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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

水色の約束

作者: ひよこ豆

少年が言った


「君のことが大好きだ」


女性が言った


「あなたを愛しています」


紳士が言った


「月が綺麗ですね」


全て「愛」。

相手に愛を伝えるための言葉だ。


純粋に、複雑に__



「なぜ、俺の()は君に届かない?」


目を細めながら男が問う

小さくため息をつきながら眉を顰め目の前にいる少女に声をかけた


「貴方の愛…?それを愛だと思っているのなら幸せな頭ですね」


少女は表情一つ変えず男を見つめ返す

血に染まった服を身に纏った大人びた少女だ


「釣れないねぇ、でも俺はその細い指も、口調も可愛くて好きだなぁ」


男は少女の指にキスを落とすと目を細めて笑う


「…私を縛り付けているこの拘束、外して欲しいのだけど」

「え〜?嫌だよ、俺たちやっと出会えたんだよ」


少女は無表情を崩さず丁寧な言葉で言う

男はそんな圧を物ともせず、ヘラヘラとした口調で言う

男はふらふらと歩き出し少女の近くにあった水色に輝く液体の入った瓶を手に取り宝石を扱うように瓶を指先で転がす


「本当に気味が悪い…一体何がしたいの?」

「うーん、なんて言ったら良いかな…わかんないや!」


あはは、と笑いながら男は持っていた瓶を少女の手元に置く

瓶と少女の顔を交互に見た後思い出したように口を開く


「そうだ、元々君のだもんね。返してあげるよ」


はい、と小さく呟いた後置いた瓶をもう一度手に取り少女の顔の近くに瓶を差し出す


「は、?……いらない、こんなの、…もう私には使えないでしょう、!」


少女は動揺したような声を上げる

声を震わせる少女だったがその声を聞き男は恍惚とした笑みを浮かべる


「あぁ、そうだよねぇ。もう、使えないよねぇ、ごめんね?」


赤子をあやすようににこにこと少女の頭に手を置く

ざらざらとした触感が男の手に伝わるが少女はそれが気に入らない


「黙ってと言ってるでしょう…!私はもう使えないの!」







「その()()を!」


少女が声を荒げて叫んだ

"少女"__先ほどから喋っていた声の持ち主の目の前には子供の骸骨があった


少女は骸骨を眺める

所々ひび割れ、血に濡れた服、肉のない指

明らかに生気を感じない骸骨を見た少女は嗚咽の声を上げる


「あぁ、ごめんね…肉も再生できれば良かったんだけど…俺にはできなかったんだ…」


男は眉を顰め、目に涙を浮かべる

謝罪の言葉を呟くと大事そうに瓶を抱きしめ目を細める


「やめて、やめてよ…!私の好きだった…愛していた貴方はそんな人じゃなかった!お願いだから目を覚ましてよぉ!」


瓶__否、瓶に入った少女の魂を抱きしめ出した男に少女は震えた声で言う


「ごめんね、ごめんね…でも君が一生一緒にいようって言ったから、俺頑張ったんだよ?」


男は不気味な笑みを浮かべる


液体の水面が揺らぐ


「…ッ」


液体の水面がもう一度揺れた


少しの沈黙が流れた後、少女が口を開く


「…っ、それは!貴方を置いて逝った私も悪かった…でも、…!」


少女は言葉に詰まる


あの日、少年に約束(キズアト)だけを残し、少女は死んだ


「一生一緒」だと約束した2人の子供はバラバラに引き裂かれてしまった


「ねぇ、俺、服もちゃんと取っておいたよ?女の子の服を脱がせるなんてよくないもんね…事故があったあの日から、ずっとそのままだよ」


男は先ほどよりも笑みを深める


「…俺のこと、褒めてよ」


体だけ成長した男__否、少年と、心だけ成長した少女



「…ふざけないでよッ!なんで、貴方は狂っている…!そもそも、死んだ人は蘇らないのよ、!」

「でも、君はここにいるじゃん」


少女の言葉を男は切り捨てる

男の目には瓶の中の「水色」だけが映る


「この液体が君の証…この液体を作ったのは俺…つまり、俺が君を作った、約束を守った!これが俺の愛だよ!わかってよ」


男は瓶から目を逸らさない


「…」


沈黙が流れる

少女は少し息を呑んでから小さく呟く


「…知ってる…わかってるわよ、そんなこと…」


少し目を伏せてから先ほどよりはっきりと言う


「…私も、貴方を愛しているわ…だから私のお願い、聞いてくれる?」


男は優しげな笑みを浮かべて小さな声でつぶやいた

「…やっぱり、」


ふふ、と笑った後満面の笑みを浮かべ


「良いよ、教えて!なんでもするから」


少女は子供のようにはしゃぐ男を愛しげに見つめる


「ありがとう…それじゃあ_________」

男は目を覚ます

まるで全てが夢だったかのようだ


「ふぁ…よく寝たなぁ…」


服を着替えた男は洗面台へ向かい歯を磨く


「…おはよう、(わたし)


吐いた唾は水色に染まり

鏡に映った男の右目には美しい水色が浮かんでいた

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