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投票結果

「皆さん、ご進級おめでとうございます。」

 担任の口から祝いの言葉を告げられても、クラスの雰囲気は暗かった。

 姿は担任の進藤先生だが、声の主は異なっていた。例の〈アスター〉である。これから始まる投票に緊張感が漂っていた。

「佐倉さん、では続きをお願いします。」

 佐倉は〈アスター〉から投票を引継ぎ、重い足取りで教卓の前に立つ。

「では、早速ですが、投票を…。」

「ちょっと待った。」

 すぐ投票に入ろうとしたが、そこに待ったをかけた人物がいる。相川すずである。自席から立ち上がり、教卓の前に移動する。佐倉も予想外の展開に場所を相川に譲る。

「私は、ミッション継続に賛成します。」

 堂々と宣言した。

「私はミッションを通じて相良紬さんと親しくなり、付き合います。皆が知っているように以前は、大学生と付き合っていました。しかし、私の交際相手は同じ大学生とも交際していました。」

「「「それって…。」」」

 これまで秘密にしていた情報にクラスがざわつく。

「はい。2股です。寧ろ、向こうが本命で私が浮気相手だったんです。」

「えっ…。」

「嘘…。」

「そんな…。」

 クラスメイトは相川を被害者であり、可哀想な人を見るような目を向ける。しかし、相川はそのような素振りもなく、寧ろ、明るく、前向きな声で続ける。

「元カレの真実に気づき、紬という最高の彼氏ができたのも異能やミッションがあったからです。だから、私はミッションの継続を希望します。」

 言うことを言ったら、満足気に席に戻る。「ふんっ!」とドヤ顔で座る。

「えーと、他に何かある人いますか?」

 相川がイレギュラー的に発言をした為、確認をとる。

「はい。」

 そこでもう一人、手を挙げる人物がいた。中川結月である。

「で、では、中川さん。」

 指名されると、中川は相川と同様に教卓の前に立ち、話を始める。森はその行動に一瞬目を見開いたが、すぐに笑顔になる。

「私はミッション未達成です。そして、私のミッションは多分ここにいる誰よりも難しいものだと思います。だけど、私もミッションの継続を希望します。」

 先程とは別のざわつきが教室を支配する。

「何故かと言うと、私にはどうしても手に入れたいものがあるからです。そして、それはミッションの報酬でしか得ることができないものです。しかし私のミッションは非常に困難で受け入れ難いものでした。だから諦めようと、諦めなくちゃいけないと思っていました。私の異能、ミッション、報酬の全てを誰かに伝えることはできません。でも、ある人に言われたんです。『何があっても、命を懸けて何とかするから。後悔しない方を選んで。』って。だから、皆にも後悔しない道を選んでほしい。そして、何かあったら、相談もしてほしい。だって、折角、クラスメイトになって1年間一緒にいたんだよ。私達を信頼してほしい。それ程にミッションの報酬が魅力的だと思う。だから、私もミッションの継続を希望します。」

 中川は一礼をして席に戻る。視界に森が入ったが、グッドサインで返してくれた。

 2人の強い意志を聞き、揺れている生徒も何人かいるようだった。

「他にはいませんか?」

 佐倉がクラス中を見渡すが、誰も続く人はいなかった。

「では、投票に入ります。」

 終業式の時と同様に各々、投票を行う。数十秒で全員の投票が終わる。

「では、開示します。」

 緊張が教室中を支配する。開示された結果は思わないものだった。


 はい…13名

 いいえ…0名

 どちらでもない…11名


 最初に声を出したのは意外にも〈アスター〉だった。

「ほう。これは、これは…。」

 どこか考え込むような、面白がるような声を出す。

「まさか1回で決まるとは思わなかったです。少なくとも数回は投票を繰り返すと思っていました。」

 その後も、ぶつぶつと小声で喋るが、所々しか生徒の席には届かない。しかし、偶々聞き取れた言葉に目が点になる。

「やはり、貴方達は面白い。今回は“当たり”なのかもしれない。」

「おい。当たりってどういう事だ?」

「私達だけじゃないの?」

「他の人も同じことがあったって事?」

 この日一番の衝撃が教室に広がる。

「あ、ああ。別に秘密って訳じゃないから良いか。実はこの出来事は貴方達が初めてではないです。ただ、青春の時間と言うのは非常に朧げな記憶です。私と言う存在、異能、ミッション、報酬、その全てがゆっくりと時間をかけて忘れていきます。そのタイミングでSNSを含む記録媒体からも消滅します。それが今はとても…寂しい。」

「寂しい」と言う〈アスター〉の表情は今まで見た中で最も感情が見て取れた。

「では、これからもよろしくお願いします。3年1組の皆さん。」

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