エピローグ
夜が明け、王宮の鐘が静かに鳴り響いた。
王の死は、すぐに王城中に知れ渡ったが、大きな混乱は起きなかった。
なぜなら、すでに新たな支配者が玉座に座っていたからだ。
王座の間。
かつて王が威厳を示していた大広間の中央に、今は令嬢が優雅に腰掛けていた。
深紅のドレスを纏い、黄金の髪をなびかせながら、王冠を指先で弄ぶ。
「……悪くないわね、この席」
「ふむ、似合っておるぞ」
隣に立つ魔王が満足そうに頷く。
彼女は相変わらず黒いマントを羽織り、片手に王宮の葡萄酒を持っている。
宰相はすでに新体制の布告を終え、各貴族や軍の指導者たちは新たな主への忠誠を誓った。王家に忠誠を尽くしていた者たちは、早々に処分されたか、亡命の道を選んだ。
そして今、王国は完全に二人の手中にある。
「ところで、次はどうするのじゃ?」
魔王が退屈そうにワインを揺らしながら尋ねる。
「どうするって?」
「ただ王座を奪っただけではつまらんではないか。何かもっと面白いことをしようぞ」
「そうね……まずは、この国を完全に掌握するために、内政の整備が必要ね」
「はぁ……つまらんことを言う」
「大事なことよ。せっかく奪った国を無駄にしたくないでしょう?」
「ふむ……では、内政はおぬしに任せるとしよう。我は戦がしたい」
魔王は満面の笑みを浮かべる。
「この王国だけでは物足りぬ! 隣国を攻め落とし、さらに版図を広げるのじゃ!」
「ふふ、貴女らしいわね。でも、それも悪くないわ」
令嬢は微笑みながら、王座の肘掛けに頬杖をつく。
「この国を支配したのだから、次は世界を支配するのも面白いかもしれないわね」
魔王と令嬢の笑い声が、広い王座の間に響き渡る。
こうして、王国を征服した二人は、さらなる野望へと歩み始めたのだった――
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