12 【閑話】神々の歓談
世界の四大元素を司る神々が中央の円卓につき、談笑されている。
五席あるうちの一席が空いているのはいつものことだ。
私のような狭間担当は、壁際から彼らの様子をひっそりと拝見していることしかできない。
いや、そもそも拝見していることすら烏滸がましいのかも。
『先ほど妾が信託を下した男のは、去年そなたの風属性を授かった者の弟のようじゃったな』
『ええ。あの兄弟は将来有望ですよ。さすが辺境伯の息子たちです。あっという間に魔物の討伐にその才を発揮することでしょう』
『おや? 本当ですか? 私が先ほど水属性を授けた伯爵家の令嬢も魔力はなかなかのものでしたよ?』
『おっと。魔力の多さならば私が先日土属性を授けた伯爵令息が一番じゃないかな。いずれその名を轟かせることになると思うけどな』
皆様、それぞれご自身がその属性を与えた人間たちを誇りに思われているようだ。
何だか羨ましい。
私が今日対応したあの令嬢は――。
「そこのお前」
不意に火を司る女神様が私の方を向いて声をかけられた。
私の近くには誰もいない。つまり、私に向けて――ですよね?
「わ、私でしょうか?」
「妾の声が聞こえなんだか?」
「い、いえっ。聞こえました。はい」
今まで声をかけてもらったことなどないのに、いったいどういう風の吹き回しなんだろう?
「そなたには面倒をかけたな。おそらくあの者とは妾の力が一番相性がよかったようだが、どうしても火属性をくれてやる気にはならなんだ故な」
「は、はい、ごもっともです」
「無事に終わったのじゃな?」
「は、はい。滞りなく終わりました」
「そうか。ならばよかった」
「はい」
女神様はまた談笑に戻れられた。
いやあ、わざわざ声をかけていただけるとは恐れ多い。
仰りたいことはよくわかる。あのような不遜な態度で神々に接する人間など初めて見た。
今日の人間は怖かった。
本来、身分の高い公女は四代属性のどなたかが担当されるはずなのに、全員が辞退されたため、私に担当が回ってきてしまった。
あの人間の中を少し覗いてみたけれど、いまだに夢現の区別がついていないようだった。
それにしても、恐ろしく上から物を言う人間だった。本当に怖かった。
「健康で文化的な最高の生活」がどういうものなのかわからなかったので、一応、あの人間が知っている世界と繋いでみた。
それで合っていたのかどうか……。違っていたら、めちゃくちゃ罵られそうで怖い。
人間たちは、どうせ自分たちの声なんか神に届く訳ないと思っているみたいだけど、全部聞こえているんだよね。
もう本当に辛いったらありゃしない。
あの人間は根に持ちそうだったから、気に入らないことを呪詛のように毎日繰り返しそう――怖い! 怖過ぎる!
ああ……貧乏くじを引いてしまった。あんな人間と関わり合いになるなんて……。
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