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駿河蓮と黛蒼空-3

「まさか、本当に決勝で当たるとはね。」

 食事会の甲斐もあり、黛、駿河のチームは決勝にまで勝ち上がった。

 駿河のチームは、駿河が点を決め、それを守り抜くサッカー。

 黛のチームは、時にビハインドになるも何とか勝ち越すなど、接戦を勝ち抜いたのである。他のチームは遊び感覚であったのが、少なくとも体育の授業並みにはやる気がある分、勝ったのだろう。

「本気で来いよ。」

「勿論。胸を借りるつもりで行くよ。」

 力強く握手を交わす。

「ピ――――っ。」

 決勝のホイッスルが鳴る。

「さあ、やろうか。」

 早速、黛と駿河の1対1である。まず、駿河が仕掛ける。一呼吸でインサイド、アウトサイドと連続で触り、黛を抜き去る。俗に言う“エラシコ”である。ワンタッチ目で動いた重心では、ツータッチ目に反応することは不可能である。

「あー、もう。」

 黛も追いかけるが、追いつく前にシュートを決められる。

「黛、どうする?」

 駿河が挑発的に問う。「さあ!さあ!俺を楽しませろ!」と言っているようだ。

 黛がボールを持つと、すぐに駿河がディフェンスに来る。黛が外へ軽くボールを押し出す。駿河が半歩体を動かした瞬間、黛が内側に切り出す。先ほど駿河が行った“エラシコ”である。ただ、自分がやったばかりの技で抜かれる駿河ではない。体を反転し、ボールを捕りに足を伸ばすが、足は空を切る。黛が再度切り返し、駿河の軸足と伸ばした足の間をボールが通り抜ける。日本代表レベルの駿河を黛が抜き去った。しかも、股抜きである。大半が驚愕の顔をする中、当の本人は、

「おお!いいね!」

「あっ、できた!」

 と興奮状態である。それからも球技大会決勝と言う名の1対1勝負が続いた。


「ピッピッピ―――。」

 終了のホイッスルが鳴る。

「疲れたーー。」

 黛がその場で倒れこむ。言葉とは裏腹に顔は満足気だ。

「ナイスファイト。」

 差し出された手を掴み、立ち上がる。相手は駿河だ。

「まあ、俺の勝ちだがな。」

 勝ち誇った顔で、駿河が胸を張る。試合結果は6対7。どれも二人が取った点数である。技術的には拮抗していたが、経験の差が出た試合であった。純粋に駿河はボールを貰いやすい位置に自然と動くが、黛は頭で考えて位置を変えて貰うので、その分ボールを受け取る回数にも差が出た。

「で、勝負は勝負だからな。」

「分かってるよ。駿河のチームに入るよ。」

 黛の進路がここで決まった。


 某ホテル会場にて、記者会見が開かれた。大量のフラッシュライトを浴びているのは、駿河蓮だ。

「なぜ駿河選手は代表を辞退されたのでしょうか?」

「私は、私個人の理由で代表を辞退いたしました。しかし、一部記事やコメンテーターが言っていた怪我や不祥事、ましてサッカーを辞めた訳ではありません。実は…」

 わざと間を開けて、緊張感を演出する。

「私以上の才能がある人物を見つけたので、“一緒にサッカーをしないか?”と勧誘をしていました。」

 会場の一部がざわつく。ある一人の記者が手を挙げ、質問をする。

「なぜ代表を蹴ってまで、あなたが勧誘をしたのでしょうか?」

「代表に選んでいただけることは、非常に名誉だと考えていますが、今回の代表よりも、5年後、いえ、数年後、日の丸を背負う才能のある人物を失う事こそがサッカー業界において損失が大きいと考えました。」

「今後、日本代表に復帰する可能性はあるのでしょうか?」

「私が成績を残すことでチャンスを与えていただけるのであれば、日本代表の為にベストを尽くしたいと思います。」

「勧誘をした人物は誰で、どのような人物なのでしょうか?」

「では、紹介します。黛蒼空選手です。」

 紹介に応じて、黛が会場入りする。駿河の隣に立ち、一礼をして、椅子に座る。着席を確認し、駿河は紹介を続ける。記者たちも自分の端末で“黛蒼空”を検索するもヒットしない様子。首を傾げたり、隣の記者と小声で話している。

「名前は黛蒼空。私のクラスメイトです。今までサッカー経験はナシ。」

「あのー。」と、ある記者が恐る恐る質問をする。

「なぜ、実績のない彼をそこまでして勧誘したのでしょうか?」

「それは、黛選手の圧倒的な才能が故です。実際、数か月前までサッカーボールをまともに蹴ったこともなかった彼が、今では私と肩を並べるテクニックを持っています。」

 更にざわつく会場。

「黛蒼空さんはどのように感じていますか?」

「私にとっては身に余る評価です。皆さんも驚いているかと思います。駿河選手の言っているような選手になれるかは分かりませんが、彼の強い意志はしっかりと伝わりました。ここまで熱意を持って勧誘をしてもらった駿河選手の期待に応えられるよう、頑張っていきます。」

 その後、何度か質疑応答を繰り返し、最後に、駿河の言葉で終える。

「黛選手は、間違いなく日本を、いや世界を代表する選手になります。是非、皆さんも優しく、彼を応援して頂ければと思います。」


「あー、緊張した。」

 初めての記者会見を終え、控室で脱力する黛。

「ほら、見て見ろ。」

 と駿河がスマホを向けてくる。

「何々?」

 スマホを受取り確認すると、記者会見の映像と、それに対するコメントが流れていた。

「クラスメイトへの温情なのか?」「初心者がプロで通用するはずない」「本当に信頼できるのか?」と懐疑的な内容が多い。

「な、これが今の評価だ。」

 あっけらかんと話す駿河。

「だが、これをひっくり返すことができるのがサッカーの良いところなんだよ。それによく見て見ろ。ここ。」

 そこには「黛って人は知らないけど、頑張って欲しい」「そこまで言うなら本当に活躍するも」「応援しているからな」温かいコメントも少数ながら間違いなくあった。

「期待には応えなくちゃな。ちょっと、走って来る。」

 黛は、着替えの為に帰宅する。その後ろ姿を見た駿河は、以前自身の成長度を聞かれた時のことを思い出していた。黛はSSSであった。鏡に見つめ、自分の成長度を再度確認し心の中で答える。

(だって、俺の成長度はSSまでなんだよ。)

「よーし、すぐ超えられないようにしないとな。」

 体を最大限に伸ばしてから、走り出すのであった。

このエピソードでのミッション達成者

・駿河蓮―異能『将来の成長度が分かる』、ミッション『世界大会辞退』、報酬『ライバルと出会う』

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