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追放された悪辣幼女の辺境生活 〜チート魔法と小人さんのお陰で健康で文化的な最高レベルの生活を営んでいます〜  作者: もーりんもも
第二部

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56 社会情勢

 街を出てしばらく走り、ようやく見渡す限りただの荒れ地になった。


「この辺でよさそうね」


 バスに戻すために馬車を停めて降りると、アルフレッドとキースも馬を引きながらやって来た。


「お嬢。まだ日が高いので時間は十分あります。休憩がてら、二人から話を聞きませんか?」

「そうね。気になるから早く聞きたいと思っていたのよ」


 御者をしていたメイスンは、どんより落ち込んでいて、さすがに声をかけられる雰囲気じゃなかったからね。


「じゃあ、バスに戻ったら、中で座って話しましょう」


 持ってきた野菜は綺麗に全部無くなっていたので、キャンピングカーみたいに、小さいテーブルを囲うような形の座席にしてみた。

 ガシャーンガシャーンと変形するバスを見ても、みんな最初の時みたいには驚かない。

 もう慣れたの? なんか悔しい。



   ◇◇◇   ◇◇◇



「え? テーブルまで用意できるんですか? ほんと、お嬢の魔法はどうかしてますね」

「褒め言葉に聞こえなくもないけれど、もうちょっとそれらしい言葉を選んでくれない? 馬鹿にされているような気にもなるんだけど」

「あっはっはっ。なんですかそれ? 褒めてもらった時は素直に喜べばいいんですよ」


 アルフレッドめ。何がおかしいんだか。

 上からものを言いやがって。


「それにしてもあの大きな光のカーテンはなんだったんです? 炎を変形させたのですか? お嬢は火魔法ではなかったですよね?」


 ふっふっふっふー。驚いたか。


「まあね。私の魔法に制限はないみたいだから、何でもできちゃうのよ。属性という概念から解き放たれたみたいなのよね」

「……それが本当なら大事件――いえ、大問題ですよ。くれぐれも部外者に勘付かれないように注意してくださいよ」


 私がこの国一番の魔法使いになっちゃうかもしれないから?

 魔法を生業(なりわい)としている人に嫉妬されて、排除される可能性があるとか?

 さすがに出来すぎるという理由で投獄とかはないと思うけど――――ないよね?

 国の中枢部については知らないからね。

 まあ、みくびられているくらいがちょうどいいから、もちろん秘密にするけれども。


「私のことはいいから、メイスンたちの話を聞かせて。どうだったの?」


 メイスンとキースは、二人して、「うっ」と喉に何かを詰まらせたような声を出して、目を泳がせた。

 おいおい。


 これにはアルフレッドも目を細めてキースを睨んだ。

 そうだよ。上官に聞かれたら速攻、答えなきゃ駄目じゃん。

 口籠るなんて御法度だよ。

 ほら。さっさと言え!


「メイスン。お二人に説明を」

「は、はい。今年は不作になりそうだという噂は、もう国中に広がっているみたいで。まだ買い占めは始まっていないようですが、小麦の出来が悪ければ、食料を全部中央に持っていかれるんじゃないかとみんな不安がっています。私も……話を聞いているうちに段々と心配になってきて……」


 メイスンはちょっと前までひもじい思いをしていたから、人一倍空腹でいることの辛さを知っているもんなぁ。

 もし不作になったらって考えて辛くなったのかな?


「キース。それにしてもどうしてあそこまで群衆に囲まれていたのだ?」


 そう! それ聞きたい!


「……はい。最初のうちはメイスンが、『不作は不作でも、なんとか一年持ち堪えられるくらいならいいのに』とか、『せめてジャガイモやビーツで(しの)げることができたら』とか、そういう世間話をしながら野菜を売っていたんです。あ、値段はちゃんとこの街の相場に合わせました。ただ……」


 出たよ、『ただ……』。

 ただ何だっていうの?


「ただ、なんだ?」


 アルフレッドに促されないと続けられないの?

 もったいぶらずに早く言いなさいよ。


「はい……そのう……」


 え? 何で私の顔を見るの?


「物が良すぎました」

「物が良すぎた?」


 キースが私の顔を見ながら言うので、うっかりおうむ返ししちゃった。

 メイスンが、「そうなのです」と引き取った。


「私も最初に収穫した野菜を見た時には、それはそれは驚いたものですが、今ではすっかり慣れてしまって……。私たちは忘れてしまっていたのです。シャーロッテ様が魔法をかけられた、あの辺境の畑で収穫された野菜の素晴らしさを!」


 あら。

 ま、まあね。えへへ。


 キースが真面目な顔で状況説明を始めた。

 

「野菜を購入した者たちが今のメイスンみたいに興奮して言いふらしたのか、それとも抱えている野菜を見ただけなのか分かりませんが、あの街で商売をしている商人たちまでやって来たのです。彼らは常に情報を仕入れていますからね。聞けば餓死者が出るほどの飢饉にはならない予想だそうですが、ここ十年くらいのうちでは、かなり厳しい感じだそうです。あ、そういうことを差し引いても、私たちが持ってきた野菜は一目見て最高級のランクで王宮に納品するレベルと分かったみたいです。鮮度が抜群で、どれもずっしりと重たいのです。ですから、どこで買い入れたのかとしつこく聞かれてしまったのです」


 あーそういうことか。


「メイスンが答えに窮していると、秘匿して自分たちだけが買い占める気なのではないかと騒ぎになってしまったのです」

「すみません。私がうまく答えられなかったばっかりに。そうこうしているうちに、誰かが言ったのです。『王都で商売をして稼ぐつもりなか?』と。そうなれば僻地には物資が流れてこなくなるので、彼らは興奮し始めて――」


 まあ、その見立ては合っているね。

 ちょっとした不作で値段が上がる分には無頓着でも、不作で物が無いとなれば、うちの父親をはじめ貴族は、金にものを言わせて競い合って買い占めるだろうから。


「お嬢。戻ったらゲルツ伯爵領の様子を見に行かせた方がいいですね。ここの話に尾ひれが付いて広まると、市場から一気に商品が無くなります。メイスン。お前はまだゲルツ伯爵領の通行証を持っているな?」

「あ、はい。商売の方もまだ有効です」

「そうか」


 え? 商売するにも許可証みたいな物がいるの?

 ゲルツ伯爵領も入るには通行証がいるのか。

 


「とにかく。情報は収集するとして。もう最悪の事態を考えて動けばいいんじゃない? 飢饉に近い方の不作になった場合、どんなことが起こるの?」


 うわぁ。

 分かりやすく三人の表情が曇った。

 私は知らないけれど、三人は不作だった年を経験しているのかな?


「お嬢。食料が無ければ人が死にます。弱い者から順に」


 うっ。そうはっきり言われるとショックなんだけど。

 ゲルツ伯爵領から連れて来た時の住民の様子を思い出す。

 この世界の弱者は、庇護者のいない女性と子どもだ。


「今のうちの畑じゃあ、せいぜい近くの町の人たちを支援するくらいしかできないわね。ゲルツ伯爵領の状況を把握して、人道支援が必要なようなら方法を考えましょう」


 まずは身近な人を助けるのが肝要だって誰か言っていたよね。

 私の民は大丈夫だから、次は隣人だ。

 

「あ。待って。うちは本来ならば支援が必要な開拓村だったわ。それなのに、こっちから支援なんてやったら後々面倒臭いことになるかもしれないわ。こうなったら、正々堂々と売りに行った方がいいかもね」


 メイスンがびくんと動揺した。ピクピク顔を引き攣らせているけれど、正解!

 オフィシャルな行商人で、通行証も商売の免許も持っているんでしょ?

 商売が上手くいって凱旋したことにすればいいじゃない。


「メイスンは知り合いに行商をしていると思われているんだし、ゲルツ伯爵領には馴染み客だっていたでしょう? 仕入れ元は隠しておけそうにないから、そこは正直に言ってもいいかもね。たまたまこの辺境の開拓地を通りがかったら、あーら不思議。非常に立派な壁が出来ていた。それを見たあなたは、『なんて立派な壁なんだ! さては優秀な領主がやって来たに違いない。どれ、ひとつ覗いてみることにしよう』と立ち寄ったのよ」


「お嬢」


 またなの?

 その残念な子を見るような目つき、やめてくれない?


「何ですかそれ? さぞかし立派な領主がやって来たに違いないとか、そこ、必要ですかね?」

「あったり前でしょ! 一番重要なところよ! こういうのは物語が必要なのよ! コホン。とにかく、ちょっと覗いてみるだけのつもりが、意外にもまずまずの収穫らしいことが分かった。住民の消費量を賄った上で余るほどに! 聞けば、先見の明がある領主様が、王都を出る際、大量に持ち込んだ種のお陰で――」

「……」


 おのれ!

 アルフレッドはまだしも、キースまでが呆れた顔で聞いている!


「ここも必要だから! 絶対に! とにかく余りそうと聞いて辺境価格で安く分けてもらったという設定ね」

「はぁ。まあ物語はお嬢に任せますが。とにかく、まずは情報収集です」


 だね。

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飢饉が起きた時に大丈夫どころか突然、良質な野菜が収穫できている 飢えた人々が集まる…
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