24 魔法の使い方②
「お嬢。みんな集まっていますが……」
ん?
うわっ。いつの間に?
でもここは、領主としての威厳を見せないとね。
「見ての通り。ちゃんと畑は用意したわ。あとはあなたたちが働くだけよ。食べるために働くのは普通のことでしょ。本来なら、こうして土地を貸して農業をさせてあげるんだから、収穫量に応じて税を取るところなんだけど。まあ、初年度は勘弁してあげるわ。その代わりちゃんと収穫してみせなさい!」
「あ、あの――」
元村長もどきの男性がモゴモゴと喋り始めた。
聞こえねー。
「何よ! 何か不満でもあるの?」
「い、いえっ」
「お前。名前は?」
「は、はい。ヒッチです」
「そう。ヒッチ。今日からあなたが領民のリーダーよ。私の命令通りにこの村の領民たちを動かしなさい」
ザ・丸投げ。
「へ? え? あ、はい。あ、いや、その――」
「もう、何なのよ!」
「は、畑はありがとうございます。今まで見たことのない畑で驚きました。ですが、貴族様の魔法で作られた畑なら、ちゃんと収穫できる気がします」
は? 所信表明?
「で、ですが、それまでの食料は……」
「あー、それね。もちろん、真面目に働けば、小麦と野菜は支給するわ」
どよめきが起こった。
全員、それが心配で集まっていたのか。
「あ、ありがとうございます!」
まあ、一年は余裕で食べられるだけの食料を持参したからね。
それに思ったよりも領民が少なかったし。
「オッホン! このあと小麦用の畑も作るから、ええと、ハッチ?」
「ヒッチです、お嬢」
「コホン。ヒッチ。領民たちを、畑の担当と小麦の担当と家畜の担当に振り分けなさい」
「は、はい。あの。領――シャーロッテ様。ところで、土の上に被さっているこの黒いのは何でしょうか?」
「ああ、それも私の魔法で作った物よ。あなたたちは知らなくていいわ。そのままの状態で穴を開けて種とか苗を植えてちょうだい」
「は、はい」
たしか、マルチを張ると、雑草が生えないし虫除けにもなるし、中の土は暖かくなって生育を促すんだったよね。
「アルフレッド。キースでもいいけど。ローリーに言って、持ってきた種と苗をハッチに渡して」
「ヒッチに渡せばいいのですね」
キースが馬鹿にしたような顔で言う。
ハッチでもヒッチでもいいでしょ。私の言いたいことは分かるでしょ!
「じゃあ、アルフレッド。視察した時に廃棄された広い畑があったでしょ。あそこに連れて行ってちょうだい」
「はい!」
お尻の痛みを我慢しながら、耕作放棄地へやって来た。
さてと。
立ったままだと眠れない。でも地べたに座り込んで寝るも嫌だな。
「アルフレッド。上着を脱いでここに敷いて」
「え?」
「いいから言う通りにして」
「……はい」
アルフレッドは本当に渋々そうした。いや、顔に出すかね? まあいいけど。
上着の上に腰を下ろして、目を閉じてみる。
ガッツリ眠るつもりはない。
私の命令(?)に応えるためなのか、意外にもすぐに眠気を感じた。
あ……油断すると寝ちゃいそう。
ほんの少し葛藤していたら、あらら。
小人が出現した。
は? まさか……入眠手前でいいの?
いやいや、今の状態って、目をつぶっていただけで、ほとんど寝たふりだよ?
最早、ただの儀式じゃん!
何それ!
またしても私の目前に行列を作る小人たち。
どれか一人捕まえられないかと手を伸ばすも、やっぱり触れない。
くぅぅ。
あ! アルフレッド!
これまでは一人の時しか現れなかったけれど、今はアルフレッドがいる!
驚いて目を剥いている!
「コホン。驚かせてしまったわね。今度はちょっと急ぎでやってみたのよ」
フフン。
「お嬢……」
言葉も出ない感じ?
「まあ、その。小人だけど――」
「え? 小人?」
ちょっと。その疑問系は――この小人の集団が見えていない?
「ええと。アルフレッド。あなたの目には今、何が映っている?」
「え? 地面がうねうねと動いているのが見えます。それもめちゃくちゃ広範囲に! 生い茂っていた雑草があっという間に消えて、見事な土が……すごいです!」
ふーん。やっぱり小人は見えていないんだ。
私の魔法が見えない手となって、荒れ地を畑に作り変えているように見えるんだ。
ま、いいけどね。
小人たちのことを話し出すとややこしくなるから。
小麦は秋に種を蒔くって聞いたから、それまでは大麦を育ててもらおう。確か大麦の種も持って来ていたはず。
大麦はパンの材料にもなるし、家畜の餌にもなる。
秋まで休ませるなんて、勿体無いことはしない。
働いてもらうぞ!
ブクマや下にある☆☆☆☆☆評価をよろしくお願いします!




