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生徒会長選挙

 年が変わり2011年―。

 皆が新年の決意を胸に、各々の目標に向かい行動を始めている。

 大瀬良理久もその一人である。その目標の為に永瀬を勧誘している。

「だから、永瀬さんに推薦者になってほしいんだ。」

「嫌よ。断る。」

「断るのを断る。」

「何でよ。」

 同級生とはいえ、かなりの熱量で女子高生に絡む男性の図は周囲に警戒心を生むべきものである。しかし、このクラスでは当然であるかのように扱われる。

「ねえ、また絡まれてんの?葵?」

「もう他の人当たりなよ。」

 百田朱莉と日高由衣が2人に割って入る。

「いいや、永瀬さんじゃないとダメだ。」

「なんでよ。」

「永瀬さんの言葉には力がある。推薦者として演説をすれば、俺の生徒会長は確実のものとなる。」

「何を言ってんの?」

「文化祭の出し物決め、修学旅行の一件、どれを見ても今の永瀬さんの言葉は異常だ。まるで異能であるかのよう。」

 チラっと目を向けるも、永瀬は視線を逸らす。確かに永瀬の異能は「口達者」である。つまりは言論では敵なしということだ。しかし、永瀬は自身の異能について誰にも話していない。大瀬良はその観察眼で永瀬の異能に目星をつけたのだ。

「それに葵にはメリットがないじゃん。」

「それがあるんだな~。」

 ドヤ顔で大瀬良が答える。百田と日高はイラっとした表情を見せ、視線を逸らしていた視線を大瀬良に戻している。

「ごめんね~。これは出来れば使いたくなかった裏技なんだけどな~。かなりのトップシークレットだから、推薦人になってくれるって約束してくれないと言えないな~。」

 勿体ぶった態度で挑発をする。通常の人物では断り続けるだろうが、永瀬は違った。

「その顔は嘘をついている顔ではないな!乗った!で、そのメリットとは?」

「生徒会長にはあらゆる情報が集まる。学校内外を問わず、施設のこと、備品のこと、人間関係のこと等々。俺が生徒会長になったら、この学校の事件やスキャンダル、噂話を日高に横流ししよう。」

「任せなさい。この時を以って次期生徒会長は君に決まった。」

 永瀬は大瀬良の手を握る。そう、永瀬葵は異常なまでのミーハーだったのだ。


 生徒会総選挙が体育館にて行われた。

 生徒会長の立候補者は3人、そして推薦者も3人。桜彩学園の生徒会選挙は自己の政策より他者からの評価が優先される。その為、推薦者と立候補者の演説がそれぞれ5分ずつ設けられている。大瀬良は前日のくじにて順番は最後に決まっている。

「―以上が私が生徒会長になった時に実現したい施策です。ご清聴ありがとうございました。」

 生徒会長候補の1人が礼をし、まばらな拍手が起こる。

 かれこれ20分もの演説聞いている生徒達には疲れの色が見える。

 先程まで演説をしていた生徒会長候補と入れ替わりで永瀬葵の順番となる。

 通常、「自己紹介→生徒会長候補を推薦する理由→大まかな施策→投票のお願い」という順番で話す。前の推薦者も同様だった。しかし、永瀬は普通ではなかった。一礼後、驚きの発言で始まる。

「私は永瀬葵ですが、覚えなくていいです。」

 いきなりの覚えなくていい宣言に自然と全員の顔が上がる。

「いきなりですが、皆さんの思っていることを当てましょう。」

 後ろのあるスクリーンにパワーポイントが表示される。フリー素材の高校生から吹き出しが出ていて、永瀬の言葉に合わせて場面が切り替わる。

「疲れたなー、何か飽きてきたなー、早く終わらないかなー、そう思っているでしょ?」

 生徒達の顔に笑みが零れる。そして、先生達は顔がやや引き攣る。しかし、ルール違反をした訳ではないにも関わらず、一度始まった演説を強制的に止めされるのは躊躇われる。

「はい、皆で手を挙げてー。両手をピーンと。さあさあ。はーい力を抜いてー。次は首を回しましょう。」

 なんとストレッチ体操が始まった。全員の体が固まって来た頃合いに、体をほぐす大義名分が与えられたのだ。生徒達もノリノリになって体を動かす。もうそこには厳かな雰囲気はなくなっていた。

「さあ、皆さん。体を動かしてスッキリしたでしょ。気持ちよかったでしょ。私の推薦する大瀬良理久は皆さんを生活しやすい、過ごしやすい学校にすることを約束します。施策についてはこの後大瀬良から話があるので、もう少しだけ話に付き合ってください。最後に私の推薦する人物の名前を言うので、皆さんも私に続いて繰り返してください。大瀬良理久。」

「「大瀬良理久」」

「大瀬良理久」

「「「大瀬良理久」」」

「大瀬良理久」

「「「「大瀬良理久」」」」

「ありがとうございました。」

 体育館内が一つにまとまった瞬間だった。

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