何が嬉しいて愛するわが子をいたぶらねばならん!

愛しい夫にとて嫌われる真似なんぞしとおないわ!


「まあ魔王らしい事をなんとなく言ってみただけじゃし、

 今更気にする事でもなかろう」


万が一浮気でもしたなら、その時は呪いじゃすまんがの!

くくくと黒い笑いをこぼすが、想像してちょっとへこんだ。

あ、あやつはそんなことするような男ではない!


「ベルティーナ、おやつできたぞー」

「おお、今行くからのー!」


落ち込んでいた気持ちは夫の声にさっぱり消え去る。

おお、今日はアップルパイみたいじゃの!良いにおいじゃ!

思わぬ大好物。足取りも軽くなる。

そしてわらわはうきうきと夫の元へ向かっていった。

別の魔王シナリオが鬱過ぎてアホなのが書きたくなってしまった。

キースさんは人間だけれども、その桁外れの強さのおかげで

魔族世界の方がべらぼー住みやすかったそうな。

子供はたぶん20人じゃきかないんじゃないかな!ハハッナカヨシダネ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは。 楽しく読ませていただきました。 [気になる点] 誤字の報告です。 「じゃあ俺で終わりってこった」→ 「じゃあ俺も終わりってこった」 では、ないでしょうか?
[一言] キースくんが幸せでよかったです。 勇者もいろいろ事情があるのね? 魔王と勇者が夫婦なんて最強の子供ができそうな・・・・
2013/01/06 00:54 退会済み
管理
[良い点]  むしゃくしゃしてやった。  後悔はしていない。でしょう......。  面白かったので。  後、  くやしいのお!くやしいのお!(リア充の勇者に対する嫉妬的な意味で) [一言]  本格…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ