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追放された悪辣幼女の辺境生活 〜チート魔法と小人さんのお陰で健康で文化的な最高レベルの生活を営んでいます〜  作者: もーりんもも
第二部

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64 ゲルツ伯爵領の作況調査①

 モニターには動くものが何も映っていない。今のうちだね。


「メイスン、出発よ!」

「は、はい」

「あ、キース。あなたが先に出てちょうだい」

「え? あ、はい」


「え?」じゃないよ。まったく。

 護衛ってこと忘れてない?


「お嬢! ヤバそうならすぐに逃げてくださいよ!」

「大丈夫よ。そうならないために地下通路をつなげるんだから」

「自分がどれだけまずいことをやろうとしているのか、ご理解されてないようで……」


 あぁん?


「メイスン! ほらっ! 出して!」





 スロープを上り地上に出ると、メイスンも思わず、「おぉぉ」と感嘆の声を漏らした。

 ふふふ。見たか! すごいでしょう?


「さっ。ここからは手筈通りにね。護衛はお金で雇ったって言えば、そのまま連れて入れるんでしょう?」

「はい。それで大丈夫のはずです」

「じゃ、とっとと行きましょう。あ。その前に、私をいい感じに隠してちょうだい」


 薄い布を頭からすっぽりかぶって、木箱の間に座る。

 真っ暗にはならないので、少しの間なら我慢できそう。



   ◇◇◇   ◇◇◇



 私たち以外に門を通る者はいない。

 きっと人通りがないから普段は仕事していないんだろうな。


「通行証」


 門番がだるそうにメイスンに話しかけている。

 メイスンが黙って差し出すと、すぐに突き返した。

 

「よし。通れ」


 早っ。

 絶対に目を通してないな、これ。

 それらしきものを偽造しても見破られないんじゃない?





 しばらくして馬車が停まった。


「シャーロッテ様。ここまで来ればもう大丈夫だと思います」


 メイスンがそう言って、布を取ってくれた。

 御者台に移動して座り直すと、メイスンが馬車を出した。

 キースは馬車の後ろを守っている。


 ……へぇ。

 これがゲルツ伯爵領の街並みかぁ。


「北の外れの領地にしては、まあまあ栄えているみたいね」

「はい。先々代の領主様の奥様は公爵家のご令嬢で、お輿入れの際に、相当な持参金をお持ちになられたとかで」


 あー、なるほど。

 きっと金に物を言わせて、なかなかの物件を押し付けられたんだね。

 

「その時代に整備された道が今でも役に立っています」


 みたいだね。

 石って数十年経ってもそれほど劣化しないんだ。すごいね。



   ◇◇◇   ◇◇◇



 メイスンはなんだかんだいって、店を出す場所に当てがあったみたい。

 迷わず馬車を走らせている。



 メイスンが選んだ場所は、ヨーロッパの朝市みたいな賑やかな通りの端の方だった。

 人通りはまばらだけど、スペースが空いているのがいいね。

 どん詰まりだから、背後を気にしなくてもいいし。


「なかなかいい場所じゃないの」

「はい。シャーロッテ様のお話を聞いてすぐに思いつきました。ここなら店を広げても余裕で馬車の背後にテーブルなどを置けますから。いつでも休憩できますし、その――作業できるスペースもあるかと思いまして」


 最後の方がゴニョゴニョと声が小さくなっているのは、まだ半信半疑ってこと?

 やるって言ったらやるんだけど?


「上出来よ、メイスン。野菜を並べたら、空いたコンテナをこの辺に積んでちょうだい。一応は目隠しをしておきたいから」

「かしこまりました」


 ということで。

 メイスンは商売を、私は地下通路作りを開始。


 ここじゃちょっと声に出しづらいので、心の中でいつものように叫ぶ。


「おーい! 小人ども! ここにも地下通路の出入り口を作るよ。くれぐれもバレないようにね。塀の外まで作った通路をここまで延長してちょうだい。入り口は直径一メートルくらいの円でいいから。そこからなだらかに地下の通路に降りられるようにね。少し屈んで降りたら、すぐになだらかな斜面を立って歩けるようにしてちょうだい。あ、そうそう。領地で野菜を運んでいるロボットたちが自走できるくらいの傾斜にしてね」


 こんなもんかな。

 脳内にイメージを浮かべる。

 正確に受け取れよ! GO‼︎


 お!

 小人たちが現れた‼︎

 先頭のやつがチラッと私を見たけれど、追加オーダーがないと分かったのか、そのまま地中に吸い込まれるように消えていく。


 ……不思議。

 小人たちの魔法の使い方が意味不明なんだけど。



 それでも地面の上に異質な物が出来上がっていくのが分かる。

 さっき見た開閉部だ。


 ……あ。

 地下通路が繋がったみたい。


 そう思って出入り口に近づいたら、ウィーンって開いた。

 ヤバッ。


「やっぱキーのボタンを押して開けることにするわ。改修よろしく」


 うっかり口に出してしまい、メイスンに振り向かれてしまった。


「おっほん! 出来たわ。私の仕事は完了よ。そっちはどうなの?」

「は、はい。ポツポツ売れているところです」

「ふーん」


 キースは突っ立っているだけで何もしていないな。

 まあ、騎士だから商売なんて平民のする仕事だと思っているのかもね。


 店先には、一人、また一人と客が来ている。

 結構端っこの方なのにね。

 接客しているメイスンの様子を見に行くと、老人が私に笑顔で話しかけてきた。


「お嬢ちゃん。まだ小さいのにえらいね。お父さんのお手伝いかな?」

「このぶれぃ――」


 おっとっと。

 油断していたら、私の中に眠っていたシャーロッテ魂みたいなものが出てきて、「この平民風情がっ」と拳を突き出していた。


 落ち着け。

 潜入調査中だぞ!


「はい。いっぱい買ってくださいね」

「ああ、いいとも! これほどの上物は久しぶりだからね。小さいけど食べ応えありそうだ。やっぱりどこも生育が悪いんだねえ」


 あら。やっぱり?

 わざと成長途中の小ぶりな状態での収穫に切り替えておいてよかったかも。

 不審がられずに済んだみたい。


 それにしても――ちょっと――なんだか――あれぇ?!


 次から次へと、どんどん人がやって来るんだけど?


「あ、あの、シャーロッテ様」

「とにかく並べている商品が無くなるまで売ってしまいなさい」

「は、はい」


 見事に飛ぶように売れていく。

 途中から、「お一人様一つに限定」に変わったけれど、人混みは減らない。


「うわあ! 本当だ!」

「こんな立派な野菜があるなんて!」


 口コミかぁ。早いな。

 一人一つでもあっという間に売れ切れた。


「もうないのかい?」

「嘘だろう!」


 ちょっと殺気立っている人もいて、メイスンがぺこぺこ謝っている。


「今夜仕入れることができたら、明日、またここで商売するので」と言って、なんとか店じまいできた。

 まだ昼前だ。


「ねえ、メイスン。ここの客って前からあんな感じだった?」

「いいえ、まさか! やはり食料が不足しているのでしょう」

「じゃあ、この後は領内をブラついて偵察してきて」

「は、はい」

「夕方に迎えにくるわ。売上の半分はあげるから、お昼は何か美味しい物でも食べるといいわ」

「え? 半分も?! かしこまりました!」


 大した額じゃないと思うけど?

 まあ、頑張ってね。私はいったん領地に戻って休むわ。

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