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文化祭-3

 初日をこれ以上ないくらいの成功で終えた後、体育館にてあるイベントが行われた。

 クラスの代表者と教師が数人、後は暇を持て余した学生達が集まった。

「それでは初日の優秀賞は―――2年1組です。」

 歓声が上がる。

「代表の大瀬良君。」

「はい。」

 堂々と返事をし、ステージに上がる。ステージは文化祭クラスとは別の出し物の用意がある為、幕が下ろされている。幕の前に立ち、スピーチを行う。

「2年1組代表大瀬良理久です。この度は優秀賞を取ることができ、非常に光栄に思っています。2年1組は個性あふれたメンバーが集まっています。それぞれが自分の力を発揮できたことがこの賞を取ることができた要因だと思います。明日も更なる飛躍を目指していきます。と、言ったところで」

 テンプレートのような言葉を紡ぐ。しかし、次の瞬間、声量、声色、口調の全てを変える。

「折角何で、もう1イベント欲しくない?」

「ん?何の事?」と体育館全体が戸惑いの空気が流れる。大瀬良の合図に合わせて、幕の裏からドラムの音が響き渡る。

「おいおい、今度は何が起きるんだ。」

 皆の視線が大瀬良に向けられる。そこには期待が見て取れる。心地よいリズムから段々と激しさを増していく。大瀬良は両手を大きく広げ、スピーチを続ける。

「皆よ。真実を知る時が来たのだ。立ち上がる時は今だ。」

 大瀬良の掛け声に合わせるように体育館の二階に隠れていたクラスメイトが立ち上がり、紙をばら撒く。

「何だこれ。」

「本当なのか?」

「大スクープじゃん?」

 紙を拾い上げた、生徒は各々驚愕の声を上げる。そこには『【大スクープ】桜彩学園の田中先生と森本先生の極秘交際!』との見出しが。

「さあ、探せぇ。この二人を呼んで、真偽を明らかにしようじゃないか。」

 体育館にいた生徒達は職員室へと走り出した。


「おいおい、何なんだよ。いきなり。」

 田中先生が生徒達に強引に連れて来られ、体育館へ入っていく。噂を聞きつけたのか、体育館は生徒の大半が集まっている。

 大瀬良とその隣にいる森本先生を見つけると、何かを察したかのようにこめかみを押さえる。元々弱そうな見た目をしているが、意を決したように顔を上げる。覚悟を決めた顔で一歩一歩、歩みを進めていく。遂に壇上で森本先生と向かい合う。

 誰もが固唾を飲む。

「森本先生が、好きです。結婚してください。」

「………はい。」

 この日一番の盛り上がりを見せた。

「キャ――――。」

「末永くお幸せに!」

「森本先生、憧れます。」

 惜しみない祝福の嵐に紛れて、

「高嶺の花の森本先生が田中先生となんて…。」

「実は、俺、森本先生のことが…。」

 事実を受け入れるのに、多少時間がかかりそうな生徒も一部いた。

 何はともあれ、体育館にいた者は勿論、翌日には学校中に噂が広がり、皆が知ることになった。


「お疲れ様。」

「ああ、疲れた。」

 大瀬良の労いにドラムスティックを静かに置いて答える。言葉とは裏腹に額には汗一つかいていない。

「急に言うもんだから、衣装のままだし。急いで洗濯しないと。」

 執事服を気にしている。

「しかも、あんたはいつの間にか着替えてるし。」

「まあ、一応クラスの代表として来てるし、俺の方が着替えも早いしな。」

「だとしてもさ。ほんと、今日はイレギュラーに付き合わされる日だ。」

「ごめんな。今度は遠慮するから。」

「いや、良いよ。今回みたいな幸せにするやつなら手助けはするよ。今度はちゃんとした服でね。」

 そう言い残すと、シークレットキャストは周囲に気づかれないように、女子更衣室に向かうのだった。


 教師同士の公開告白を終え、文化祭2日目は前日とは少し異なる浮つき方をしている。

「そう、それは恋の予感。」

 高橋愛梨が宣言するが、周りの視線はどこか気まずい。

 不意に目が合い、逸らす者。自分には関係ないと高を括る者。ここにはいない人物に想いを馳せる者。

 何とも言えない空気ですら、全く考慮しないのが高橋愛梨、その人である。ちなみに、誰よりも早く登校し、メイド服を着用していた。

「で、何で、私が執事服なんだよ。」

「だって、もう皆着替えたし。」

 昨日の緒方と同じ文句を言っているのは相川すずだった。

「しかも、執事服着てもぶかぶかにならないのは相川だけだろ?」

「それを言うなら雪乃だって―。」

「いや、昨日から働いているんだよ。さすがにそれは可哀想でしょ。」

「って言われてもさー。」

「ほら、大瀬良君も困ってるでしょ。相川さんもそこまでにして。じゃないと、もう勉強教えないよ。」

「…もうっ。」

 仕方ないと、渋々衣装を受け入れ、相川が立ち去る。

「相良、助かったよ。」

「別に…。」

「つーか、お前たちも最近いつも一緒にいるよな。」

「まあ、あいつも事情があるんだろ。」

「ふーん。」

 そう言い残すと、それぞれの準備に取り掛かるのだった。


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