帰り道
「おや」
低い、落ち着いた声がした。
夜の帳が落ちる最中の空のような、深い青色の法衣を着た人物が、ゆったりと近づいてくる。金の瞳の子どもは、何事も無かったかのようにその背後に従うように移動した。
「人除けの魔法をかけたつもりでしたが、効きませんでしたか」
その男性はサーディに構わず、もう人の気配のしない倒れたもののそばで片膝を着く。ほんの少し触れて、何か言葉のようなものを落とした。
触れた場所から、死体が音もなくさらさらと崩れる。風は強くないはずなのに、灰のようにどこかへ飛ばされて、きらきらと流れていった。
石畳に残った血糊は、鈍い金の光を帯びて地面に吸い込まれるように消えた。
「大人に言われませんでしたか? ここは危ない、と」
「近道、だから……」
フードの下で口元の笑みが深くなる。いたずらを見逃してくれるおじさんのような。自分も覚えがあると言う大人の顔。
「……あまり心配をかけるものではありませんよ。特にあなたのような子は」
諭すように言って、男性は立ち上がる。道を開けるように脇に避けた。
「そろそろ日が暮れます。早く帰ったほうがいいでしょう」
サーディは少し悩んで、足を踏み出した。引き返していたら門限に遅れてしまう。
男性の脇を横切る時に、ちらりと彼の後ろに控える子どもを見た。深く被られたフードに隠れて、その奥の金の瞳は見えない。
怖いとは思わなかった。
なんとなく後ろ髪を引かれる思いで通り過ぎる。
「あの……!」
通り過ぎて踏み込んだ路地で、サーディは一度振り返った。
「誰にも言わないから!」
それだけ言って、サーディは残りの道を駆け抜ける。返事はなかった。
その夜は、胸がざわついてなかなか眠れなかった。
金の瞳の子どものことばかりを考えていた。




