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8 いざ出発

 辺境の地へは十分な備えを持って行く必要がありそうなので、急ぎ準備を始めた。

 自分でやらないと誰もやってくれないもんね。


 シャーロッテの財産の棚卸しをしてみると、これ平民なら一生遊んで食べていけるんじゃね? っていうくらいの宝飾品が出てきた。

 ただ、持ち出しは禁止されて没収される可能性もある。

 なので、見せ財産分を残して、換金しやすい比較的小ぶりで上質な宝石を選んでストッキングに入れた。

 豪華なドレスや宝石は持ち出すことを許されなくても、さすがに下着やストッキングの類は大丈夫だろう。




 難しい仕事は執事に頼むしかない。

 正直、彼がシャーロッテのことをどう思っているのかは、よくわからない。

 公爵家の執事が務まる人物ということで、信頼して仕事を頼む。

 そういえば、執事の名前って何だっけ?

 シャーロッテも執事と直接話すことなんてなかったからね。全部侍女に言えば済んでいたから。

 なので、こうして廊下で執事を呼び止めたら、ものすごく怪訝な顔をされた。


「オホン。お前に頼みたいことがあるわ。養育費の話はお前も聞いていたでしょう? 今年私が使う予定だった年間予算の七年分だけど、大金貨はなしで半分は金貨に、残りは――小金貨、銀貨、小銀貨にして。ああ銅貨もある程度は混ぜてね。それを頑丈な金庫に入れて用意してちょうだい。それから、お父様は、『二週間でできる最低限の支度はしてもいい』とおっしゃっていたでしょう? だからここに書いてある物を全部用意して。公爵家の威信にかけて二週間以内にね」


 そう言って渡した紙には、北の大地で過ごすことをイメージした必要な物資を書き連ねてある。


 まずなんといっても荷物を運ぶための幌付きの馬車を二台。

 小麦や野菜、塩、油、バターといった食料に、種芋、羊毛、布。

 家畜については道中に立ち寄れる最後の町で受け取れるよう手配してほしい旨もメモした。

 私に関する物も領主に相応しいあれやこれや。

 まさかとは思うけれど、ほったて小屋みたいな建物しかない場合に備えて木材やら工具やらも持っていくことにした。

 それに僻地に医者なんていないだろうから、ポーションと家庭の医学的な書物も。


 執事は顔色ひとつ変えずに私の要求リストを受け取った。

 

「かしこまりました」


 ほっほー。揃えてくれるんだ。



   ◇◇◇   ◇◇◇



 辺境へと旅立つ日がやってきた。

 フルーツやチーズなどは食べ納めかもしれないと、朝食をいつも以上に食べてしまった。

 食事が終わったらそのまま外に出ればいいんだけど、何となく自室に戻ってしまった。

 家具があるだけの空っぽの部屋。

 一か八か、この部屋にある物も全て引っ越し荷物として馬車に積み込んだ。

 部屋の点検(?)か何かで持ち出しがバレて返せと言われたらすぐに戻せるように目印をつけて。


 だけど出発当日まで誰も部屋に来なかった。

 父親はシャーロッテが公爵家を出て行くことが確認できればそれでよくて、彼女の私物にまで考えが及んでいないんだろう。

 ラッキーだったね。ドレスとか途中で売れば結構なお金になりそう。

 宝石はいざという時のために金庫に入れて持っていく。ふふふふ。



 見回したところでどうなるというのか。八年足らず過ごしていた部屋……。

 もうここに戻ることはないと思っても、特段寂しい気持ちは湧いてこない。

 ()になっちゃったからかもしれないけれど。

 私としては贅沢な暮らしとお別れすることが辛いだけ。


「ふう。行くしかないんだから、覚悟を決めないとね!」






 エントランスには誰もいない。見送りゼロ。まあそうだよね。追放なんだから。


「お! やっとお出ましですか。この期に及んで部屋に籠城でもしてんのかと思いましたよ」


 あぁん?

 アルフレッドはもう馬に跨っていた。

 主人に向かって生意気な口を――と、つい右手に力が入るのはシャーロッテの細胞の仕業だね。

 でもただでさえ背が高いのに、馬に乗っているアルフレッドには手が届かないよ?


「そんな訳ないでしょ。マイアもリミも準備できているわね」


 さすがにマイアとリミは馬車の前で立って待っていた。

 あ。リミの隣に男の子がいる。ローリーだったっけ?


「は、はい。シャーロッテ様。私はシャーロッテ様の荷物を乗せた馬車を担当させていただきます」

「そう」


 マイアの方が馬車で出かける回数が多かったため、割れ物が多い方を担当するようだ。

 私が使う食器とか調理器具、寝具に文具等が積まれている。

 あと上質な布に裁縫セット、編み物セットとかもね。


「あの。私たちは食料を乗せた馬車を担当させていただきます」

「そう」


 まあ食料や香辛料とかは少々の揺れでどうなるものでもないからね。


「あ、あの。お嬢様。ご挨拶が遅れまして――」


 ローリーが慌てて話し出したけど、挨拶なんて別にいらない。


「あー、大丈夫。これから嫌でも顔を合わせる訳だし、話ならいくらでもできるからね」

「は、はい」



 私が乗る馬車は公爵家の馬車だ。今まで乗っていた紋章が入った馬車。御者も制服を着た正規のお抱え御者。

 そしてこれまた公爵家の護衛騎士が四名。

 まあ無事に送り届ける義務があるもんね。

 公爵家の馬車には、大事な金庫が積まれている。それとポーションも。そしてなぜか道中の食料まで。

 全く快適でない車内環境となっているけど、まあ仕方がない。一週間かかる馬車の旅だもんね。



   ◇◇◇   ◇◇◇



 馬車に乗り込んで壁を叩いて合図すると、いつものように馬車が走り始めた。

 これまでと違うのは侍女の代わりに荷物がぎっしりあることくらい。


「はぁ」


 馴染みのある揺れを感じながら王都の街並みをぼんやりと眺めた。

 

「なんか――目が覚めてからずっと忙しかったなぁ。あっちの世界で何が起こったんだろ? みんな今頃どうしてんのかなぁ」

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