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追放された悪辣幼女の辺境生活 〜チート魔法と小人さんのお陰で健康で文化的な最高レベルの生活を営んでいます〜  作者: もーりんもも
第一部

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38 魔獣襲来①

「ひぃぃっ!」


 ヴィンスが情けない声を出してピキンと立ち上がった。

 後ろに無表情で控えていた騎士たちも真剣な表情に変わり、互いに顔を見合わせている。


「こうしてはおれん! 失礼する!」


 ……は?

 いやいや。何を言ってんの?

 話が始まったところでしょ? 税はどうなったの?


「ヴィンス様。まだお話の途中ですので、しばらくこちらでお待ちいただけないでしょうか。私は状況を確認してまいりますので――」

「何を悠長なことを言っておるっ! 私が帰った後で討伐でもなんでもしておれ!」


 ……なんだと!


「お前たち! 急いで馬車の用意をしろ! 私が乗ったらすぐに出発だ! そっちも開門を急げ!」


 ()()()と指を指された私。

 開門て……あー。なるほど。

 あれだけ大層な門だもんね。まさか普段から開けっ放しにしているなんて思わないか。

 それじゃあ。


「お待ちくださいませ。ヴィンス様。ここには騎士団がおりません。戦うこのできる人間は、ここにおります二名の騎士のみにございます。このまま魔獣に襲われましたら、辺境にある寂れた村など、あっという間に廃墟と化してしまうでしょう」

「うるさい! そんなこと知るか!」

「ヴィンス様は国王陛下にお仕えする官吏でいらっしゃいます。国王陛下の命により開拓を始めた村を見捨てて王都にお戻りになって大丈夫なのでしょうか? 人々の噂というものは侮れませんから心配です。せめてそちらの騎士様たちにご助力いただけないでしょうか」

「そ、それはならん! この者たちの使命は私を守ることなのだ」

「ですが、どのみち、門が開かなければ、ここで私たちと運命を共にしていただくことになりますが」

「何だと! どういうことだ! 貴様――」

「開門はここにいる二名の騎士の仕事ですから。ですが、これから急ぎ魔獣の討伐に向かわなくてはなりませんので」

「うぐぐぐ」


 四人の騎士は自分たちから何も言うつもりはないみたい。

 はぁ?!

 騎士って基本的には国民を守るものじゃないの?

 騎士になる時に、騎士の誓いとか、なんかこう、高尚な思想を述べたりしないの?

 

「アルフレッド。あなたとキースで討伐に出向いたとして勝算はどのくらい?」

「私たちも魔獣と戦ったことはありますが、それは騎士団全員が連携を取って数で押したものです。さすがに私とキースだけでは――」


 いや、そこは最後まで言って!


「二人だけでは?」

「絶望的と言っていいでしょう」


 よく言った。


「だっ、だから早く! せめて我々だけでも逃げねばならん!」


 見下げた奴だな。


「そうですか。ご助力いただけないと。ではこの村も今日で終わりですね」

「だから、そんなことは知らん! 村がどうなろうと知ったことか! いいから早く門を開けろ!」

「まさか。ヴィンス様にお逃げいただくために、討伐を後回しにしろとおっしゃるのですか? そもそも徴税についての話し合いをされることなく王都にお戻りになられてよろしいのですか?」

「ごちゃごちゃうるさい! 報告なんぞいかようにもできるわ!」


 ふーん。

 結局、この男の考え一つで決まるんだ。


「承知しました。それではこの者たちは先に開門作業をさせましょう。討伐はその後ということで。ヴィンス様はこの村の変わり果てた姿を見ることなく出発されますので、まあ見てはいないにしても、徴税が不可能というご決断は下されたと理解してよろしいでしょうか?」

「は?」


 さっすが、悪人だね。

 私が、徴税無理って報告してくれるなら門を開けるよ、と持ちかけたことにすぐに気がついた。


「分かった。そのように報告するから早く門を開けろ! お前らも馬車の用意を急げ!」


 オッケー。


「アルフレッド。キース。門を開けて」

「ですが……」


 アルフレッドがまさかの騎士道精神とやらを発揮?


「行きなさい!」


 久々の命令。

 アルフレッドとキースは、一瞬体をピクッと硬直させてから部屋を出て行った。


「懸命な判断だ」


 四人の騎士もヴィンスの指示に従うみたいで、私に挨拶もなく部屋を出て行く。

 

「ヴィンス様」

「なんだ? 話は済んだだろ!」

「ヴィンス様。どのような災害が起ころうと、生き残る人間はいるものです。その後のことを考えれば、国を代表して遠路はるばるこのような辺境の地にいらっしゃったヴィンス様が、魔獣に襲われた村を憐れに思われ、復興を祈り多大なご寄付をなさったという噂が――」

「こっ、このっ――――分かった。くれてやるわ。これで口も閉じておけ!」


 了解!

 ヴィンスは腰元から取り出した皮袋をテーブルに投げつけると大股で部屋を出て行った。

 さすがにムカっとしたけれど、まあ我慢しよう。





 さて――と。どうしたものかな。

 自分でも不思議だけど、この一大事に妙に落ち着いている。

 ちっとも現実味を感じないんだよね。

 まだ魔獣を見ていないからピンときていないのかな?

 まあ、小説のストーリーと若干差異はあるにせよ、今日ここで死ぬことはないと分かっているせいかもしれない。

 


 それに魔獣たって、ちょっと変わった獣でしょう?

 恐竜みたいなのが壁に体当たりしてきたら怖いけど、動物がぶつかるくらいじゃびくともしないと思うんだけどね。


 どうやら壁の強度を測る時がきたみたい。

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「つぎラノ」への投票ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
王女に無礼を働いた罰として、主人公じゃなけれ ば確実に野垂れ死にしてた罰を与えたわけで。 (国の支援もなく、家の助力も禁止) それなのに徴税に来るとか、8歳の令嬢に対して 王族も陰湿ですね。嬲るのが楽…
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