52 女神、出てこいやー!
いよいよだ。
あぁ、この日をどんなに待っていたことか‼︎
アルフレッドが教会の前で馬をとめ、私たちが降りたのを見ても誰一人駆け寄ってこない。
この前立ち寄った時にヘイコラしていた教会の関係者はいない。
まぁ、事前に連絡をしていないから私が来たことを知らないんだろうけど。
これが普通の対応か。
「お嬢、俺は馬を――」
「あなたはここで待っていなさい」
「あ、ちょっと!」
「お金なら私だって持ってるわ!」
あの、うだうだうるさい神官になんか構っていられるか。
例の部屋に突入して、女神を呼び出してやる!
私が駆け出すと、門番みたいな人たちが、ようやく、「ん?」とこちらを向いた。
「子どもがはしゃいでるなー」くらいに思って微笑んでいるけど、二人とも見る目がないね。
私は緊急かつ重要な用があって来ているんだよ。
ぼうっと見ているくらいなら、さっさと扉を開けなさいよ。
「お嬢ちゃん。お父さんを置いてきぼりにしちゃ駄目だよ」
ちっ。
「先に私だけ入れてちょうだい」
もしかしたら、美幼女らしく、うるうるした瞳でお願いすればいいのかもしれないけれど、そんなのやったことないし。
多分、やっても凄みが出るだけだろうし。
「寄付は私からしたいので、こうしてお金を持たせてもらっています」
金ならあるぞ、と重たそうな小袋を掲げて見せてやる。
門番二人は明らかに顔色を変えた。
どこぞの金持ちが娘可愛さで大金を持たせたとでも思ったんだろう。
瞬時に太客と認識したらしく、扉を開けてくれた。
「ありがとう」
お礼ぐらいは言ってあげる。
◇◇◇ ◇◇◇
教会の中に入ると、奥の祭壇に見覚えのある像がドドンと並んでいた。
やっぱ大きいなぁ。
でもこいつらに用はない。
火を司る女神には、「どうして私に加護を与えなかったのか」と文句を言いたいところだけど、まあ済んだことだし、わざわざ言う必要もない。
祭壇横のドアを目掛けて一直線に走ると、ギョッとした表情の神官が数人、私の前に立ちはだかった。
あぁん?
邪魔するつもり?
……あ。先払いか。すまん。すまん。
「コホン。失礼しました。神官様。こちら、今日の寄付ですわ。あら、私としたことが。名乗りが遅れてしまったわ。私はシャーロッテ・フィッツジェラルド。フィッツジェラルド公爵家の者です」
「フィッツジェラルド公爵」という名前と幼児体型の私を見て、なぜか神官全員が、「ああ、あの」という、やけに冷めた眼差しをよこした。
大方、家の後ろ盾を失ったくせに、まだ威張ってるどうしようもない子どもだとか、そんなことを考えているのが丸分かりだよ。
それでも見慣れた小袋には皆、敏感に反応している。
「今日はどういったご用でしょうか」
うーん。何て言うのがいいかな。有無を言わさず部屋に入りたいんだけど。
ま、ここは教会だからな。
「あら? 神官様は受け取られていないのですか? 今朝方、それはそれは眩しい光に照らされて目が覚めたのですけれど。何かの啓示に違いないと思うのですが、詳細はこちらで受け取るものだとばかり」
題して、「え? 女神様に呼ばれたから来たんですけど?」作戦。
神官にとっては試される場面だよね。
正直に思ったまま、「嘘つけ! このたわけ!」なんて叱責すると、神託を否定することになるし。
ここは無難にお金を受け取って、私を部屋に入れちゃえばいいんじゃない?
神官同士でアイコンタクトを取った末、私の提案を飲むと決めたらしい。
「さようでしたか。それで本日はお越しになる方が極端に少なかったのですね」
おうおう。取ってつけたようなことを言っちゃってるよ。
「ではこちらへ」
「こちらへ」というのが、部屋への案内かと思ったら、「ここにコインを」の意味だった。
ま。いいけどね。
神官の指の先にある台に、気前よく袋ごと置いてやると、皆、満足そうに頷いている。
前回はアルフレッドが金貨をはずんだようだけど、今回は、袋のほとんどには銅貨を入れて、口を開いて見える範囲にだけ銀貨を入れてある。
さすがに私が帰るまでは中身を出さないだろうと踏んで。
小袋の口を開けて中をチラ見する程度はやったとしてもね。
「部屋を借りるわね」
そう言って勝手にドアを開けて部屋に入った。
◇◇◇ ◇◇◇
……来た。
やっとだ。とうとう来た!
ここでなら女神と繋がれるよね。
さあ! 対話の時間だよ!
女神、出てこいやー‼︎




