46 集配ロボット
ロボットの製造は、あの小人たちにとっては結構難題だったのかもしれない。
私がベッドにも辿り着けず床で寝落ちしていたくらいだから。
原因は仕様なのか、製造数なのか、はっきりとは分からないけどね。
でも、こういうところもどうにかしたいんだけど!
もしうつ伏せに倒れていたらどうなっていたことか。
窒息はしないまでも、鼻が曲がっちゃったんじゃない?
それでもまぁ、小人たちは、私が熟睡している方が効率的に働けるんだろうな。
魔力をスムーズに使用できるとか?
知らんけど。
それよりも!
目が覚めたということは、出来上がったに違いない。
ふふふ。よかったー!
今回はアルフレッドに叩き起こされる前に起きることができて。
「お嬢!」
げっ。出たよ。
アルフレッドの、ドアをバーン! からの「お嬢」。
「何回言ったら分かるの? そんな風に入って来るなって言ったでしょ!」
「あ、ああ、ええと。すみません。そんなことより!」
「分かっているわ。見たことのないものが現れたんでしょ。そうよ。私が作ったの」
まぁそりゃあ、この世界の人間たちの度肝を抜くよね。
どんなデザインかな。
まだステーションをどこにするか決めていないから、屋敷の前に勢ぞろいしてんのかな?
「で、ですが、いや、私とキースは、まあそんなことだろうとすぐに理解できましたが、領民たちには前もって説明しないとまずいですよ」
「は? 何で?」
「子どもたちは泣き喚いていますし、年寄りは腰を抜かして歩けないわ、それはもうあっちでもこっちでもパニックで――」
「何を言ってんの?」
「お嬢。えぇぇ? こっちに来て、自分の目で見てください!」
は?
アルフレッドは勝手に部屋の窓を開けて、「ほらっ」と顎で私を呼びやがった。このヤロー。
ふーん。なるほどね。
玄関の前じゃなくて、私の部屋の真下に集合したのか。
五十体だからね。
びっくりして腰を抜かすかもね。すまん。すまん。
「お嬢! 早く見てください!」
「分かったわよ。うるさいわねー」
窓辺からロボットたちを見ようと見下ろすと、ヒュン! という聞き慣れない音と共に大きな物体が通り過ぎて行った。
「……へ?」
ウィーン!
キュルキュルキュル!
ヒュン! ヒュン!
「何? 何で? アイツら、何をやってんの……?!」
子どもが歩くような通学路は、確か時速三十キロ制限だったよね?
その二、三倍は軽く出ていそうな速さでロボットたちが縦横無尽に走行している。
ここはサーキットじゃないんだよ‼︎
え? まさか、アレ?
いや、「最初に領内を走行してマップをインプットしとけ」とは言ったけどさ!
人間がいるのに自分勝手に走ってんじゃねー‼︎
「ストォーップ‼︎」
五十体のロボットがキキキキィと一斉に止まると、走行音が止んで、子どもの泣き声が聞こえてきた。
ほんと、これ――どうしてくれようか。
ロボットに対する第一印象がこれじゃあ、この後どうやって一緒に働いてもらえばいいの?
あと、私がイタズラかなんかで領民たちに嫌がらせをしたみたいじゃないの。
勝手に人の好感度下げやがって。
「玄関前に集合‼︎」
とりあえず言って聞かせないとね。
◇◇◇ ◇◇◇
急いで下に下りて外に出ると、コンテナはちゃんと玄関前に積まれていた。
それはそれで何かムカつく。
ロボットたちは領内の各所に散らばっていたみたいで、まだ数体しか戻っていない。
戻って来たロボットたちは、さすがに機械(?)だけあってラインを揃えて綺麗に整列していく。
そんな様子を母親に抱き抱えられた子どもが泣きながら見ている。
あちこちからロボットが、私が立っている玄関前めがけてやって来る様は、何事か理解できていない人間には恐怖を感じる光景だろう。
私に付いて来たアルフレッドでさえ、「うわっ」とのけぞっているもんね。
どうしよう。
「屋敷に入っていなさい」は違うよね。それじゃあ、危険物認定しちゃうことになるよね。
うーん……。
「大丈夫よ。怖くないから。これは私が作った道具よ」
シーン。
だよね。「何言ってんの」だよね。
「これはね、農作物を運ぶための道具なの。荷車みたいに押す人がいなくても、自走できるように――ええとね、馬や人がいなくても動くように私が魔法で特別に作った――そう、荷馬車なの」
「荷馬車?」
子どもを抱いている母親がキョトンとしている。まぁ、分かる。ちょっと無理があるし。
でも押し通す!
「そう、荷馬車なの! ほらっ、このコンテナがぴったり収まるでしょ?」
そう言ってアルフレッドに、「コンテナをロボットに積んで見せてやれ」と視線で命じる。
ここは黙って従うところなのに、彼は、「はぁぁ」と大きなため息をついてから、やれやれと肩をすぼめて、ようやくコンテナをロボットに積み込み始めた。
ちっ。黙ってさっさとやれよ。
でも、コンテナを二段重ねると、やっと荷馬車っぽくなった。
こうしてみると、一番の問題点は太陽光パネルが大き過ぎたことだと分かる。
操作画面の上に、斜めにパネルを設置したんだけど、なんかファラオが被っていそうな長い冠みたいに見えるんだよね。
操作画面は居酒屋の注文タブレットみたいな感じで、動物みたいな可愛らしい顔をデザインした訳じゃないから、おかしな例えだけどね。
うーん。機能性だけを追求したのは間違いだったかもしれない。
やっぱり、前世のロボットでよく見た『猫型』というのは、親しみやすさという点ではかなり重要だった?
さすが大企業。恐るべし!
でもまあ、毎日見ていれば慣れるよね。
とりあえずお披露目&説明をしなきゃ。
その後で、あの、ぽやっとした、いかにも純真ですという面構えの幼児体型の小人どもに説教しないとな!
「転生した私は幼い女伯爵」の4巻が12月17日(水)に発売されます。
詳細は下にリンクがあります。よろしくお願いします。




