47 収穫①
五十体のロボットを引き連れて、ナスを収穫しているヒッチのところに向かった。
アルフレッドはウザいので、畑仕事をしていない女性や子どもたちへの説明を命じて置き去りにした。
ヒッチは、私の姿を見つけると、すぐに駆け寄って来た。
「シャ、シャーロッテ様。そ、その、後ろの、そ、そ――」
「あぁ、これね。便利な荷馬車よ」
「は?」
「便利な荷馬車よ」
「はぁ……」
「勝手に動くところを見たでしょ? 馬も人も必要ないの。決められた道を、『終わり』って言うまで繰り返し往復するの」
「はぁ……」
ぬるい返事だなぁ。
そのどんよりした顔は何? 魂が抜け落ちちゃった?
「ヒッチ。みんなに説明するから、ここに全員を集めてくれない?」
「は、はい」
ヒッチは私の背後をチラリと見ると、やっぱり見るんじゃなかったと言いたげに首をブルっと震わせてから走り去った。
◇◇◇ ◇◇◇
「シャーロッテ様。農業に従事している者たちを集めました」
ヒッチはなんだかんだ言って、ちゃんと仕事をする男なのだ。
男性に混じって女性もいるけど、みんな、おっかなびっくりした様子で私を――後ろに従えているロボット込みで――見ている。
「さっきはごめんなさいね。私がちゃんと指示をしなかったせいで、この荷馬車が驚かせてしまったわね」
「え?」と驚くことすら領主に逆らうことになると思ったのか、数人が手で口を塞いだのが見えた。
別にそれくらい構いはしないけどね。
ま、ぎゃーぎゃー言われない方がありがたいけど。
「これはね、ほら、ここにコンテナが乗っているでしょ? ちょっと見慣れない姿かもしれないけれど、ここに、収穫した野菜を入れたコンテナを積むと、この荷馬車は勝手に集荷所まで運ぶの。私が魔法で作った荷馬車だから、馬も人もいらないの」
全員無言……。
えぇぇ? 分っかんないかなぁ?
「説明を聞いただけじゃあ分からないわね。実際にやってみましょう!」
そうだ。実演だ。
「ヒッチ!」
「は、はい」
まだ怖いの? 私じゃなくてロボットの方だよね?
「ええと。それぞれの畑にリーダーのような人はいる?」
何かあった時のために、メインとサブの両方を管理者として登録しておこう。
「は、はい。おります」
「じゃあ、リーダーは前に出てきて。あとリーダーを補助する人も畑ごとに数人出てきなさい」
リーダーはいても、明確に『補助する係』と決めていなかったようで、誰が出ていくのか顔を見合わせながらゴソゴソ相談している。
もう。面倒くさいな。
「何人でもいいから、仕事を他人に教えられる人は前に出てきなさい」
あ、それなら、と言う感じで、十数人がわらわらと集団の中から歩み出た。
今度はロボットに命令だ。
「お前たち。この人間の命令も私と同じように聞くのよ。ちゃんと顔を覚えておきなさい」
「YES」と返事をする代わりに、五十台のロボットがキュインキュイーンと機械音を響かせて代表者たちの周りをぐるぐると周り始めた。
うげっ!
だから、それ、止めろって言ったよな!
気の弱い人は「ひぃぃ」と半べそをかいているじゃないの。
「ストォーーップ!」
一から十まで指示しなきゃいけないの?
「時速二十キロ以上出すの禁止! 人間が近くにいる時は時速十キロ以下で怖がらせないこと! 未成年の場合はその場で停止!」
分かったのかな?
他に注意点ってあるかな?
「並走は二台まで! 左側通行! それから――不具合を発見したり、命令を理解できなかったり、とにかく次の行動に迷ったら、領主館の玄関横に整列すること!」
もちろん返事はなし。
あ! そうだ!
ライトでも付けて、「YES」なら一回点滅、「NO」なら二回点滅とかさせようか。
これは今晩の改修でいいか。こいつらの溜まり場を作るついでにやっておこう。
ロボットたちは、ノロノロと二台ずつ列を作って管理者となる人たちの顔をインプットしているので、通じてはいるみたい。
五十台が元通り私の後ろに戻ったところで、説明を再開。
操作方法を教えてあげないとね。
「コホン。じゃあ実際にナスを収穫してみましょう。あ、その前に。そこのあなた」
「へ?」
遠巻きに見ている集団の先頭にいた男性を指名する。
「これを集荷所に案内して」
「え? あ……え?」
もうー。
「あなたは集荷所まで歩くだけでいいの。これが勝手にあなたの後をついて行くから」
「え?」
あぁもう!
言葉遣いはこの際許すとして、「集荷所まで歩け」という指示が理解できない?
歩けばいいの!
「何も考えなくていいわ! とっとと集荷所へ行きなさい!」
つい怒鳴るように命令したら、その男性はびくんと体を震わせて硬直した――かと思ったら、くるりと背を向けて歩き出した。
あれ?
これって、私の絶対的な命令が下った感じ? 有無を言わさずやれみたいな?
あの最初に宣言したやつの効果なのかな。
まぁ、「歩け!」くらいの命令は許されるよね。私は暴君じゃないから。
手近にいたロボットの操作パネルの部分に手を当てて、ついて行けと念じると、ゆっくりと徐行する速度で動き出した。
集荷所の位置を把握したら、残りの四十九台と同期することも命じておく。
さてと。
「ヒッチ」
「は、はい」
「あなた。今日はナスの収穫をしていたんでしょ? まずはそこでこれの使い方を説明するわ」
「あ、はい」
「ほら。行くわよ。全員ナス畑に行くわよ!」
ヒッチは固まったりせずに、ちゃんと自分の意思で歩き出してくれた。
……おっと。
これ――アルフレッドもいないし、私まで歩きで行く流れじゃん。
ちっ。
……あ!
集配ロボットをちょっと改良すれば、私専用のモビリティができるかも!
電動キックボードみたいなやつ!
アレがあれば歩かなくていいじゃん!
足を縦に置くよりも横に揃えたいから、幅は広くしよう。
ふふふ。うっふっふっふっ。あっはっはっはっ!




