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追放された悪辣幼女の辺境生活 〜チート魔法と小人さんのお陰で健康で文化的な最高レベルの生活を営んでいます〜  作者: もーりんもも


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30 領民の運搬にはアレ!

「悠長に考えるのはやめましょう。私の計画を話すから言う通りにしてちょうだい」


 アルフレッドとブレッツが分かりやすく硬直した。

 あー、なるほどね。今、「絶対に私の言うことを聞けよな!」って思ったから、例の使役が力を発揮したんだ……。


「ええとね。まず。ブレッツにゲルツ伯爵領に潜入してもらい、移住希望者を口コミで募ってもらいます」

「はい」


 ブリッツが頷きながら返事をした。結構、真剣な表情だ。


「一応、返事は三日後って言っておいてね。三日後に再度ゲルツ伯爵領に行ってもらって、希望者を確定して名前と年齢を書いてリスト化してもらうわ。ああ、リスト化はアルフレッドにやってもらうから気にしないで」

「はい。三日後ですね」


 あ。一応の手順だから、馬鹿正直に守らないでよね。


「あのね。さっき言っていた娼館に身売りしそうなほど後がない人間は、考えさせる必要はないわ。そのまま連れて来ちゃいなさい」

「はい!」

「本当は、検討期間中に空き家の精査を行って、希望者の人数に応じて領民たちの既存の家の刷新を行うつもりだったんだけど、地べたに寝ようが、お腹いっぱい食べれた方がいいでしょ?」

「もちろんです!」


 家が不足していたら新築しようとも思っていたんだけどね。


「じゃあ、私はちょっとお昼寝をしてくるから、あなたはゲルツ伯爵領に行く支度をしていなさい」

「え?」

「は?」


 何よ、二人とも。


「急ぐって言ったでしょ! 昼寝はせいぜい一、二時間ほどだから。それまでの間に支度しなさい」

「お、お嬢。今からですか? いや、二時間後でしたっけ? それじゃあ戻る頃には日が暮れてしまいます」

「大丈夫よ」


 ふっふっふっふっ。

 それって馬車で行くことを想定したからでしょ?

 プププ。


 誰が馬車で行くって言った?

 車でブーンと飛ばせば片道一時間もかからないんじゃない?


 そう。車‼︎

 最近のマンションには付いていたりするじゃん!

 シェアリングカーが!


 できると思うんだよねー。

 寝ている間に小人さんたちが作ってくれると思うんだよねー。

 車種は何がいいかな。

 普通の小型車よりはワンボックスカーの方が使い勝手がいいかなー。


 ……いやいや。

 大勢を運ぶんだった。それならいっそバスでもいいんじゃない?

 だってこの世界には免許も交通ルールもないんだから。ただ通れる道幅があればいい。

 さすがに大型のバスは慣れないから、送迎用のマイクロバスあたりかな。


「お嬢――」

「いいから私に任せておきなさい。そうねぇ。とりあえず二時間後に領主館のエントランスに集合してちょうだい」

「お嬢――」

「大丈夫だから。いいわね、ブレッツ?」

「は、はい!」


 一旦解散し、私は自室のベッドに直行する。

 後は眠るだけだもんね。



 仰向けに寝転がり、駅前から出ていたホテルの送迎バスを想像する。グレーや紺色の車体にホテル名が書いてあるやつ。

 まあ地味な方が、この世界の人々の拒否感が軽減できるからいいか。

 幼稚園のバスだとギョッとされちゃうだろうから。運転する分には楽しそうだけど。


 そんなことを考えていると、例の眠気がやってきた。

 急激な眠さに頑張って抗っていると、小人たちが出て来た。


 本当にどこからやって来るんだろう?

 ポフッポフッと突然現れては、私に見向きもせずに部屋を出ていく。

 何十人という小人たちは、前後で空間を空けずにほとんどくっつくように一体化して、それ自体が生き物のように動いている。


 何とかして意思の疎通を図りたんだけど。

 どうすれば会話できるのかな?

 

「ねえ、ちょっと」


 呼びかけても無視。

 手を伸ばしても通りぬけ――。


「うわっ!」


 え? あれ?

 今、小人の肩に(さわ)れた!

 それでも小人は目をパチパチさせただけで、やっぱり私の方を向かない。なんで?

 そして立ち止まって目を瞬かせたのはほんの一瞬で、また歩き始めた。

 後ろの小人も何事もなかったかのように続いていく。


 おいおい!

 思い切って立ち上がって小人の列に割り込んでみる。


「ふぉっ」


 なんかこそばゆい。

 小人たちは私という障害を簡単に通り抜けて行く。

 こうなったら、意地でも顔をこっちに向けさせてやる!


 両手で小人の頬を掴もうとしたら、今度はすり抜けてしまった。

 どゆこと?

 さっきは触れたのに。

 ――と思ったところで私の意識は途切れた。唐突過ぎる!






「お嬢‼︎」


 またか、アルフレッド。

 

 うわっ。私、床に転がってるじゃん!

 あのヤローども!

 私をベッドに運ぶくらい容易(たやす)かろうに!

 なんか……屈辱。


「お嬢。一体どうされたのです?」


 くぅぅ。

 あー。速く小人を制御できるようになりたい!

 でもあの時、確かに触れたんだけどな。


「なんでもないわ。あまりの眠さにベッドに辿り着く前に寝ちゃったみたい」

「はぁ」


 残念な子を見るような目で見ないでちょうだい!


「あ! そんなことより、大変です! って言っても、きっとお嬢の魔法だと思うんですけど」

「ん?」


 ……もしかして!


「見たことのない物が現れた?」

「はい。あれはお嬢が? 一体あれは――」

「ふふふ。とりあえず見に行きましょう」


 それはエントランスを出てすぐのところに停まっていた。

 玄関先に乗り付けるところを想像したから、その通りなんだけど。

 うっふっふっふっ。

 小人にお仕置きを考えていたけれど、この仕事ぶりを見ちゃうと、まあ多めに見てやろうかと思えてくる。



 領主館のエントランス周辺はこの前緑化したばかりだけど、ちゃんとお花のエリアは避けて、道端に停車してあった。

 てっきりグレーだと思っていた車体の色は濃紺だ。ちょっと格好いい。

 ただ、バッチリ前世の文字で『○○ホテル』と入っている。


 こういうところだぞ‼︎ お前ら‼︎

 女神ぃ‼︎ 小人ども‼︎

 ちゃんと会話しながら完成形を確認していれば、こんなことにはならなかったのにな。

 ちっ。


 あ、でも。ちゃんとルーフにソーラーパネルが付いているじゃん。

 こっちの世界にガソリンがある訳ないから、EVしかないよなーと思っていたんだ。やるじゃん。

 私の希望通りならバッテリー容量も問題ないはず。


「お嬢!」


 おっと。そうだった。


「これは馬車よりも高速で走れるように私が改造したものよ」

「改造? 一体何で出来ているのです? 何やら怪しげに光っていますが……。石じゃないですよね? いや、そんなことよりも、御者台がありませんが、馬はどうやって繋ぐのです?」


 チッチッチッ。


「馬を必要としないように改造したのよ」

「は?」

「まあ、見てちょうだい」


 そう言って、スライドドアに手をかけると、アルフレッドが、「わっ」と声を上げた。

 これを何だと思ったの?


「大丈夫よ。ほら」


 ドアを開けると、見覚えのあるシートが並んでいた。

 うんうん。よくできてる。

 えーと……十四人乗りか。十分だね。


「なっ、これは……何なんですか……え?」


 アルフレッドがテンパってる。ふふふ。

 そりゃあ驚くよねー。


「すごいでしょう? 私が私の魔法で作ったのよ」

「お嬢の魔法は本当に何なんですか……」


 独り言のようにぶつぶつ言いながらも、私が触って大丈夫だったのを見て、自分も車体に触っている。

 あ、こら。叩くな。


「もしかして、この椅子のようなところに一人ずつ座るのですか?」

「そうよ。荷物だって大量に運べるから便利でしょ?」

「あの。馬に繋げずに走るとはどういうことなのです? 本当に走るのですか?」


 じゃあ、試乗しますか!


「私が走らせてみせるから、乗り心地を体験してみなさいよ」

「え?」

「ほら! その椅子に座りなさいよ」

「え?」


 あー、もう! 意気地なしめ!


「騎士が怖がってどうすんのよ!」


 あ、そうか。命令すればいいんだ。


「いいからさっさと乗りなさい!」


 アルフレッドは「ひっ」と言いながら乗り込んだ。

 手間をかけさせやがって。

 ……さてと。運転席はどんな感じかなー。


 よく考えると幼児の足の長さじゃ、運転席には座れてもペダルには届かないんじゃない?

 ――と思ったけど、可愛いシャーロッテちゃんが華麗に運転するところを思い描いていたおかげで、ペダルの位置やレバーの位置が高くなっていた!

 ハンドルにも手が届いたので合格だな。


「あぁん?」


 運転席に座った状態で前を向くと、わざわざダッシュボードにキーが置いてあった。

 こんのヤロー。

 誰がそこまで正確に再現しろっつった!

 めんどくせー!

 いっそスマホの指紋認証とかを想像したら、そうなってた?

 ほんと、腹たつ。


「お嬢? 大丈夫ですか?」

「ええ。もちろん。じゃあ行くわよ」


 エンジンスタート。

 

「本当に馬なしで進むのですか?」

「そうよ。まあ見てなさい」


 パーキングからドライブに変更してアクセルを踏む。


「う、うわぁ」


 車が動き出すと、アルフレッドが情けない声を出した。


「その辺を少し走るだけよ。ブレッツを乗せないといけないしね」


 閑散としている村の中を走るなんて超簡単。車幅も車線も気にしなくていい。

 あっ。領民が驚いて尻餅をついている。

 一仕事済んだら説明しておかないとマズイかもね。


「なっ。あ。えぇぇ」

「何よ?」

「これは一体……」


 さすがに運転中は振り向けないので、ひとしきり走って元の場所に戻るとエンジンを切った。


「どう? なかなかいいでしょう?」


 ドヤ顔でアルフレッドを見ると、いつの間にか頬が紅潮していた。


「なかなかどころか、大変素晴らしいです! え? 一体どうやって動かされたのですか? お嬢の魔法で動くのですか?」

「まあね」


 詳細はヒ・ミ・ツ。


「それよりも早く出発しないと。私、どれくらい寝ていたのかしら?」

「あ。そうでした。ブレッツはすぐに戻ってきたので、厨房でお茶でも飲んで待つようにと言いつけたのですが。二時間経ってもお嬢が部屋から出てこないので、どうしたものかと思っていたら、興奮したローリーが表玄関から駆け込んできたので驚きました」


 あー、それはびっくりするよね。

 使用人はエントランスを使わないものね。


「聞けば、巨大な物体が現れたとかで。要領をえなかったので外に出てみたところ、これがあり、急いでお嬢を呼びに行った次第なのです」

「ふーん。あ、じゃあ、ブレッツはまだこれを見てないんだ?」

「はい。しかし、今日の出発はやはり――」

「行くわよ」

「え?」

「早くブレッツを呼んできなさいよ」

「えぇぇ」


 いざとなれば命令しようと思ったけれど、アルフレッドは渋りながらもブレッツを呼びに行った。

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