23 魔法の使い方①
領民たちの前で大恥をかいた私は、くるりと背を向け、一言も発せず領主館に戻ると自室に閉じこもった。
ベッドにバフンとダイブして拳でマットを叩きまくる。
侍女がいればお茶でも持ってきて、宥めたりすかしたりするだろうけど、誰も来ない。
今はそれが有難い。
誰かに声でもかけられたら発狂してしまうかも。それか八つ当たりだね。
「マジかよー。あんのヤロー! 女神めー!」
右手でサワサワと辺りを探るけれど、クッションがない。
ちっ。
公爵邸のベッドにはたくさんあったのに。しょっちゅう投げてたなー。侍女に。
「もぉぉぉぉぉ‼︎ 悔しいー‼︎ くっそぉー‼︎」
ジタバタ暴れていると、体が睡眠を要求してきた。
眠ったりしないぞ、と体を起こしたけれど、意識がスーッと遠のいていきそう。
「また……なの……?」
ベッドに倒れ込みながらも、屈してなるものかと激しく抵抗した。
瞼を閉じてはこじ開け、閉じては開けて、あー、やっぱり無理かもーと意識を手放そうとした時、目の前に小人が現れた。
「ぅおおお」
どっから来た?
チューチュートレインのギネス記録に挑戦してんのか?
――っていうくらい、体が重なりそうな距離で小人たちが次々と現れる。
「待て待て待て待て、おい、コラッ!」
次々と現れては、勝手に部屋を出て行く小人たち。
「待てって言ってんのに! どうしてご主人様の言うことを聞かないの!」
――って、言いたかったのに口が開かない。
すぐ近くを歩いているので、肩をガシッと掴もうとするのに、手が空をきる。
へ?
幽霊?
どゆこと?
あー無理。ここまでみたい。
「お嬢!」
この、アルフレッドの「お嬢!」っていう大声で目を覚ますの何回目かな?
ノックしてる?
ノックしても私が目を覚さないから勝手に部屋に入ってきてる?
ちゃんと言っておいた方がいいのか?
「……あのさ。いくら八歳とはいえ、ちょっとは――」
「お嬢! 大成功です! 疑ってすみませんでした。いやあ言ってくれればよかったのに」
何が? 何の話?
「それにしても、お嬢はよく寝られますねぇ。成長盛りって眠たいものですけどね」
「アルフレッド。肝心なことを最初に言わないのは、あなたの悪い癖ね。いきなり怒鳴り込んできた訳を説明しなさいよ」
「怒鳴り込んでって、また随分な言いようですね。あ、それよりも、起きたのなら行きましょう。見た方が早いですから」
はぁん?
勝手に起こしておいて、「さあ行きましょう!」なんて、寝起きの幼女に言うセリフ?
「何でよ? 私がわざわざ足を運ぶ理由を言いなさいよ」
「もう。仕方がありませんね。私が抱っこして差し上げますよ」
「そんなこと言ってないでしょ! 私は自分の足で歩けるわよ!」
カッとなって言い返したせいで、外に出る羽目になってしまった。
何がそんなに嬉しいのか、アルフレッドは足早に進んでは、はたと気が付いて振り返っては私を待ち、私が追いつくと、またしても足早に進むという、最高に私をイラつかせながらどこかへ向かって行った。
「ちょっ、こらっ!」
聞いちゃいねー。
「どうです? お嬢!」
まるで自分の手柄のように私に自慢げに紹介しているけど、多分、それ――私がやったんだよ。
だって、絶対に前世で見たやつだもん。
「お嬢! よく分かりませんが、領民たちが、『土がよく耕されている』と感心しておりました。さすがにこの状態までにするには、魔法でも一瞬では難しいですもんね。いやー、まだ魔法を使い慣れていないから、てっきり失敗したんだと思いましたよー。あははは」
うるせー。
ここはさっき、「ここを畑にするわよ!」と大勢の前で宣言した場所だ。
あの時、私が想像した通りに、黒いマルチを張った状態の畝が並んでいる。
この世界に無いはずの石油由来のポリ。
私の要望通りなら、栄養満点の土がよく耕されているはず。
なんとなく、分かった気がする。
これは間違いなく、さっき現れた小人の集団の仕業だと思う。
そして、「出て来い」と命じた時に出て来ず、私がうつらうつらした時に現れたのは、馬鹿女神のせいなんじゃないかと思う。
よーく思い出してみれば、教会で私は確かに言った。
――眠っている間に小人さんが片付けてくれると助かる。
――目覚めて、『あっ、小人さんだ! きっと小人さんがやってくれたんだ!』って言ってみたいなぁ。
あの女神……マジで馬鹿なのか?
これは馬鹿正直じゃなくて馬鹿だろ。
「忠実に実行しましたよ?」とでも言うつもりか?
私が寝ないと小人が仕事を始めないって、何だよ!
もう、ほんと、ふざけんな!
嫌がらせか? 私に対する意趣返しか?
あー、絶対に許さねー。どうしたら女神と対面できるのかなー。
ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくー‼︎
はあっ。はあっ。
心の中で怒鳴っただけなのに、なぜか息があがるわ。
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